旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
自室に戻る手前で声がかかる。
「アヤ」
「お父さん」
アヤはヒル魔へと近寄る。
「お父さんは妖介のところに行かなくていいの?」
それにヒル魔はにやりと笑った。
「面ならさっき見たからな」
「会話、とか」
「糞息子の泣きッ面見たところで会話もへったくれもねぇだろ」
母や自分とは違う反応に、アヤは口を閉ざす。
そんな彼女を見下ろして、不意にヒル魔はぐりぐりと彼女の頭を撫でる。
「な、何!?」
滅多にない行動に慌てるアヤにヒル魔は喉の奥で笑った。
「テメェは妖介とは逆だな」
「え」
「あんまり溜め込むんじゃねぇぞ。テメェには姉崎も俺もいるんだからな」
ちゃんと悩みは相談しろ、という言葉に。
「・・・どうしたの。まるで『お父さん』みたいよ」
アヤは思わずそんなことを言ってしまうけれど。
「ケケケ」
ヒル魔はその言葉に、実に楽しそうに笑ったのだった。
風呂から上がって自室に戻ろうとしたところで。
「兄ちゃん」
背後からかかった声に妖介は振り返る。
そこには救急箱を持った護の姿。
「あの・・・兄ちゃん、怪我してるでしょ。手当するよ」
そんなのは自分で、と言おうとして。
護が何か言いたげなのを察知し、妖介は自室の扉を開き、そのまま護を招き入れる。
「足、出して」
「ん」
妖介の足の裏は歩き続けたせいで豆がつぶれ、靴擦れもひどい。
「痛そう・・・。お湯しみたでしょ」
「まあね。でも洗わないと手当出来ないし」
「そりゃそうだけど・・・」
絆創膏を諦め、護は膏薬とガーゼ、包帯を取り出す。
どこで覚えたか器用に手当をしてくれる弟のつむじを見ていたら、護がふいに口を開いた。
「兄ちゃん、ごめんね」
それに妖介は一瞬反応できず、そのまま彼のつむじを見続けてしまう。
「僕がちょっかい出したから、兄ちゃんが怒っちゃったんだよね」
「・・・そうじゃないよ。あれは俺がいらいらした八つ当たりだったんだよ」
それに護はぱっと顔を上げる。
僅かに潤んだ瞳に、妖介は苦い気持ちになるのを押さえて微笑む。
「ごめんな。俺が先に謝るべきだったね」
ぽんぽんとその頭を撫でると、護は子供扱いされたのかと少々鼻白んでその手を振り払う。
それに笑って、妖介は手を引っ込めた。
「なんて言うんだろ・・・なんだかすごく苛立って、自分の居場所がないような気がして、急に色々我慢が出来なくなったんだよ」
「そうなの?」
そんなことがあるのか、と護は訝しげだ。
「結果は散々だったけど。父さんに殴られるし拉致されるし放置されるしさ」
参りました、という様子に護は思わず吹き出す。
「・・・ぷっ」
「おかげでなんだかちょっと成長できたような気がするけどね」
妖介はあの朝日を思い出す。
鮮やかに変貌していく世界を見た瞬間。
自分の小ささを痛感させられたのだ。
いつの間にか体は大きくなり、アヤに喧嘩でも負けなくなって、母の背を追い抜き、父にも追いつきそうになって。
もう何でも一人で出来ると思っていた。
けれど自分はまだまだ子供で、出来る事なんてたかが知れていて。
そうして、家族がどれほどに大事かがよく分かった。
護は妖介の両足を手当てして救急箱の蓋を閉める。
「マッサージしようか?」
「いや、いいよ。ちょっと父さんのところに行ってくる」
スリッパを引っかけた妖介を心配そうに見上げる護の頭をもう一度撫でて。
「ちゃんと帰ってきました、って自分の口で言わないとね」
ヒル魔の部屋をノックし、中に入る。
「父さん」
「何だ」
ヒル魔はデスクに向かって作業していた。振り返りもしないが、それを気にせず妖介は続ける。
「今朝、無事に帰りました」
「おう」
室内に沈黙が満ちる。ヒル魔の手は止まらない。
けれど妖介の言葉を待っているその背中に、彼は口を開く。
「ごめん」
「テメェが謝る相手は俺じゃねぇだろ」
それにヒル魔がようやく手を止めた。
肩越しにちらりと見られて、妖介は言うべき言葉が違ったことにやっと気づく。
「・・・ありがとう、父さん。俺を止めてくれて」
それにヒル魔はにやりと笑って返し、その後は再びデスクに向かった。
妖介はぺこりと彼に頭を下げて部屋から出ると、キッチンに向かう。
「母さん」
ヒルが終わったばかりだというのに、今度は夕食の準備に余念のないまもりを呼ぶ。
「あら。何?」
何か摘む? と問われて妖介は夕飯まで待つよ、と言って。
「母さん、こないだの夕飯駄目にしちゃってごめんね。それと、いつも・・・ありがとう」
「!」
その日の夕食は、久しぶりに家族全員で囲んで。
ほんの数日前まで当たり前だと思っていた幸せを改めて全員がかみしめながら、今度こそ穏やかな時間を過ごしたのだった。
***
反抗期には思いっきり荒れた方が真っ当な育ち方をするらしい、という身近な例から。
それと山から自宅に帰り着くところのシーンは『動/物/の/お/医/者/さ/ん』のチ/ョ/ビが遭難した山から自力で帰宅してきたところを思い出して書いてました。チ/ョ/ビかわいいよチ/ョ/ビ。
「アヤ」
「お父さん」
アヤはヒル魔へと近寄る。
「お父さんは妖介のところに行かなくていいの?」
それにヒル魔はにやりと笑った。
「面ならさっき見たからな」
「会話、とか」
「糞息子の泣きッ面見たところで会話もへったくれもねぇだろ」
母や自分とは違う反応に、アヤは口を閉ざす。
そんな彼女を見下ろして、不意にヒル魔はぐりぐりと彼女の頭を撫でる。
「な、何!?」
滅多にない行動に慌てるアヤにヒル魔は喉の奥で笑った。
「テメェは妖介とは逆だな」
「え」
「あんまり溜め込むんじゃねぇぞ。テメェには姉崎も俺もいるんだからな」
ちゃんと悩みは相談しろ、という言葉に。
「・・・どうしたの。まるで『お父さん』みたいよ」
アヤは思わずそんなことを言ってしまうけれど。
「ケケケ」
ヒル魔はその言葉に、実に楽しそうに笑ったのだった。
風呂から上がって自室に戻ろうとしたところで。
「兄ちゃん」
背後からかかった声に妖介は振り返る。
そこには救急箱を持った護の姿。
「あの・・・兄ちゃん、怪我してるでしょ。手当するよ」
そんなのは自分で、と言おうとして。
護が何か言いたげなのを察知し、妖介は自室の扉を開き、そのまま護を招き入れる。
「足、出して」
「ん」
妖介の足の裏は歩き続けたせいで豆がつぶれ、靴擦れもひどい。
「痛そう・・・。お湯しみたでしょ」
「まあね。でも洗わないと手当出来ないし」
「そりゃそうだけど・・・」
絆創膏を諦め、護は膏薬とガーゼ、包帯を取り出す。
どこで覚えたか器用に手当をしてくれる弟のつむじを見ていたら、護がふいに口を開いた。
「兄ちゃん、ごめんね」
それに妖介は一瞬反応できず、そのまま彼のつむじを見続けてしまう。
「僕がちょっかい出したから、兄ちゃんが怒っちゃったんだよね」
「・・・そうじゃないよ。あれは俺がいらいらした八つ当たりだったんだよ」
それに護はぱっと顔を上げる。
僅かに潤んだ瞳に、妖介は苦い気持ちになるのを押さえて微笑む。
「ごめんな。俺が先に謝るべきだったね」
ぽんぽんとその頭を撫でると、護は子供扱いされたのかと少々鼻白んでその手を振り払う。
それに笑って、妖介は手を引っ込めた。
「なんて言うんだろ・・・なんだかすごく苛立って、自分の居場所がないような気がして、急に色々我慢が出来なくなったんだよ」
「そうなの?」
そんなことがあるのか、と護は訝しげだ。
「結果は散々だったけど。父さんに殴られるし拉致されるし放置されるしさ」
参りました、という様子に護は思わず吹き出す。
「・・・ぷっ」
「おかげでなんだかちょっと成長できたような気がするけどね」
妖介はあの朝日を思い出す。
鮮やかに変貌していく世界を見た瞬間。
自分の小ささを痛感させられたのだ。
いつの間にか体は大きくなり、アヤに喧嘩でも負けなくなって、母の背を追い抜き、父にも追いつきそうになって。
もう何でも一人で出来ると思っていた。
けれど自分はまだまだ子供で、出来る事なんてたかが知れていて。
そうして、家族がどれほどに大事かがよく分かった。
護は妖介の両足を手当てして救急箱の蓋を閉める。
「マッサージしようか?」
「いや、いいよ。ちょっと父さんのところに行ってくる」
スリッパを引っかけた妖介を心配そうに見上げる護の頭をもう一度撫でて。
「ちゃんと帰ってきました、って自分の口で言わないとね」
ヒル魔の部屋をノックし、中に入る。
「父さん」
「何だ」
ヒル魔はデスクに向かって作業していた。振り返りもしないが、それを気にせず妖介は続ける。
「今朝、無事に帰りました」
「おう」
室内に沈黙が満ちる。ヒル魔の手は止まらない。
けれど妖介の言葉を待っているその背中に、彼は口を開く。
「ごめん」
「テメェが謝る相手は俺じゃねぇだろ」
それにヒル魔がようやく手を止めた。
肩越しにちらりと見られて、妖介は言うべき言葉が違ったことにやっと気づく。
「・・・ありがとう、父さん。俺を止めてくれて」
それにヒル魔はにやりと笑って返し、その後は再びデスクに向かった。
妖介はぺこりと彼に頭を下げて部屋から出ると、キッチンに向かう。
「母さん」
ヒルが終わったばかりだというのに、今度は夕食の準備に余念のないまもりを呼ぶ。
「あら。何?」
何か摘む? と問われて妖介は夕飯まで待つよ、と言って。
「母さん、こないだの夕飯駄目にしちゃってごめんね。それと、いつも・・・ありがとう」
「!」
その日の夕食は、久しぶりに家族全員で囲んで。
ほんの数日前まで当たり前だと思っていた幸せを改めて全員がかみしめながら、今度こそ穏やかな時間を過ごしたのだった。
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それと山から自宅に帰り着くところのシーンは『動/物/の/お/医/者/さ/ん』のチ/ョ/ビが遭難した山から自力で帰宅してきたところを思い出して書いてました。チ/ョ/ビかわいいよチ/ョ/ビ。
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ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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