旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
その白い腕を取ったことがある。
あれは確か、デスマーチが終わった翌日のこと。
少し出る、と告げれば、なにを心配したのか奴はついてくると言い出したのだ。
「ヒル魔くん一人じゃ何しでかすか分からないし」
「テメェここがどこだかわかってんのか? アメリカだぞ」
俺が一人で何か出来ると思っているのか、と言外に問う。
無論アメリカでもこの脅迫手帳の威力は変わらないが、この女は知らない。
銃を常に携帯して傍目に人らしからぬ外見なのだから、心配などするだけ無駄なのだが。
「・・・いいでしょ? ついていくだけよ」
交渉なんて出来るわけないし、などと言いながら糞マネは傍らにぴたりと寄り添った。
それを俺は随分奇妙な気持ちで見たのを覚えている。
確かに一ヶ月近く、共に走り抜けた他の連中との連帯感を覚えるのなら話はまだ分かる。
だが、俺はそんな関係にないはずだ。
「糞ガキどもの面倒見てりゃいいだろうが」
「セナとモン太くんは一緒に来るし、鈴音ちゃんが留守番していてくれるって。ほら、みんな疲れ果てて寝てたでしょ?」
それとも、と糞マネはきょろりとこちらを上目遣いに見つめた。
「ヒル魔くんは、私についてきて欲しくない理由でもある?」
理由はあると言えばあるし、ないと言えばない。
デコトラを売りさばくところをおとなしく見ているとも思えないし、かといってそのやり方を変えるつもりもない。
下手に疑われてきゃんきゃん吠えたてられるのも後々面倒なのもある。
「チッ。邪魔すんじゃねぇぞ」
「しないわよ! ・・・ところで、何するの?」
この五秒後、内容を一言告げただけで糞マネはやはりきゃんきゃん吠えたのだけれど。
そうしてデコトラを無事売りさばいて準備を整え、カジノへと繰り出す。
どうせ他の連中は全て素人、賭けたところでろくな稼ぎが出るはずもない。
当初から俺一人で稼ぐつもりだった。
「ねえ、ヒル魔くん・・・」
他の連中が即座にスロットやルーレットに向かう中、糞マネが危なっかしい足取りで近づいてくる。
糞チビのお守りでもしてやがれ、と言う前に。
案の定、糞マネは足を踏み外した。
「きゃ!!」
「っ」
咄嗟にのばした腕でその二の腕を掴む。
ひんやりとして滑らかなそれは、強く握れば折れそうなほどに細かった。
ひどく、柔らかい。
「っごめ・・・! あり、がと」
「ったく、疲れてんならその辺座ってろ」
「え?! いや、疲れてるわけじゃなくて、その・・・ヒールが慣れなくて」
見れば確かにヒールのサンダルだが、それほど高い訳じゃない。
まあ、日頃から履き慣れていなければそういうものかもしれないが。
「テメェ一人が動いたところで稼ぎなんざたかが知れてる。座ってろ」
「・・・まあそうだけど」
どうにも言葉のキレが悪い糞マネを訝しげに見れば、糞マネは少し逡巡したあと、腕を捕まれたままの状態でこちらにひそりと顔を寄せた。
「あのね」
体のラインを浮かび上がらせるタイトなドレス。
掴んだままの二の腕はふわふわと柔らかく頼りない。
そのままの状態で近づく糞マネに、俺は無意識に眉を寄せた。
「ヒル魔くん、膝、大丈夫?」
「・・・ア?」
一瞬、何を言うのかと考えてしまった。今までにないほどに近い距離まで近寄ってきた糞マネの意図がここにきて知れる。
「昨日、アイシングしなかったでしょ? 痛いんじゃないかと思って・・・」
けれどそれを皆の前で言うのは、最後まで苦しさを隠し通した彼の矜恃を傷つけることになるからと、そう配慮したようだ。
「ったく、何を言うかと思えば・・・」
「だって、心配だったのよ」
「見ての通りだ。問題ねぇよ」
実際は鈍い痛みがあるが、それはもう目をつぶっていられるぐらいの疼痛だ。
飄々と言い放てば、糞マネは心配そうにしつつもようやく離れた。
思い出したように二の腕を離せば、その跡が薄紅色に残っていた。
「じゃあ、もし辛くなったら言ってね。肩くらいなら貸すわよ」
「イラネ」
糞マネは俺の返事を気にした様子もなく、微笑んで人混みに姿を消す。
たった数分の間であっても、触れた痕跡が残る白い肌がやけに眩しかった。
僅かにでも触れられれば、それは消えぬ跡となり彼女を苛むのではないか、とまで思えた。
魚は人に触れられると火傷してしまうのだという。
しなやかに泳ぐ魚を素手で捕らえたのと同じように、あの腕はひんやりとした感触だった。
あの女は、俺に触れられれば火傷を負ってしまうのだろうか。
そんな益体もない考えを振り払って、俺は一人ブラックジャックのカウンターへと足を向けた。
***
二の腕は胸の柔らかさと同じなんですって(どうでもいい情報)。
魚が人に触れられると火傷するっていう話をどこかで聞いて、いつか使いたいなあと思っていたのでした。
あれは確か、デスマーチが終わった翌日のこと。
少し出る、と告げれば、なにを心配したのか奴はついてくると言い出したのだ。
「ヒル魔くん一人じゃ何しでかすか分からないし」
「テメェここがどこだかわかってんのか? アメリカだぞ」
俺が一人で何か出来ると思っているのか、と言外に問う。
無論アメリカでもこの脅迫手帳の威力は変わらないが、この女は知らない。
銃を常に携帯して傍目に人らしからぬ外見なのだから、心配などするだけ無駄なのだが。
「・・・いいでしょ? ついていくだけよ」
交渉なんて出来るわけないし、などと言いながら糞マネは傍らにぴたりと寄り添った。
それを俺は随分奇妙な気持ちで見たのを覚えている。
確かに一ヶ月近く、共に走り抜けた他の連中との連帯感を覚えるのなら話はまだ分かる。
だが、俺はそんな関係にないはずだ。
「糞ガキどもの面倒見てりゃいいだろうが」
「セナとモン太くんは一緒に来るし、鈴音ちゃんが留守番していてくれるって。ほら、みんな疲れ果てて寝てたでしょ?」
それとも、と糞マネはきょろりとこちらを上目遣いに見つめた。
「ヒル魔くんは、私についてきて欲しくない理由でもある?」
理由はあると言えばあるし、ないと言えばない。
デコトラを売りさばくところをおとなしく見ているとも思えないし、かといってそのやり方を変えるつもりもない。
下手に疑われてきゃんきゃん吠えたてられるのも後々面倒なのもある。
「チッ。邪魔すんじゃねぇぞ」
「しないわよ! ・・・ところで、何するの?」
この五秒後、内容を一言告げただけで糞マネはやはりきゃんきゃん吠えたのだけれど。
そうしてデコトラを無事売りさばいて準備を整え、カジノへと繰り出す。
どうせ他の連中は全て素人、賭けたところでろくな稼ぎが出るはずもない。
当初から俺一人で稼ぐつもりだった。
「ねえ、ヒル魔くん・・・」
他の連中が即座にスロットやルーレットに向かう中、糞マネが危なっかしい足取りで近づいてくる。
糞チビのお守りでもしてやがれ、と言う前に。
案の定、糞マネは足を踏み外した。
「きゃ!!」
「っ」
咄嗟にのばした腕でその二の腕を掴む。
ひんやりとして滑らかなそれは、強く握れば折れそうなほどに細かった。
ひどく、柔らかい。
「っごめ・・・! あり、がと」
「ったく、疲れてんならその辺座ってろ」
「え?! いや、疲れてるわけじゃなくて、その・・・ヒールが慣れなくて」
見れば確かにヒールのサンダルだが、それほど高い訳じゃない。
まあ、日頃から履き慣れていなければそういうものかもしれないが。
「テメェ一人が動いたところで稼ぎなんざたかが知れてる。座ってろ」
「・・・まあそうだけど」
どうにも言葉のキレが悪い糞マネを訝しげに見れば、糞マネは少し逡巡したあと、腕を捕まれたままの状態でこちらにひそりと顔を寄せた。
「あのね」
体のラインを浮かび上がらせるタイトなドレス。
掴んだままの二の腕はふわふわと柔らかく頼りない。
そのままの状態で近づく糞マネに、俺は無意識に眉を寄せた。
「ヒル魔くん、膝、大丈夫?」
「・・・ア?」
一瞬、何を言うのかと考えてしまった。今までにないほどに近い距離まで近寄ってきた糞マネの意図がここにきて知れる。
「昨日、アイシングしなかったでしょ? 痛いんじゃないかと思って・・・」
けれどそれを皆の前で言うのは、最後まで苦しさを隠し通した彼の矜恃を傷つけることになるからと、そう配慮したようだ。
「ったく、何を言うかと思えば・・・」
「だって、心配だったのよ」
「見ての通りだ。問題ねぇよ」
実際は鈍い痛みがあるが、それはもう目をつぶっていられるぐらいの疼痛だ。
飄々と言い放てば、糞マネは心配そうにしつつもようやく離れた。
思い出したように二の腕を離せば、その跡が薄紅色に残っていた。
「じゃあ、もし辛くなったら言ってね。肩くらいなら貸すわよ」
「イラネ」
糞マネは俺の返事を気にした様子もなく、微笑んで人混みに姿を消す。
たった数分の間であっても、触れた痕跡が残る白い肌がやけに眩しかった。
僅かにでも触れられれば、それは消えぬ跡となり彼女を苛むのではないか、とまで思えた。
魚は人に触れられると火傷してしまうのだという。
しなやかに泳ぐ魚を素手で捕らえたのと同じように、あの腕はひんやりとした感触だった。
あの女は、俺に触れられれば火傷を負ってしまうのだろうか。
そんな益体もない考えを振り払って、俺は一人ブラックジャックのカウンターへと足を向けた。
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魚が人に触れられると火傷するっていう話をどこかで聞いて、いつか使いたいなあと思っていたのでした。
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鳥(とり)
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性別:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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