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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ストローフィ・リング(25)


+ + + + + + + + + +
さすがにプロとはいえ、人目につきにくい裏通りを中心に駆け抜けたセナの息は、まもりの家の前に立つ頃にはすっかり上がっていた。
「ごめんね、セナ」
「いい・・・から。そういう、ときは、どうするん、だった?」
切れる息の合間の言葉、それでも笑みが滲むそれに、まもりはゆるりと笑みを浮かべる。
「ありがとう」
「そ、う。それでこそ姉ちゃんだよ」
息をついて、彼はチャイムを鳴らした。
まもりの腕は、縋るようにセナの肩に触れるばかりだったから。
「・・・はい、どなた?」
程なく開いた扉の向こう。
姿を現したまもりの母は、セナと、その腕にいるまもりの姿を見た途端。
彼女は二人を引き込み、慌ただしく扉を閉めた。
明らかにやせ細った彼女の痛ましい姿に、説明など必要なかった。
ただただ辛かったのだろうと察して、まもりの母は泣き、彼女を抱きしめた。
奥から騒ぎを聞きつけて姿を現したまもりの父もただごとではない空気を察し、ただセナに頭を下げた。
上がっていって欲しい、という両親の申し出に彼は首を振る。
「僕はもう行かないと。今日の予定が入ってますから」
「・・・本当にありがとう、セナ」
涙に掠れたまもりの声ににっこりと笑ってセナは再び走り去った。


両親に事情の説明を求められても、どこから話せばいいのか、話せるのかが判らなかった。
昔の通り残されていたまもりの部屋。
そのベッドに横たわるまもりに、母親が静かに問いかける。
「・・・あなたが高校の時に付き合っていた、ヒル魔くんとはここ最近なにかあったの?」
「なにか、って・・・」
それにひくりと肩を震わせ、まもりは殊更平静を装って声を出そうとするが。
「やっぱり、彼が関係してるのね?」
やっぱり、という言葉にまもりは瞳を見開く。
「つい昨日、あなたの所在を尋ねる電話が続いたのよ。ヒル魔くんもだし、あと雪光さんや、私たちが知らない名前の人も」
「・・・」
「あんまり続いたから、きっと何かあったんだと思ったのよ。でも貴方の携帯は繋がらなかったし―――迂闊に教えられないと思って最近連絡は取ってないっていうことだけ言っておいたの」
まもりの細く冷えた手をさすり、まもりの母は涙を滲ませつつ続ける。
「帰ってきてくれて、よかったわ」
純粋に心配と安堵が滲む声に、それでもまもりは俯く。
「・・・二人に合わせる顔が、なくって」
大丈夫だからと説得を重ね、それでも首を縦に振らなかった父を押し切って飛び出してした一人暮らし。
自分の都合で何かがあっても近寄るまいと決めていた。
その程度か、と思われるのも辛かったし、実家からの連絡もないままで。
そうして、次第に実家の敷居は高くなった気がしていった。
「お父さんはね、まもりが帰ってくるのをずっと待ってたのよ」
「え?」
「一人暮らしするって飛び出していった後も、辛かったら帰ってくるだろう、可愛い子には旅をさせよ、だなんて言っていたけど、・・・まもりも頑固だから、連絡もなかったしましてや帰ってくることもなかったから、意固地になっちゃってたのね」
一週間、一ヶ月、一年―――何年経っても、まもりからの連絡も、帰宅もなく。
無事なのかと気を揉んでも、長く時が経ちすぎて連絡をするのも躊躇われ。
結局、今日この日まで時が経ってしまった。
まもりの手をさする母の手は随分と皺が増えた気がする。
そういえば、先ほど見た父の髪にも白髪が増えていた。
「便りがないのは元気な証拠よ、なんて言って慰め合ってたんだけど―――」
ぴたりと今までさすっていた手が止まる。ぼろぼろと、まもりの手の甲に涙が落ちる。
「ごめんね」
小さな母の謝罪は、嗚咽に紛れていたけれど、まもりの耳にしっかりと届く。
「まもりが辛くてたまらないのを気づいてあげられなくて」
帰って来づらい状況にさせてしまって申し訳ないと、母は泣く。
「そんな・・・だって、それは私が、自分で言えなかった、から・・・」
まもりの瞳にも涙が滲む。妙な意地を張って、帰れなかったのは自分の方。
迎えてくれるのだと素直に思えなかったのも、自らの自信のなさの裏返し。
「ごめんなさい・・・」
「ごめんね、まもり・・・ごめんね・・・」
どれだけ両親に心配を掛けたのだろうか。
申し訳なくて、切なくて、けれど心底嬉しくて、まもりは母の手を握り、声を上げて、泣いた。
それは罅入って壊れかかった心に沁みる、慈雨のようだった。


<続>
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