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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ストローフィ・リング(4)


+ + + + + + + + + +
湯飲みに淹れられた緑茶に、ヒル魔は眉を寄せた。
「生憎とコーヒーは飲まないの。文句があるなら飲まないで」
まもりは自分用に淹れた緑茶に口を付ける。
「用件があるならさっさとどうぞ。そして早く帰って」
「まるで間男扱いだな」
ケケ、と笑われてもまもりは冷たい視線を向けるだけだ。
彼の前でからかわれて激昂することほど危険な事はない。
出来るだけ冷静に対処しなければならない。
それは高校の時の付き合いで嫌という程身に染みているから。
まもりが素っ気ない事にからかう気がそがれたのか、ヒル魔はおもむろに名刺を取り出した。
まもりも見覚えのある会社名が入っている。
IT系企業の草分け的存在、この不況にあって成長を続ける大会社だ。
「俺が作った会社だ」
「へえ、そう」
悪魔的な知力と体力のある彼ならば難しい話ではないだろう。
驚く事ではない。
「最近俺の秘書が一人減ってナァ」
「そう」
「そこにテメェを入れてやる」
まもりはたっぷり三秒以上沈黙した。
「―――私、秘書の能力とかまったくないわ」
「勉強しろ」
「そもそも大会社なら最初からそういう人を雇うものでしょう」
「それは他の奴でまかなえる」
それなら尚更まもりの出る幕はない。
「私が採用される必要はないじゃない」
「テメェ働き口ねぇんだろうが。素直に頷いて採用されろ」
「何のつもりよ」
不信感も露わなまもりに、ヒル魔はただにやにやと笑う。
「心優しき俺の慈善事業だとでも思っておけ」
「魂を奪い取るつもりだ、の方がしっくり来るわ」
「―――それでもいいぜ」
ヒル魔はぐい、とまもりを引き寄せる。
「っ!」
掠めるように唇が触れ、すぐ放される。
怒りにまかせた平手もするりとかわされた。
「明日その名刺持って会社に来い。仕事の説明してやるよ」
笑って身軽に立ち上がり、玄関に向かうヒル魔を、まもりは頬を染めてただ睨みつけることしか出来なかった。


翌日。
渡された名刺を手に、スーツを着たまもりは立ちつくしていた。
都内の一等地に建つビルが本拠地。
大会社だとは聞いていたが、あまりに大きくて気後れしてしまう。
頑張ってロビーに入ったはいいものの、受付まで行くのがどうしても躊躇われる。
あれはからかいだったのだろうか、とも思う。
のこのこやってきたまもりを嘲笑うための仕掛けだったりしないか、と。
嫌がらせには命がけという男なのは重々承知している。
それでもここまで来たのだし、一応顔を出すだけ出そうか、やはりやめようか、という逡巡を繰り返していたら。
「ああ! 姉崎さん、来て下さったんですね!!」
「あ・・・」
あのまもりを追いかけていた男が感激した様子で近寄ってきた。
どうやらロビーで待機していたらしい。
「社長命令で、姉崎さんをお連れするまで職場には戻ってくるなと言われてまして・・・」
これで会社に入れます、という台詞に申し訳なくなってくる。
結局彼もヒル魔に脅された被害者という事になるのだろう。
まもりは頭を下げる。
「お話も聞かずに逃げて、すみませんでした」
「いえいえ! ささ、中へどうぞ! 社長がお待ちです!」
笑顔で案内してくれる男の後を付いていきながら、会社の内装に視線を向ける。

<続>
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