部活に使うテーピングやドリンクの粉末の購入は、週末に纏めて買い出ししている。
車があるといいのだけれど、父も母もそれぞれに忙しいので、私のためだけに車を出してもらうのも忍びない。
というわけで、大体は自転車で一人、買いに行く。
「おい、糞マネ」
……彼がついて来なければ。
どさどさと籠に粉末が投げ込まれ、がくんと腕が下がった。
「っ」
「後は何だ?」
「……テーピングと、冷却スプレー」
すたすたと歩き去る背中を見て、ぐっと奥歯を噛みしめる。
慮って欲しいわけじゃないけど、籠くらい持ってくれてもいいんじゃないだろうか。
既に他の消耗品で籠はあふれんばかりだし、重さだって結構ある。
でも、持って欲しいとは言い出せない。
片方は銃を持ち、もう片方は目的の品を取る、細い腕。
勿論、私よりは太いと思う。でも、筋肉の付きにくい体質らしい彼はどこもかしこも細く見える。
「……何見てんだ、糞マネ」
「え?」
「穴が空く」
また籠に品物が投下された。がくんと下がった籠を、今度は奪い取られる。
「えっ、いいわよヒル魔くん、私、持つから」
「じゃあ銃持て」
「いやです!!」
生憎と、歩く法律違反と連れ立つことは慣れても、その片棒を担ぐのはお断りだ。
ケケケ、と特徴的な笑いを零し、彼はレジへと向かう。思い籠を軽々と持つ手に筋が浮いている。
ああ、男の人の腕だ。
それにしても、細いなあ。
「ヒル魔くんって、ウェストいくつ?」
「……おい糞マネ、あえて言うが、オマエのふとましいウェストとは比較になんねぇぞ」
「ふ! ふとましいって!!」
そんな! とウェストを摘む。うう、確かに脂肪が摘めるけど! ふとましいって!
恨みがましい顔になったのを、彼が鼻で笑う。
「テメェと比較して俺の方が細いなんてことはありえねぇだろ」
「……本当かしら?」
小首を傾げると、ヒル魔くんはおどけたように腕を上げた。片手に銃、片手に買い出しした品物を全部持っているくせに、軽やかな動き。
「疑っていらっしゃる?」
「その言い方、馬鹿にしている?」
「されているとお思いで?」
「っ! もう!」
「触って確認してみるか?」
ホレ、と晒された腹に、恐る恐る手を伸ばす。
「片手で判るか?」
「あ、そっか。……えいっ!」
思い切って両手でヒル魔くんの両脇腹を掴んでみた。思いがけず、自分の手が一杯に広がった状態になったのに目を丸くする。
「あれっ?」
自分の脇に手を当てて、そうしてもう一度ヒル魔くんの脇に戻る。
「えっ? え……うそ?」
ぺちぺちとヒル魔くんのお腹を叩いてみても、特に力を入れても抜いてもいないようだ。
「ところで糞マネ」
ぷう、とガムを膨らませながらにやにやとこちらを見てくる顔に、何か嫌な予感がする。
「何?」
「ここは公道だが、堂々とセクハラするたぁ恐れ入ったな」
「……?!」
はっ、と気付いて視線を巡らせれば、何人もの人の視線がささっとそらされた。
休日の昼日中、こんな見た目に怖い人に、何やってるのあの子って思われた……!!
「ヒッ、ヒル魔くん!!」
「ほーらさっさと部室に行くぞ、糞マネ」
真っ赤になって足を止めた私を、彼は肩越しに視線を寄越しただけでさっさと歩いて行ってしまう。
「……も~~~~~~!!」
あっという間に離れてしまう距離に、思った以上に逞しかった身体に、否応なく彼が『男性』で、私が『女性』なのだと思い知らされる。
それが何故だか妙に恥ずかしくて、私は自分の頬をぺしんと叩いてから彼を追った。
***
公道でいちゃつくヒルまもは生ぬるく大人達に愛でられておりました(まもりちゃんだけ見る野郎はヒル魔さんが睨み付けました)。
リア充末永く幸せでいて下さい(*´ω`*)
もう鳥さんのヒルマモをみれることはないのかな~…と思っていたので凄く嬉しいです♡
ありがとうございました!!
またpixivのほうにも過去作品増やしていただけたら泣いて喜びます♡
これから寒さも段々と厳しくなって参りますが、どうかご自愛なさってくださいね♪
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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。