旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
大企業ならではの清潔で高級感漂う造りに、やっぱりここで仕事は出来そうにないなあ、という気持ちが強くなっていく。
そもそもまもりとは最も縁遠いIT系の会社だし、秘書の能力もないし。
一応ヒル魔に挨拶したら帰ろう、という気持ちでまもりは社長室に案内される。
「どうぞ」
響いた声に、まもりは聞き覚えがある、と小首を傾げる。
そうして案内された先で彼女を出迎えた人に、目を丸くした。
「雪光くん!?」
「姉崎さん! お久しぶりです!」
「久しぶり! ・・・え、ここ、社長室・・・」
「そうですよ。僕はここでヒル魔さんの第一秘書をしています」
にこにこと昔と変わらない笑顔で話しかけられ、まもりはほっと頬をゆるめた。
全くの他人と接するより格段に気安い。
雪光は背後の男に視線を向ける。
「ご案内ありがとうございました。社長にお伝えしますね」
「では、よろしくお願いします」
社員の男が頭を下げて出て行く。
その背中を見送り、まもりは雪光に向き直った。
「じゃ、行きましょうか」
笑顔の雪光を、まもりは上目遣いで見上げる。
「あの・・・もう帰ってはダメかしら」
「は?」
「ここで秘書に、って言われたけど、どう考えても私には勤まりそうにもないし」
分不相応すぎて居心地が悪い、と苦笑すると雪光は不思議そうな顔をする。
「どうしてそう思われるんです?」
「だって・・・私、取り立てて事務系の資格や特技はないし、パソコンは相変わらずダメだし」
「何言ってるんですか。姉崎さんなら勉強したらあっという間に覚えますよ」
「でも」
戸惑うまもりを説得する雪光の背後で、扉が開く。
「オイ、いつまで待たせる気だ」
尊大な口調は、いつもの彼で。
昨日と同じ、なでつけた金髪、そして何故か眼鏡をかけている。
「テメェもここまで来てグダグダ抜かすんじゃねぇ。糞ハゲ、書類」
「はい」
「まだその呼び方してるの?」
「さすがに他の社員の前ではないですよ」
苦笑しながら雪光が書類をヒル魔に手渡す。
ざっと捲って見た後、それをまもりに突き出した。
「何・・・」
「雇用契約書」
それを見つめ、まもりは首を振る。
「今日はここに挨拶に来ただけだから。勤める気はないわ」
「テメェ、まだそんなこと言ってやがんのか」
ヒル魔の眉が不機嫌そうに寄る。
「他に勤め口がねぇんだろうが」
「そうだけど、まだ探すわ。時間はあるし」
「テメェみてぇなパソコン全く使えねぇ女が勤められる場所なんて今時ねぇだろうが。勉強しようにも金もねぇんだろ」
「職安の無料講習とか・・・」
「その間就職活動もできねぇでそのまま年越しするつもりか? いつあのアパート追い出されるか見物だナァ」
ぐうの音も出ない。
「・・・とにかく、私はここでお勤めするには力不足ですから、お気持ちだけ頂いてもう帰ります」
結局口では勝てないし、いちいち相手の方が正しいのは判る。
けれど言い返せない程何もない自分が情けなくて、まもりは早々にこの場を逃げ出したかった。
険悪な空気が重くなっていく。それを打破したのは雪光だった。
「まあまあ、そう焦らないで。そうだ、姉崎さんお昼召し上がりました?」
「はい?」
「ここの社員食堂、美味しいんですよ。お腹が空いてるとイライラしますし、食べてからまたお話ししましょう。ね?」
やんわりと割って入った雪光が笑顔でまもりを誘う。
苦々しげなヒル魔に笑みを浮かべると、彼はまもりを伴いさっさと社長室を後にした。
<続>
そもそもまもりとは最も縁遠いIT系の会社だし、秘書の能力もないし。
一応ヒル魔に挨拶したら帰ろう、という気持ちでまもりは社長室に案内される。
「どうぞ」
響いた声に、まもりは聞き覚えがある、と小首を傾げる。
そうして案内された先で彼女を出迎えた人に、目を丸くした。
「雪光くん!?」
「姉崎さん! お久しぶりです!」
「久しぶり! ・・・え、ここ、社長室・・・」
「そうですよ。僕はここでヒル魔さんの第一秘書をしています」
にこにこと昔と変わらない笑顔で話しかけられ、まもりはほっと頬をゆるめた。
全くの他人と接するより格段に気安い。
雪光は背後の男に視線を向ける。
「ご案内ありがとうございました。社長にお伝えしますね」
「では、よろしくお願いします」
社員の男が頭を下げて出て行く。
その背中を見送り、まもりは雪光に向き直った。
「じゃ、行きましょうか」
笑顔の雪光を、まもりは上目遣いで見上げる。
「あの・・・もう帰ってはダメかしら」
「は?」
「ここで秘書に、って言われたけど、どう考えても私には勤まりそうにもないし」
分不相応すぎて居心地が悪い、と苦笑すると雪光は不思議そうな顔をする。
「どうしてそう思われるんです?」
「だって・・・私、取り立てて事務系の資格や特技はないし、パソコンは相変わらずダメだし」
「何言ってるんですか。姉崎さんなら勉強したらあっという間に覚えますよ」
「でも」
戸惑うまもりを説得する雪光の背後で、扉が開く。
「オイ、いつまで待たせる気だ」
尊大な口調は、いつもの彼で。
昨日と同じ、なでつけた金髪、そして何故か眼鏡をかけている。
「テメェもここまで来てグダグダ抜かすんじゃねぇ。糞ハゲ、書類」
「はい」
「まだその呼び方してるの?」
「さすがに他の社員の前ではないですよ」
苦笑しながら雪光が書類をヒル魔に手渡す。
ざっと捲って見た後、それをまもりに突き出した。
「何・・・」
「雇用契約書」
それを見つめ、まもりは首を振る。
「今日はここに挨拶に来ただけだから。勤める気はないわ」
「テメェ、まだそんなこと言ってやがんのか」
ヒル魔の眉が不機嫌そうに寄る。
「他に勤め口がねぇんだろうが」
「そうだけど、まだ探すわ。時間はあるし」
「テメェみてぇなパソコン全く使えねぇ女が勤められる場所なんて今時ねぇだろうが。勉強しようにも金もねぇんだろ」
「職安の無料講習とか・・・」
「その間就職活動もできねぇでそのまま年越しするつもりか? いつあのアパート追い出されるか見物だナァ」
ぐうの音も出ない。
「・・・とにかく、私はここでお勤めするには力不足ですから、お気持ちだけ頂いてもう帰ります」
結局口では勝てないし、いちいち相手の方が正しいのは判る。
けれど言い返せない程何もない自分が情けなくて、まもりは早々にこの場を逃げ出したかった。
険悪な空気が重くなっていく。それを打破したのは雪光だった。
「まあまあ、そう焦らないで。そうだ、姉崎さんお昼召し上がりました?」
「はい?」
「ここの社員食堂、美味しいんですよ。お腹が空いてるとイライラしますし、食べてからまたお話ししましょう。ね?」
やんわりと割って入った雪光が笑顔でまもりを誘う。
苦々しげなヒル魔に笑みを浮かべると、彼はまもりを伴いさっさと社長室を後にした。
<続>
PR
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
カウンター
カテゴリー
プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
最新コメント
最新トラックバック
ブログ内検索
最古記事
(02/16)
(02/16)
(02/16)
(02/16)
(02/16)
アクセス解析
フリーエリア