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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ストローフィ・リング(15)


+ + + + + + + + + +
社長室に出向いた雪光は、積み上げられた資料を受け取り、彼を見つめた。
「僕はこの言葉をこんなに短時間に二人に言うとは思いませんでしたよ」
「ア?」
不審そうなヒル魔に、雪光は剣呑な視線で返す。
「ちゃんと寝てますか?」
「煩ェ」
いつも傲岸不遜な悪魔を気取る彼にも疲労が透けて見える。
それだけ疲れているのなら自宅に帰ればいいものを、この男は社長室隣の仮眠室で過ごしてほとんど家に寄りつかない。
「姉崎さんも疲れていて、ひどい顔ですよ」
「知るか」
素っ気ない言葉に、雪光は嘆息する。
「あいつは九鬼とは違う。そうそう手ェ掛けてらんねぇだろうが」
「それはそうですが」
言いつのろうとしたところで内線が鳴る。
「お客様がお越しです」
「通せ」
「はい」
雪光はすっとヒル魔の背後に立つ。
客を案内して来たまもりは、どこかくすんだ色の瞳で室内の男達を見たが、すぐに視線を逸らした。


(あの新しい秘書、なんつったっけ)
(ああ、あのトウの立った女な)
(前の秘書の方が仕事も出来たし美人だし、よかったよなー)
(ホントだよ。あいつ何勘違いしてんだかお高くとまってよ)
(社長の女なんじゃねぇの?)
(そうかもなあ。もっと若いのにすりゃいいのに)
(前の秘書なんて名前だったっけ)
(えーと、ちょっと聞かない名前だったよな)
(クキだよ。九の鬼って書いて九鬼)
(あーそうそう! 蛭魔に九鬼でなんで悪魔じみてんだこの会社、って思ったっけ)
それは数日前に非常階段を歩いていたときに聞こえた会話。
思わず身を潜めて聞き耳を立てたまもりに気づかず、彼らは散々愚痴っていた。
昼休み、誰もが通る場所で辺りを憚らずされる会話。
その内容にまもりはただ落ち込むしかない。
能力的にも外見的にも勝る女性が前任者としていたのならまもりに対する風当たりが一際キツイのも仕方ないだろう。
けれどなぜ、そんなに優秀な人材をみすみすヒル魔が手放したのだろうか。
そんなまもりの疑問に答えるように、会話が続く。
(でも九鬼って社長と結婚したんだろ。寿退社ってやつ)
(そうだっけ?)
(あの社長、秘密主義でイマイチ判らねぇんだよな)
まもりはそっとその場を後にする。
もう、何も聞きたくなかった。


「もうやめなさい!」
「っ」
厳しい声に、まもりは手を止めた。
驚き見上げると、そこには険しい顔をした雪光がいた。
「もう家に帰って寝なさい! 明日は休みです!」
日頃穏やかで滅多なことでは怒らない雪光の剣幕に、まもりは眉を寄せる。
「それは無理です」
第一今はお昼時を過ぎたばかり、まだ日は長く終業時間まではかなり時間がある。
「どこが無理ですか」
じっとりとした視線で雪光が処理済みの書類の山を見る。
「もうこれだけ片づいていれば週末まで出なくてもいいくらいです」
「でも」
その時、ふらりとヒル魔が社長室から現れた。
「ア? テメェら何・・・」
そしてまもりの顔を見て眉を寄せる。
「・・・確かに」
「? 何がですか?」
「糞ハゲ、戸締まりは任せた」
それに雪光はあからさまにほっとしたように笑みを浮かべた。
「お任せ下さい」
「来い」
ぐい、とヒル魔はまもりの腕を引く。
それをまもりは振り払おうとしたが、予想外の力に阻まれる。

<続>
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