旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
「・・・なんだ、その反応」
「・・・っ」
不服そうな彼の手が伸ばされるのを、顔は反らさないまま階段を後ろ向きに下りて避ける。
どうして今更、こんな時に、なぜこの場所に。
色々言葉は浮かんだが、彼がその気になればまもりの居場所などあっという間に知れるのは明白なので、何故とは言えない。
まもりはぐっと奥歯を噛みしめる。
ごく普通に働いていた時だったのなら、自分の生活基盤がしっかりしてさえいれば、彼と顔を合わせてもただ笑顔で挨拶出来ただろう。
けれど今、明日の生活さえ危ぶまれる日々の中、訳のわからない男には追いかけ回されるし、電話は鳴り続けるし、精神的にすり減っている状況で顔を合わせたくなかった。
ましてや、人の弱みと見るや嬉々としてからかってくるようなヒル魔には、特に。
「なんで逃げる」
「・・・そっちこそ、何の用?」
尖った声に、彼はぴんと片眉を上げただけだ。
「テメェがあんまりにも捕まらないんでナァ。俺が直々に来たんだよ」
「は?」
「携帯は繋がらねぇし人をやっても逃げるし」
「携帯? 人?」
「男がこっちに来ただろ」
「え?! あの人ってあなたが寄越してたの!? 何のために?!」
「アイツはウチの会社の人事採用担当だ」
「・・・で?」
まもりは眉を寄せたまま彼を見上げる。
「テメェ糞無職なんだってナァ」
「そうよ」
どうせ隠したところで彼の情報網によればすぐばれてしまう。
あっさりと肯定した彼女にヒル魔は楽しげに口角をつり上げた。
「心優しい俺が就職先を斡旋してやろう」
「お断りします」
間髪入れずまもりは切り返す。
ヒル魔はぴんと片眉を上げた。
「人の話も聞かねぇで、随分な対応だナァ」
「悪魔の甘言に耳を貸す程堕ちてないの。どいてちょうだい」
「まあ聞け」
「嫌よ」
とりつく島もないようなまもりに、ヒル魔はふん、と鼻を鳴らす。
「テメェ随分と疑り深くなりやがったナァ」
それにまもりは胸を突かれたような心地になる。
高校時代の、将来の不安なんてまだ先の事だと楽観視出来ていた頃の、純粋さなんてもうとうに失った。
現実を知るたびに無邪気に人を信じるなんて出来なくなっていた。
目の前の男がおそらくは弛まず歩き続けていた間も、まもりは立ち止まっている時間の方が長くて。
それで高校の時と同じような反応を返せと言われても、無理だ。
まもりは俯いたままヒル魔を押しのけ、玄関に鍵を差し入れる。
扉を細く開いて滑り込み、扉を閉めようとした瞬間。
「っ!」
「入れろ」
ぐい、と扉を強引にこじ開けようとする手に、まもりは眉を寄せて彼を睨む。
「警察呼ぶわよ」
彼の腕力は、まもりごときの力では対抗出来ない。
「ドウゾご自由に」
にたり、とヒル魔は笑う。
「ただ、近所の注目の的になるのは間違いねぇぞ?」
パトカーが来ればそれだけ騒然とする。大した被害もなく警察を呼べばそれだけ不審がられるだろう。
そうなればこのアパートに居づらくなり、新たな住処を捜さなければならないだろう。
けれど今現在職のない状態で新たな住まいなど探す事は困難だ。
的確に弱みを握られていくような感覚に、まもりは唇を咬んで扉から手を放した。
<続>
「・・・っ」
不服そうな彼の手が伸ばされるのを、顔は反らさないまま階段を後ろ向きに下りて避ける。
どうして今更、こんな時に、なぜこの場所に。
色々言葉は浮かんだが、彼がその気になればまもりの居場所などあっという間に知れるのは明白なので、何故とは言えない。
まもりはぐっと奥歯を噛みしめる。
ごく普通に働いていた時だったのなら、自分の生活基盤がしっかりしてさえいれば、彼と顔を合わせてもただ笑顔で挨拶出来ただろう。
けれど今、明日の生活さえ危ぶまれる日々の中、訳のわからない男には追いかけ回されるし、電話は鳴り続けるし、精神的にすり減っている状況で顔を合わせたくなかった。
ましてや、人の弱みと見るや嬉々としてからかってくるようなヒル魔には、特に。
「なんで逃げる」
「・・・そっちこそ、何の用?」
尖った声に、彼はぴんと片眉を上げただけだ。
「テメェがあんまりにも捕まらないんでナァ。俺が直々に来たんだよ」
「は?」
「携帯は繋がらねぇし人をやっても逃げるし」
「携帯? 人?」
「男がこっちに来ただろ」
「え?! あの人ってあなたが寄越してたの!? 何のために?!」
「アイツはウチの会社の人事採用担当だ」
「・・・で?」
まもりは眉を寄せたまま彼を見上げる。
「テメェ糞無職なんだってナァ」
「そうよ」
どうせ隠したところで彼の情報網によればすぐばれてしまう。
あっさりと肯定した彼女にヒル魔は楽しげに口角をつり上げた。
「心優しい俺が就職先を斡旋してやろう」
「お断りします」
間髪入れずまもりは切り返す。
ヒル魔はぴんと片眉を上げた。
「人の話も聞かねぇで、随分な対応だナァ」
「悪魔の甘言に耳を貸す程堕ちてないの。どいてちょうだい」
「まあ聞け」
「嫌よ」
とりつく島もないようなまもりに、ヒル魔はふん、と鼻を鳴らす。
「テメェ随分と疑り深くなりやがったナァ」
それにまもりは胸を突かれたような心地になる。
高校時代の、将来の不安なんてまだ先の事だと楽観視出来ていた頃の、純粋さなんてもうとうに失った。
現実を知るたびに無邪気に人を信じるなんて出来なくなっていた。
目の前の男がおそらくは弛まず歩き続けていた間も、まもりは立ち止まっている時間の方が長くて。
それで高校の時と同じような反応を返せと言われても、無理だ。
まもりは俯いたままヒル魔を押しのけ、玄関に鍵を差し入れる。
扉を細く開いて滑り込み、扉を閉めようとした瞬間。
「っ!」
「入れろ」
ぐい、と扉を強引にこじ開けようとする手に、まもりは眉を寄せて彼を睨む。
「警察呼ぶわよ」
彼の腕力は、まもりごときの力では対抗出来ない。
「ドウゾご自由に」
にたり、とヒル魔は笑う。
「ただ、近所の注目の的になるのは間違いねぇぞ?」
パトカーが来ればそれだけ騒然とする。大した被害もなく警察を呼べばそれだけ不審がられるだろう。
そうなればこのアパートに居づらくなり、新たな住処を捜さなければならないだろう。
けれど今現在職のない状態で新たな住まいなど探す事は困難だ。
的確に弱みを握られていくような感覚に、まもりは唇を咬んで扉から手を放した。
<続>
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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