旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
「まずそのナリだな」
「何か、変?」
就職活動以来着ていなかったスーツ。
そもそもかっちりとした格好を必要としない職場だったから、スーツが残っていた事自体奇跡と呼べる。
不思議そうなまもりを指で招き寄せ、ヒル魔はその腕を掴む。
「空ける。後は任せる」
「はい、わかりました」
「え? ちょ・・・」
雪光が笑顔で見送るのを尻目に、ヒル魔はまもりの腕を掴んだまま強引に歩き出した。
会社から出ればすぐ名のある店が立ち並ぶ空間が出現する。
さすが都内一等地。まもりはきょろきょろと周囲を眺め、感心する。
その中でヒル魔が躊躇いもせず入ったのはまもりも聞いた事のあるブランドの店。
足を踏み入れた途端、店員達が一斉に頭を下げた。
「いらっしゃいませ、蛭魔様。本日の御用向きは何でしょうか」
「こいつに適当なスーツを見繕え」
くい、と指で指されてまもりは青ざめる。
「え・・・」
「かしこまりました。お客様、こちらへどうぞ」
「え、いや、その・・・」
まもりは尻込みする。
何しろ、ここのスーツ一着でまもりのアパートの家賃が一ヶ月分軽く飛んでしまう。
もっと安価な、それこそアウトレットあたりで買うならまだしも、ここで買い物なんて出来ない。
冷や汗を浮かべるまもりに、ヒル魔の容赦ない声が飛んでくる。
「テメェが普段買うようなモンじゃ糞安っちぃんだよ。最低限このレベルで揃えろ」
「お金ないもの!」
半泣きで返したまもりに、ヒル魔はにやりと笑う。
「安心しろ、これは研修の一環だ。費用は会社持ち」
「どこが研修?!」
ヒル魔はまもりの耳元で囁く。
「俺のところに来る連中はまず秘書の格好見て値踏みすんだよ」
「!」
そうか、とまもりは自分の格好を見下ろす。
ふさわしくない格好の女が秘書として控えていれば、それは彼を軽視される原因となるわけか。
「金額気にせず着てこい」
とん、と背中を押され、まもりは恐る恐る店員の後を付いていった。
次々と差し出されるスーツは素材も形も量産品とはひと味もふた味も違うような、ディテールに凝った物ばかり。
シンプルな黒の上下も柔らかな曲線を描くその素材はシルクだったり、内側のワンピースがサテンだったりといちいち豪華だ。
仕事着と呼ぶにはいささか高級すぎるきらいがある。
ついクリーニング代が掛かるなあ、と庶民的な事を考えてしまう。
「さすがに派手すぎでしょう」
「テメェ俺の格好見て言えるか」
「・・・それもそうね」
ヒル魔のスーツ姿もある意味ホストと紙一重、と言えそうな細身のもの。
けれど一見して素材は上等なのでそこまでおかしいことはない。
大体髪の毛が金髪で通ってるあたりで服装の事など今更なのかも知れない。
そういえば雪光は紺色のスーツだったけれど、野暮ったい感じはしなかった。
彼も色々と言い含められているのだろう。
「秘書だから地味にしてろ、っつーのはウチの会社にはねぇ。ただ最初から相手に舐められるような格好じゃ困るんだよ」
「なるほど。判りました、社長」
その呼び方にヒル魔はぴんと片眉を上げる。
「なんでそう呼ぶ」
「だって社長でしょう?」
まもりは笑みを浮かべてヒル魔を見つめる。
「社長と秘書の関係でしょう。おかしな呼び方じゃないと思います」
「その口調もやめろ」
「嫌です。変に社長と親しいなんて思われたくないですし―――」
すい、とまもりの指がヒル魔の左手薬指を指す。
「奥様にも悪いですもの」
そこには、宝石の並ぶ銀色のリングがしっかりと嵌っている。
指摘されたヒル魔は、ぴんと片眉を上げたが、それ以上は何も言わなかった。
<続>
「何か、変?」
就職活動以来着ていなかったスーツ。
そもそもかっちりとした格好を必要としない職場だったから、スーツが残っていた事自体奇跡と呼べる。
不思議そうなまもりを指で招き寄せ、ヒル魔はその腕を掴む。
「空ける。後は任せる」
「はい、わかりました」
「え? ちょ・・・」
雪光が笑顔で見送るのを尻目に、ヒル魔はまもりの腕を掴んだまま強引に歩き出した。
会社から出ればすぐ名のある店が立ち並ぶ空間が出現する。
さすが都内一等地。まもりはきょろきょろと周囲を眺め、感心する。
その中でヒル魔が躊躇いもせず入ったのはまもりも聞いた事のあるブランドの店。
足を踏み入れた途端、店員達が一斉に頭を下げた。
「いらっしゃいませ、蛭魔様。本日の御用向きは何でしょうか」
「こいつに適当なスーツを見繕え」
くい、と指で指されてまもりは青ざめる。
「え・・・」
「かしこまりました。お客様、こちらへどうぞ」
「え、いや、その・・・」
まもりは尻込みする。
何しろ、ここのスーツ一着でまもりのアパートの家賃が一ヶ月分軽く飛んでしまう。
もっと安価な、それこそアウトレットあたりで買うならまだしも、ここで買い物なんて出来ない。
冷や汗を浮かべるまもりに、ヒル魔の容赦ない声が飛んでくる。
「テメェが普段買うようなモンじゃ糞安っちぃんだよ。最低限このレベルで揃えろ」
「お金ないもの!」
半泣きで返したまもりに、ヒル魔はにやりと笑う。
「安心しろ、これは研修の一環だ。費用は会社持ち」
「どこが研修?!」
ヒル魔はまもりの耳元で囁く。
「俺のところに来る連中はまず秘書の格好見て値踏みすんだよ」
「!」
そうか、とまもりは自分の格好を見下ろす。
ふさわしくない格好の女が秘書として控えていれば、それは彼を軽視される原因となるわけか。
「金額気にせず着てこい」
とん、と背中を押され、まもりは恐る恐る店員の後を付いていった。
次々と差し出されるスーツは素材も形も量産品とはひと味もふた味も違うような、ディテールに凝った物ばかり。
シンプルな黒の上下も柔らかな曲線を描くその素材はシルクだったり、内側のワンピースがサテンだったりといちいち豪華だ。
仕事着と呼ぶにはいささか高級すぎるきらいがある。
ついクリーニング代が掛かるなあ、と庶民的な事を考えてしまう。
「さすがに派手すぎでしょう」
「テメェ俺の格好見て言えるか」
「・・・それもそうね」
ヒル魔のスーツ姿もある意味ホストと紙一重、と言えそうな細身のもの。
けれど一見して素材は上等なのでそこまでおかしいことはない。
大体髪の毛が金髪で通ってるあたりで服装の事など今更なのかも知れない。
そういえば雪光は紺色のスーツだったけれど、野暮ったい感じはしなかった。
彼も色々と言い含められているのだろう。
「秘書だから地味にしてろ、っつーのはウチの会社にはねぇ。ただ最初から相手に舐められるような格好じゃ困るんだよ」
「なるほど。判りました、社長」
その呼び方にヒル魔はぴんと片眉を上げる。
「なんでそう呼ぶ」
「だって社長でしょう?」
まもりは笑みを浮かべてヒル魔を見つめる。
「社長と秘書の関係でしょう。おかしな呼び方じゃないと思います」
「その口調もやめろ」
「嫌です。変に社長と親しいなんて思われたくないですし―――」
すい、とまもりの指がヒル魔の左手薬指を指す。
「奥様にも悪いですもの」
そこには、宝石の並ぶ銀色のリングがしっかりと嵌っている。
指摘されたヒル魔は、ぴんと片眉を上げたが、それ以上は何も言わなかった。
<続>
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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