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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ストローフィ・リング(11)


+ + + + + + + + + +
外に出た二人は、適当な店に入った。
昼休みとあって混雑していたが、店員はヒル魔を見るなりすぐ奥の席へ案内した。
脅迫しているのかと思えば、そういうわけではなく単なる常連らしい。
てっきり社員食堂で食事を摂るのかと思えば、彼はほとんど外で食べるのだという。
「上が顔出してると気が休まらねぇ連中も多いからな」
「そうですか」
その割には彼の側近である雪光が現れても、特に食堂は混乱していなかったと思う。
穿ちすぎではないか、とも思ったが、見た目に穏和な雪光と見た目に悪魔な彼とでは扱いが違うのは仕方ないのかも知れない。
素朴な味付けの定食に箸を付けながら、彼は寂しいのかな、と少し思う。
彼の部下は沢山いるし、仕事は順調だろう。
けれどかつて信頼した仲間ほどには多くない側近。
気心が知れていても、相手が一人では気詰まりか。
ああでも、彼は結婚しているのだから、精神的なケアをする相手は雪光だけではないはずだ。
かつての部活の時とは圧倒的に違う、環境の変化。
まもりはぐさりと煮物の大根に箸を刺す。
お行儀が悪いデスネ、とからかわれても、そうせずにはいられなかった。
―――あの時と同じような関係を夢見ているのはまもりの方だと、まざまざと知らされた気がして。

日ごと時間ごとに人を変えて、研修はきっちりと行われた。
特にパソコンについてはきっちり基礎から教えられた。
教えてくれたのは前田という、やはり年若い社員だが話し方や物腰が丁寧で、そつがない。
「・・・あ、そういうことね! やっと判ったわ!」
どうにもアナログ人間で飲み込みの悪いまもりに、彼は笑みを絶やさず教えてくれる。
途中で休憩を、と促され自販機で紅茶を買って来てくれた。
ありがたく受け取り、口を付ける。
「なかなか進まなくてすみません」
「いえ、そんなことありませんよ。中途半端に焦って難しい間違いをする人も多いですし、説明したとおりの順番を守っていただけるだけでこちらも助かります」
にこにこと人のよさそうな笑みで言われ、まもりも笑みを浮かべる。
まだ数人しか顔を合わせていないけれど、随分と居心地がよさそうな会社なのだと思う。
きっと倍率も高いのだろう。
そこにコネ以外の何でもない手で入り込んだ己が申し訳なくて、まもりは早く一人前にならないと、と意気込んでパソコンに向き合った。
そしてパソコンの研修を終え、秘書室に戻ったまもりの席に、以前から置いてあったのとは別の、真新しいパソコンが一台用意されていた。
「これは、どうしたんですか?」
「ああ、それは自宅に持ち帰って使って頂く端末です」
「自宅で?」
「仕事の関係上、自宅に戻ってもパソコンでないと処理出来ない部分が多々あります。姉崎さんのご自宅にパソコンがあればそちらでも構わないんですが・・・」
その言葉にまもりは苦笑する。
まもりの家にはパソコンは存在しないから、その配慮らしい。
「備品貸し出しだ。テメェはそれで家でも練習だな」
顔を出したヒル魔にまもりは判りました、と笑みを浮かべて応じる。
「おい、コーヒー」
「はい判りました」
まもりは立ち上がり、コーヒーを淹れるべく部屋を後にした。

研修期間はあっという間に過ぎた。
世間はクリスマス一色、という時期に、本格的にまもりは業務を開始する。
そして回ってくる書類の多さに目を丸くした。
「もしかして、全課の決裁が上がってきてるんですか?」
「年末ですから、今時分は仕方ないんです。これでも全部ではないんですよ」
「はー・・・」
やはり大きな会社は違うなあ、とまもりは嘆息して書類をチェックする。
まもりが出来るのは簡単な文章のチェック程度で、難しい判断を必要とする物は雪光に回る。
役に立つとは到底言えない現状だが、出来る事をやらなければ、とまもりは真剣に書類に向かう。
電話が鳴る。
社長に繋ぐ電話というのはほとんど存在しないらしい。彼と話が出来る相手は決まって直接彼の電話に掛けるか直接やってくる。
時折担当で収まりきらない部分のクレームが飛んでくるという話に、戦々恐々としながら電話をとり続けた。

<続>
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