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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ストローフィ・リング(9)


+ + + + + + + + + +
このフロアは社長室の他に秘書室、給湯室、メインコンピュータールームがあるだけらしい。
つまり人はヒル魔と雪光とまもりの三人だけ。
社長室と秘書室の隣にはそれぞれ仮眠室があり、ヒル魔は普段ほとんどそこで生活しているようだった。
妻がいる自宅には帰ってないのだろうか、と疑問が浮かぶが尋ねる事ではないだろう。
「コンピュータールームは入るのに制限があるが、テメェが入ったところで何の役にも立たねぇだろうな」
「そうですね」
「ここが給湯室」
入ると、そこはまるでカフェでも開けそうな立派な機材が並ぶそうそうたる場所だった。
「基本コーヒーくらいしか淹れることはねぇが、他に飲みたいものがあったら持ち込め」
「カップはどれをお使いですか」
「俺のはこれで糞ハゲがこれ。テメェはこれ使え」
渡されたのは白のシンプルなカップだった。
「不服ならテメェのを持ってきて使え」
「わかりました」
淡々としたやりとりに、ヒル魔は思うところあるのかちらりと視線を寄越すが、まもりは全く取り合わない。
「俺は戻る。コーヒー淹れて持ってこい」
「ありがとうございました、社長」
ぺこりと頭を下げると、ヒル魔は口角を上げる。
それはどこか苦みを含んだ笑みではあったけれど。

慣れない機材ながら説明書片手に淹れたコーヒーを持っていく。
雪光にもコーヒーを差し入れ、社長室の扉をノックする。
「入れ」
「失礼します」
そしてそこに広がる光景に一瞬息を呑んだ。
大量の書類が机に山積みされ、パソコンが複数台並んでいる。
インカムを付けた状態でいくつも画面を平行させながら大量の仕事をこなしているようだった。
時折忙しなくペンが動き、キーボードを叩く音の他は無音。
「おい、コーヒー」
「はい」
固まっていたまもりを呼ぶ声に、そっと近づきカップを渡す。
受け取って口を付けるのを確認し、まもりは静かに部屋を後にした。
思わず盛大なため息が口をついて出てくる。
「どうしました?」
苦笑混じりの雪光の声に、まもりも苦笑を浮かべる。
「いえ・・・相変わらず、すごいなあと思ってました」
「そうですね。今は朝なのでそうでもありませんが、日中は慌ただしいですよ」
「そうなんですか?」
「ええ。昨日はさほどでもありませんでしたが、社内外問わずこちらを訪れる人というのは多いんですよ」
社長の決裁を求める書類、取引を求める会社同士の対応、新たな事業を立ち上げる際の会議等、彼の仕事は山のようにある。
「下手をすると食事さえ摂れないことが多々あるんです」
昨日言った『ヒル魔さんのスケジュール管理』というのがいかに大事かは見て判って頂けたと思います、という雪光の言葉にまもりは頷く。
この巨大な会社の管理を一手に引き受け、纏め上げる手腕は相当だろう。
そしてその分彼に掛かる負担は大きいに違いない。
秘書である雪光にも彼は当然の如く高いレベルでのサポートを希望していそうだし。
「ああ、そろそろ研修の時間ですね。研修担当者が最上階の会議室に待機しておりますので、そちらで研修を受けて下さい」
時計を見て雪光がまもりに告げる。
「それと、お昼になったら一度戻ってきて頂けますか」
「はい、それは大丈夫ですが、何か?」
「ヒル魔さんがお昼をちゃんと食べるように連れ出して頂きたくて」
「え?」
「僕じゃもう効果がないんですよ」
苦笑混じりの依頼に、まもりは戸惑いながらも頷き、筆記用具を手に会議室へと向かった。

<続>
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