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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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少年クライマー(1)

(ヒルまも一家)
※アヤ・妖介が14歳、護10歳。


+ + + + + + + + + +
切っ掛けは、なんだか思い出せないくらい些細なこと。
まもりは目の前で起こった事態を咄嗟に把握できなかった。
かなりの重量があるはずの食卓がひっくり返り、先ほどまで湯気の立ち上っていた夕食が無残に散らかってしまっている。そして、その中に。
ひどく荒れた目をした妖介がうっそりと立っていた。
「・・・んでだよ」
低い呟きは聞き取れなかった。真っ先に我に返って立ち上がったのはアヤだったけれど。
「!!」
ガン、という鈍い音が彼女を止める。
妖介の頭を力任せに殴ったのはヒル魔だった。
「来い、糞馬鹿息子」
ヒル魔は低く冷たい声で彼の襟首を掴み、ずるずると引きずっていく。
「・・・っ、離せ!!」
痛みに動きを止めていた妖介だったが、彼はようやくまもりを追い抜いたくらいの背丈で、体重もまだ軽い。
体格差のある現状では父親に対抗することはまだ無理だ。
「ヒル魔くん!?」
後を追うまもりの叫びを聞いても、ヒル魔は動きを止めない。
だが、玄関を潜るときに娘の名を呼んだ。
「アヤ」
「はい」
空気を察してか、アヤの背筋が伸びる。
「少し出る。姉崎と護を見てろ」
そこでまもりはやっと先ほどの騒ぎの切っ掛けを思い出した。
そうだ、護。あの子がふざけて妖介にちょっかいを出したんだった。
あの子は。
声もなく、物音一つしない荒れた室内に戻るまもりを一瞥し、アヤに小さく頷くとヒル魔は騒ぎ続ける妖介を手早く縛り上げ、車に放り込んだ。


さんざん騒いで声を上げていた妖介が徐々に落ち着きを取り戻す。
しばらく荒れた呼吸音だけが響いていたが、不意にぽつりと呟いた。
「・・・なんで」
「何が」
間髪入れず返ってきた声に、妖介は縛られた体勢のままルームミラーを見上げる。
ちらりと映る父の横顔に怒りはない。
そうして、『色』にも動揺や焦りといった、負の感情は見て取れない。
「なんで、護ばっかり」
そこまで呟いて、妖介は唇を噛む。
先ほどの騒ぎを引き起こしたのは、なんてことのない普段からよくあること。
護の肘が妖介の腕を打ったのだ。食卓の上の何かを取ろうとしたか何かで、ただぶつかっただけ。
それなのに、驚くほど妖介は激高してしまった。
自分でも、この体の内側に渦巻く感情が巧くコントロールできないのだ。
護が憎い訳ではない。家族が嫌なわけではない。
ただ、落ち着かない。
心の中がぐちゃぐちゃになって、口にする言葉が自分の感情を表さないのをひどくもどかしく思う。
「こんなの、ただのガキのわがままなのに。分かってるのに、なんで」
ヒル魔は相づち一つ挟まない。
けれど、先ほどまでの支離滅裂な叫びにはとんと反応しなかったのに、頭が冷えてきたところで呟いた言葉にはちゃんと応じたのが分かったから。
「俺の言いたいことは違うのに」
妖介はぽつぽつと呟く。
「なんで俺、こんななんだろう」
車は滑らかに走り続ける。
近場をぐるぐると回っているのかと首を伸ばした妖介は、その目に映った『色』に息をのんだ。
見たことがない景色。そうして、夕闇に紛れていてもよく分かる鬱蒼とした木々の、命の『色』。
「父さん? どこ、行くの?」
ヒル魔の視線が車に乗ってから初めて妖介を見た。
「その沸騰してる糞脳みそガンガンに冷やしてもらうぞ、糞馬鹿息子」
その口調は、どこか楽しそうにさえ感じられた。
・・・目だけは全く笑っていなかったけれど。

<続>
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ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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