旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
「・・・っ」
びく、と震えたまもりにヒル魔はちらりと視線を寄越す。
「テメェ雷が大ッ嫌ェなんだろ」
「な、なんで知って・・・っ」
「俺を誰だと思ってやがる」
言いながらもヒル魔は足を速めて街へと降りた。まもりも慌てて後に続く。
ぽつりと頬に冷たい雫。
「やっ! やだ、降ってきちゃった」
「急げ!」
荷物が濡れても問題ない物ばかりとはいえ、好んで濡れたいわけでもない。
二人は急いで雨宿りが出来そうな場所に向かったのだが、少々遅かった。
空が破裂する。
白く稲光を閃かせて、轟音と共に滝のような雨。
それら全てが、逃げ遅れた二人に容赦なく襲い掛かった。
間に合わず濡れ鼠になった二人は、どうにか商店の軒下に駆け込む。
店は休みのようで、正面はシャッターが閉じている。店内に逃げ込むのは無理だった。
かろうじて張り出している軒下で、ヒル魔は髪を掻きあげる。
「チッ」
忌々しげに空を睨み舌打ちするヒル魔とは対照的に、まもりは俯いて震えている。
そうして、雷光鋭く空を駆け、低く雷鳴が唸った瞬間。
「っきゃあ!」
まもりは短く悲鳴を上げた。がさりと荷物が跳ね上がってヒル魔の腕に当たる。
「おい、荷物下ろしておけ」
「え、え、何!?」
豪雨が軒を叩く音で、隣であっても会話が成立しない。
しかもまもりは雷に怯えていて気もそぞろなのだ。
「ったく」
「え」
ヒル魔はまもりから乱暴に荷物を奪い取ると、自らの荷物と共にまもりとは反対側に積み上げた。
そうして、まもりの頭を強引に引き寄せる。
「え!?」
「落ち着け」
彼は肩口に彼女を抱き寄せ、低い声で囁いた。
「お、お、落ち着け、って」
突然にこういう行動に出られて、まもりはますます混乱する。
彼の意図が読めない。
一体どういうつもりだ、と勝手に顔が赤くなる。
けれど。
「雷ごときでぎゃあぎゃあ騒ぐな。糞煩ぇんだよ」
耳が痛い、としかめっ面をされたなら。
羞恥と驚きに混じりつつ感じた照れがすうっと冷めてしまう。
この男に情緒なんてないんだと改めて感じてしまう。
「ええ、そうですか! ごめんなさいね煩くて!」
ぐい、とヒル魔を押し戻そうとその胸に手を伸ばした瞬間。
再び雷鳴。
「っきゃああ!!」
悲鳴を上げたまもりは押し戻そうとしたはずの手で彼のシャツを強く握り締めてしまった。
「ご、ごめ・・・」
ほんの一瞬前に彼に煩いと言われたばかりなのに。
まもりは謝り体を離そうとしたが。
「もういいからしがみついてろ」
ヒル魔はそう言ってまもりの頭を再び肩口に押し付ける。
「まだしばらくやみそうにねぇな」
これでは戻っても練習どころではない。
ヒル魔の声は平坦で、全く感情を表さない。
どんな顔をしているのかとちらりと見上げても、平然としたままで。
まもりは自分だけこんな赤い顔をしているのが悔しくてたまらなくなり、視線を下げる。
あやすように髪を撫でる指に驚くほど安心してしまっている自分を。
あんなに嫌いだった雷が、気にならなくなっている自分を。
認めたくなくて、こっそりと唇を噛んだ。
今だけだ。
今だけ。
ほんの少し先も見えないほど白く霞んだ雨の間だけ。
隣の人の声さえ聞き取りづらい轟音が響く雷の間だけ。
ほんのひと時の、甘い夏の、戯れ。
***
夕立に遭遇してしまったので一本書いてみました。久しぶりに高校時代、まだ恋人同士じゃない頃という設定。互いに意識はしてるけどまだまだ喧嘩仲間的な感じで。
夏で甘い話を書こうと思ったのでタイトルもそのまんま(笑)楽しかった~♪
びく、と震えたまもりにヒル魔はちらりと視線を寄越す。
「テメェ雷が大ッ嫌ェなんだろ」
「な、なんで知って・・・っ」
「俺を誰だと思ってやがる」
言いながらもヒル魔は足を速めて街へと降りた。まもりも慌てて後に続く。
ぽつりと頬に冷たい雫。
「やっ! やだ、降ってきちゃった」
「急げ!」
荷物が濡れても問題ない物ばかりとはいえ、好んで濡れたいわけでもない。
二人は急いで雨宿りが出来そうな場所に向かったのだが、少々遅かった。
空が破裂する。
白く稲光を閃かせて、轟音と共に滝のような雨。
それら全てが、逃げ遅れた二人に容赦なく襲い掛かった。
間に合わず濡れ鼠になった二人は、どうにか商店の軒下に駆け込む。
店は休みのようで、正面はシャッターが閉じている。店内に逃げ込むのは無理だった。
かろうじて張り出している軒下で、ヒル魔は髪を掻きあげる。
「チッ」
忌々しげに空を睨み舌打ちするヒル魔とは対照的に、まもりは俯いて震えている。
そうして、雷光鋭く空を駆け、低く雷鳴が唸った瞬間。
「っきゃあ!」
まもりは短く悲鳴を上げた。がさりと荷物が跳ね上がってヒル魔の腕に当たる。
「おい、荷物下ろしておけ」
「え、え、何!?」
豪雨が軒を叩く音で、隣であっても会話が成立しない。
しかもまもりは雷に怯えていて気もそぞろなのだ。
「ったく」
「え」
ヒル魔はまもりから乱暴に荷物を奪い取ると、自らの荷物と共にまもりとは反対側に積み上げた。
そうして、まもりの頭を強引に引き寄せる。
「え!?」
「落ち着け」
彼は肩口に彼女を抱き寄せ、低い声で囁いた。
「お、お、落ち着け、って」
突然にこういう行動に出られて、まもりはますます混乱する。
彼の意図が読めない。
一体どういうつもりだ、と勝手に顔が赤くなる。
けれど。
「雷ごときでぎゃあぎゃあ騒ぐな。糞煩ぇんだよ」
耳が痛い、としかめっ面をされたなら。
羞恥と驚きに混じりつつ感じた照れがすうっと冷めてしまう。
この男に情緒なんてないんだと改めて感じてしまう。
「ええ、そうですか! ごめんなさいね煩くて!」
ぐい、とヒル魔を押し戻そうとその胸に手を伸ばした瞬間。
再び雷鳴。
「っきゃああ!!」
悲鳴を上げたまもりは押し戻そうとしたはずの手で彼のシャツを強く握り締めてしまった。
「ご、ごめ・・・」
ほんの一瞬前に彼に煩いと言われたばかりなのに。
まもりは謝り体を離そうとしたが。
「もういいからしがみついてろ」
ヒル魔はそう言ってまもりの頭を再び肩口に押し付ける。
「まだしばらくやみそうにねぇな」
これでは戻っても練習どころではない。
ヒル魔の声は平坦で、全く感情を表さない。
どんな顔をしているのかとちらりと見上げても、平然としたままで。
まもりは自分だけこんな赤い顔をしているのが悔しくてたまらなくなり、視線を下げる。
あやすように髪を撫でる指に驚くほど安心してしまっている自分を。
あんなに嫌いだった雷が、気にならなくなっている自分を。
認めたくなくて、こっそりと唇を噛んだ。
今だけだ。
今だけ。
ほんの少し先も見えないほど白く霞んだ雨の間だけ。
隣の人の声さえ聞き取りづらい轟音が響く雷の間だけ。
ほんのひと時の、甘い夏の、戯れ。
***
夕立に遭遇してしまったので一本書いてみました。久しぶりに高校時代、まだ恋人同士じゃない頃という設定。互いに意識はしてるけどまだまだ喧嘩仲間的な感じで。
夏で甘い話を書こうと思ったのでタイトルもそのまんま(笑)楽しかった~♪
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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