旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
ヒル魔はパソコンの画面を見つめる。
彼につけておいた発信器を見る限り、順調に自宅へと向かってきている。
かわいい子には旅をさせよ、ではないが、ああいう頭と気持ちと体がちぐはぐになった時にはとにかく頭を空っぽにして体を動かすのが一番なのだ。
更に一人ともなれば、誰と言葉も交わさないため自然と自分の内面に意識が行き、問題点を見つけられる。
どこか甘ったれな影のある中間子の妖介。けれどその殻を破りたいと思う思春期の頃なのはかつて少年だったヒル魔にも易々と知れて。
「ま、せいぜい頑張りやがれよ糞息子」
慈しむように一人そう呟くと、ヒル魔は仕事へと意識を切り替えた。
「お腹空いた・・・」
妖介は空腹に眉を寄せた。
彼は夜が明けてから早速山中を一人歩き続けていた。
幸い食用に適する果物を少し摘むことが出来たが、完全に空腹を満たすには至らない。
水も大事に飲んでいるが、足りなくなることは明らかだ。
ふと、水音がするのに気づく。目には見えないが、下の方で聞こえた。
急勾配の山肌の奥に川が流れている気配。
どうやら進むべき方向の真西にあるようだ。
魚と水を得ようと考えた妖介はロープを取り出し、手近で一番太い木に縛り付けて下へと降りていく。
そうしてたどり着いた先には綺麗な小川があった。
目をこらせば魚が泳いでいるのが見えるほど。
ほっと胸をなで下ろした妖介はその場に近寄り、水を汲む。
そうして魚をどうやって捕ろうかと考えを巡らせていたのだが。
木々の奥に動いた影を見て、そのまま彼は固まった。
「・・・ほんとに出たよ・・・」
何かが、木々の間から様子をうかがっている。
黒い獣の眸が、鬱蒼とした緑の合間から不気味に輝いた。
結局、翌日になっても妖介は帰ってこなかった。
大丈夫か、怪我はしてないか、お腹は減っていないかと、まもりの心配は尽きることがない。
「糞ガキの心配する前にテメェの心配しろ」
「何よ! ヒル魔くんは心配じゃないの?!」
心配のあまりヒステリックに声を上げるまもりに、ヒル魔は彼女の目の下の隈を撫でる。
「あいつを信じて待っててやりゃいいんだよ」
「信じて、って」
「それも親の仕事だろ。違うか?」
「・・・」
「妖介なら必ずやる」
ヒル魔が確信を持って告げる言葉に、まもりは唐突に思い当たる。
彼とて心配しないはずがないのだ。まもりと共に不安を抱えているはず。
それでもまもりを、アヤと護を、心配させないように。
そう振る舞っているだけなのだ。
何しろ彼は意地っ張りな悪魔なのだから。
まもりは努めて平静を装い、口を開く。
「・・・妖介が帰ってきたら、何を一番最初に食べたいと思うかしら」
「テメェが作ったもんなら何でも泣いて喰うだろ」
お袋の味というのは偉大なのだ、と彼は笑う。
それにまもりはぱちりと瞳を瞬かせた。
「じゃあヒル魔くんにとって、『お袋の味』って何?」
「ア?」
ヒル魔はピンと眉を上げる。
「聞いたことなかったなあって。ねえ、教えて。作るから」
「別にねぇよ」
「ええ?! たった今『お袋の味』は偉大だって言ったばっかりじゃない!」
「そりゃ妖介にとって、っつーことだ。俺にお袋の味なんてねぇよ」
「そんなことないでしょ!」
食い下がるまもりはにべもない。
「ねぇもんはねぇ」
「んもう!」
ぷう、とふくれたまもりにヒル魔はただ口角を上げただけだった。
<続>
彼につけておいた発信器を見る限り、順調に自宅へと向かってきている。
かわいい子には旅をさせよ、ではないが、ああいう頭と気持ちと体がちぐはぐになった時にはとにかく頭を空っぽにして体を動かすのが一番なのだ。
更に一人ともなれば、誰と言葉も交わさないため自然と自分の内面に意識が行き、問題点を見つけられる。
どこか甘ったれな影のある中間子の妖介。けれどその殻を破りたいと思う思春期の頃なのはかつて少年だったヒル魔にも易々と知れて。
「ま、せいぜい頑張りやがれよ糞息子」
慈しむように一人そう呟くと、ヒル魔は仕事へと意識を切り替えた。
「お腹空いた・・・」
妖介は空腹に眉を寄せた。
彼は夜が明けてから早速山中を一人歩き続けていた。
幸い食用に適する果物を少し摘むことが出来たが、完全に空腹を満たすには至らない。
水も大事に飲んでいるが、足りなくなることは明らかだ。
ふと、水音がするのに気づく。目には見えないが、下の方で聞こえた。
急勾配の山肌の奥に川が流れている気配。
どうやら進むべき方向の真西にあるようだ。
魚と水を得ようと考えた妖介はロープを取り出し、手近で一番太い木に縛り付けて下へと降りていく。
そうしてたどり着いた先には綺麗な小川があった。
目をこらせば魚が泳いでいるのが見えるほど。
ほっと胸をなで下ろした妖介はその場に近寄り、水を汲む。
そうして魚をどうやって捕ろうかと考えを巡らせていたのだが。
木々の奥に動いた影を見て、そのまま彼は固まった。
「・・・ほんとに出たよ・・・」
何かが、木々の間から様子をうかがっている。
黒い獣の眸が、鬱蒼とした緑の合間から不気味に輝いた。
結局、翌日になっても妖介は帰ってこなかった。
大丈夫か、怪我はしてないか、お腹は減っていないかと、まもりの心配は尽きることがない。
「糞ガキの心配する前にテメェの心配しろ」
「何よ! ヒル魔くんは心配じゃないの?!」
心配のあまりヒステリックに声を上げるまもりに、ヒル魔は彼女の目の下の隈を撫でる。
「あいつを信じて待っててやりゃいいんだよ」
「信じて、って」
「それも親の仕事だろ。違うか?」
「・・・」
「妖介なら必ずやる」
ヒル魔が確信を持って告げる言葉に、まもりは唐突に思い当たる。
彼とて心配しないはずがないのだ。まもりと共に不安を抱えているはず。
それでもまもりを、アヤと護を、心配させないように。
そう振る舞っているだけなのだ。
何しろ彼は意地っ張りな悪魔なのだから。
まもりは努めて平静を装い、口を開く。
「・・・妖介が帰ってきたら、何を一番最初に食べたいと思うかしら」
「テメェが作ったもんなら何でも泣いて喰うだろ」
お袋の味というのは偉大なのだ、と彼は笑う。
それにまもりはぱちりと瞳を瞬かせた。
「じゃあヒル魔くんにとって、『お袋の味』って何?」
「ア?」
ヒル魔はピンと眉を上げる。
「聞いたことなかったなあって。ねえ、教えて。作るから」
「別にねぇよ」
「ええ?! たった今『お袋の味』は偉大だって言ったばっかりじゃない!」
「そりゃ妖介にとって、っつーことだ。俺にお袋の味なんてねぇよ」
「そんなことないでしょ!」
食い下がるまもりはにべもない。
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<続>
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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