旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
なぜだか急に様子のおかしくなった兄の姿にショックを受けたか、護はしゃくり上げながらまもりにしがみついてなかなか落ち着かない。
リビングのソファに腰を落ち着けて、まもりは黙って護を抱きしめ、その頭を撫でる。
「おに、にいちゃ、が・・・」
ぼろぼろと涙をこぼすその顔は悲しみ恐怖そして怒りと、感情が入り乱れて混乱状態のまま。
「おこ、怒って、ぼく、僕のこと」
「大丈夫よ。お兄ちゃんはお父さんとお話してくるから」
そこにアヤが近寄る。
「お母さん、片付けした」
「ありがとう、アヤ」
「・・・出来る限り努力したんだけど」
アヤは視線をそっとそらす。それにまもりは苦笑を浮かべたが、口は開かなかった。
何でもよく出来るこの娘は、ヒル魔に似て片付けが大の苦手だ。
派手に散らかったあの惨状、おそらく割れた食器を拾い集めて床を拭いたくらいだろうが、それだけでもやっておいてくれたら全然違うと感謝する。
護から離れられないまま、まもりはアヤを手招いた。
「何?」
「こっちよ」
招かれるままにアヤはまもりの傍らに腰を下ろす。
「!」
アヤはぐい、とまもりにその頭を抱えられる。
実際には胸元に護がしがみついてる状態だから、その肩口に頭を凭れかけさせる格好だ。
「何?」
「怖かったでしょう? もう大丈夫よ」
アヤは僅かに目を見開き、それからそっと眸を伏せる。
母のぬくもり、匂い。それにアヤの中の未消化な感情がゆるゆると解けていく。
弟や母のことを考えて咄嗟に表面から押し隠してしまったそれらを、まもりは見逃さなかった。
やがて肩口からも伝わる小さな震え。
二人から伝わるそれを感じながら、早くあの二人が帰ってくればいいのに、とまもりは月の輝く空を見上げた。
「どこ、ここ」
「サアネ」
ヒル魔が妖介を小脇に抱えて下ろしたのは、どこかの山の麓だった。
車は長く獣道を進んできて、公道からかなり離れた位置に下ろされたのは分かるが、それだけだ。
時間感覚はないが、おそらく車で二時間以上は走っていたと思う。
ヒル魔は妖介をその場に転がすと、自らはさっさと踵を返した。
「な、ちょっと?! 置いていく気?!」
何しろ妖介は未だ縛られたままだ。青くなる彼に、ヒル魔はにやりと笑みを浮かべる。
そうして、かなりごつい造りのアーミーナイフをざくりと地に突き刺した。
更にナイフの鞘と小さなディパックをその場にぽん、と放り投げヒル魔は宣告する。
「沸騰してる糞脳みそガンガンに冷やしてもらうっつったろ。ここから自力で帰ってこい」
その目にも『色』にも声にも変化はなく、淡々としたままヒル魔は車に乗り込もうとして。
「父さん!!」
「ああそうだ、この辺は熊が出るからな」
「え・・・」
さあ、と妖介の顔から血の気が引く。
「ちょっと、やめてよ! 父さん!!」
大声で騒ぐのを意に介さず、ヒル魔はひらひらと手を振ってさっさと車に乗り、走り去った。
妖介は呆然と遠くなるテールランプを見送るしかない。
「・・・嘘でしょ・・・」
妖介は周囲を見回すが、人の気配は全くない。
とりあえずこの縄を解いて、そこから考えなければならない。
ほんの二時間ほど前までは、ごく普通に食事をとっていたはずなのに。
と、耳にかすかに聞こえた獣の鳴き声。それに背筋をぞっと震わせる。
「っ・・・畜生!!」
妖介は一瞬でも騒ぎを起こした自らを呪いながらずりずりと這いつくばり、アーミーナイフへ向かって進み出した。
<続>
リビングのソファに腰を落ち着けて、まもりは黙って護を抱きしめ、その頭を撫でる。
「おに、にいちゃ、が・・・」
ぼろぼろと涙をこぼすその顔は悲しみ恐怖そして怒りと、感情が入り乱れて混乱状態のまま。
「おこ、怒って、ぼく、僕のこと」
「大丈夫よ。お兄ちゃんはお父さんとお話してくるから」
そこにアヤが近寄る。
「お母さん、片付けした」
「ありがとう、アヤ」
「・・・出来る限り努力したんだけど」
アヤは視線をそっとそらす。それにまもりは苦笑を浮かべたが、口は開かなかった。
何でもよく出来るこの娘は、ヒル魔に似て片付けが大の苦手だ。
派手に散らかったあの惨状、おそらく割れた食器を拾い集めて床を拭いたくらいだろうが、それだけでもやっておいてくれたら全然違うと感謝する。
護から離れられないまま、まもりはアヤを手招いた。
「何?」
「こっちよ」
招かれるままにアヤはまもりの傍らに腰を下ろす。
「!」
アヤはぐい、とまもりにその頭を抱えられる。
実際には胸元に護がしがみついてる状態だから、その肩口に頭を凭れかけさせる格好だ。
「何?」
「怖かったでしょう? もう大丈夫よ」
アヤは僅かに目を見開き、それからそっと眸を伏せる。
母のぬくもり、匂い。それにアヤの中の未消化な感情がゆるゆると解けていく。
弟や母のことを考えて咄嗟に表面から押し隠してしまったそれらを、まもりは見逃さなかった。
やがて肩口からも伝わる小さな震え。
二人から伝わるそれを感じながら、早くあの二人が帰ってくればいいのに、とまもりは月の輝く空を見上げた。
「どこ、ここ」
「サアネ」
ヒル魔が妖介を小脇に抱えて下ろしたのは、どこかの山の麓だった。
車は長く獣道を進んできて、公道からかなり離れた位置に下ろされたのは分かるが、それだけだ。
時間感覚はないが、おそらく車で二時間以上は走っていたと思う。
ヒル魔は妖介をその場に転がすと、自らはさっさと踵を返した。
「な、ちょっと?! 置いていく気?!」
何しろ妖介は未だ縛られたままだ。青くなる彼に、ヒル魔はにやりと笑みを浮かべる。
そうして、かなりごつい造りのアーミーナイフをざくりと地に突き刺した。
更にナイフの鞘と小さなディパックをその場にぽん、と放り投げヒル魔は宣告する。
「沸騰してる糞脳みそガンガンに冷やしてもらうっつったろ。ここから自力で帰ってこい」
その目にも『色』にも声にも変化はなく、淡々としたままヒル魔は車に乗り込もうとして。
「父さん!!」
「ああそうだ、この辺は熊が出るからな」
「え・・・」
さあ、と妖介の顔から血の気が引く。
「ちょっと、やめてよ! 父さん!!」
大声で騒ぐのを意に介さず、ヒル魔はひらひらと手を振ってさっさと車に乗り、走り去った。
妖介は呆然と遠くなるテールランプを見送るしかない。
「・・・嘘でしょ・・・」
妖介は周囲を見回すが、人の気配は全くない。
とりあえずこの縄を解いて、そこから考えなければならない。
ほんの二時間ほど前までは、ごく普通に食事をとっていたはずなのに。
と、耳にかすかに聞こえた獣の鳴き声。それに背筋をぞっと震わせる。
「っ・・・畜生!!」
妖介は一瞬でも騒ぎを起こした自らを呪いながらずりずりと這いつくばり、アーミーナイフへ向かって進み出した。
<続>
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鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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