旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
そこでまもりは唐突に思い出す。
「・・・あ!!」
「え?! 何か処分しちゃ不味いものあった!?」
「あ、あの・・・パソコン・・・」
あれは会社の備品だったのだ。思い出してまもりは青くなる。
特に連絡は来ていないが、返さねば不味いだろう。
「これ?」
だが、すぐにひょい、と母が取りだした。
「なんであるの?!」
「だって、これだけ備品のシールがついてますよ、って業者さんが言ってたから」
ほら、と見せられてほっと安堵する。けれど社名を見るだけで少々気分が悪くなった。
「これは後で宅配便で送ればいいわね。その他は?」
「その他―――」
あの部屋に思い悩む程大事な物を置いていただろうか。
「まあ、何か処分に困るものが出たら連絡くれるわよ」
高価な物が出てくることもありますから、と言われたのだと母は鷹揚に笑う。
「そうね」
何かあったかしら、と思いながらまもりはシュークリームを食べ終えた。
その日。
まもりの両親はどうしても外せない用事があるとかで、まもりを一人残して外出した。
「大丈夫?」
「もう平気よ。知らない人が来たら絶対出ないから」
「ならいいけど・・・」
まるで子供を残していくかのような口調に、まもりは苦笑を禁じ得ない。
「ほら、急がないと約束の時間に遅れるわよ」
笑顔で送り出すまもりに、何かあったら連絡しなさいよ、と噛んで含めるように言い、両親は連れ立って出掛けた。
この家で一人になるのは帰ってきてからは初めてだ。
それでも苦しさはない。あの部屋ではなく、この家には幼い頃からの思い出があるから。
それらがまもりを包み込んで守ってくれているようで、微笑んで掃除に取りかかる。
まもりの母もきれい好きだから汚れがひどいところもない。
ふんふんと鼻歌交じりに古新聞を片づけていると、ドアチャイムが鳴った。
「はーい?」
「書留でーす」
一応念のため覗き窓から見てみるが、間違いなく郵便局員だ。
まもりは扉を開ける。
「こちらに判子かサインお願いしまーす」
「はい」
発送元には業者名が入っているが、それがとこかが咄嗟に判らない。
「では確かに! ありがとうございましたー!」
「ありがとうございます」
爽やかな挨拶をして去っていく局員の声を背に、まもりはその表書きを見る。
送り先は父宛だった。
まもりはその封筒をリビングに置き、途中だった片づけに戻った。
しばらくその他の作業をしていて。
ゴミを捨てなきゃ、という考えに至ったときに思い出す。
「あ」
あの会社名は確か、まもりの部屋の掃除を請け負った業者のものだったはず。
両親はまもりの医療費や食費、その他一切を受け取ろうとはしない。
預金通帳にはそれなりの貯金があるのだが、また使うだろうからと突き返されてしまった。
きっとあの掃除代を渡しても受け取ってくれないだろう。
それならば自分で払ってしまおう、と考えてその封筒を開く。
そこにある、予想外に少ない金額に瞬いた。
どうやらあの服が予想に反し、結構な額で売れたらしい。
差し引かれた金額により、ほとんど基本料金しか請求しない業者に随分と良心的ね、と考えて。
もう一つ、何かが入っているのに気づいた。
「?」
ひっくり返すと、緩衝材に厳重に包まれた小さな包みが出てくる。
『クリーニング業者からポケットに入っていたと返却されましたので、お送りします』
丁寧に付箋までついている。
一体なんだろうかと首を傾げながらそれを開いて。
そうして、開いた緩衝材から覗く光に、まもりは手を滑らせる。
「――――ッ!!!」
指輪が隙間から転がり出てきた。
硬直するまもりの前に、まるで導かれるように、ころころと。
「あ・・・」
宝石の並ぶ、ヒル魔の、指輪。
途端に逆流する記憶。
あのむせかえる暑い日、あの時。
固い音を立てて歯がぶつかった。
てっきり最初に収容された病院に残してきた服に入っていたのだと思っていたのに。
<続>
「・・・あ!!」
「え?! 何か処分しちゃ不味いものあった!?」
「あ、あの・・・パソコン・・・」
あれは会社の備品だったのだ。思い出してまもりは青くなる。
特に連絡は来ていないが、返さねば不味いだろう。
「これ?」
だが、すぐにひょい、と母が取りだした。
「なんであるの?!」
「だって、これだけ備品のシールがついてますよ、って業者さんが言ってたから」
ほら、と見せられてほっと安堵する。けれど社名を見るだけで少々気分が悪くなった。
「これは後で宅配便で送ればいいわね。その他は?」
「その他―――」
あの部屋に思い悩む程大事な物を置いていただろうか。
「まあ、何か処分に困るものが出たら連絡くれるわよ」
高価な物が出てくることもありますから、と言われたのだと母は鷹揚に笑う。
「そうね」
何かあったかしら、と思いながらまもりはシュークリームを食べ終えた。
その日。
まもりの両親はどうしても外せない用事があるとかで、まもりを一人残して外出した。
「大丈夫?」
「もう平気よ。知らない人が来たら絶対出ないから」
「ならいいけど・・・」
まるで子供を残していくかのような口調に、まもりは苦笑を禁じ得ない。
「ほら、急がないと約束の時間に遅れるわよ」
笑顔で送り出すまもりに、何かあったら連絡しなさいよ、と噛んで含めるように言い、両親は連れ立って出掛けた。
この家で一人になるのは帰ってきてからは初めてだ。
それでも苦しさはない。あの部屋ではなく、この家には幼い頃からの思い出があるから。
それらがまもりを包み込んで守ってくれているようで、微笑んで掃除に取りかかる。
まもりの母もきれい好きだから汚れがひどいところもない。
ふんふんと鼻歌交じりに古新聞を片づけていると、ドアチャイムが鳴った。
「はーい?」
「書留でーす」
一応念のため覗き窓から見てみるが、間違いなく郵便局員だ。
まもりは扉を開ける。
「こちらに判子かサインお願いしまーす」
「はい」
発送元には業者名が入っているが、それがとこかが咄嗟に判らない。
「では確かに! ありがとうございましたー!」
「ありがとうございます」
爽やかな挨拶をして去っていく局員の声を背に、まもりはその表書きを見る。
送り先は父宛だった。
まもりはその封筒をリビングに置き、途中だった片づけに戻った。
しばらくその他の作業をしていて。
ゴミを捨てなきゃ、という考えに至ったときに思い出す。
「あ」
あの会社名は確か、まもりの部屋の掃除を請け負った業者のものだったはず。
両親はまもりの医療費や食費、その他一切を受け取ろうとはしない。
預金通帳にはそれなりの貯金があるのだが、また使うだろうからと突き返されてしまった。
きっとあの掃除代を渡しても受け取ってくれないだろう。
それならば自分で払ってしまおう、と考えてその封筒を開く。
そこにある、予想外に少ない金額に瞬いた。
どうやらあの服が予想に反し、結構な額で売れたらしい。
差し引かれた金額により、ほとんど基本料金しか請求しない業者に随分と良心的ね、と考えて。
もう一つ、何かが入っているのに気づいた。
「?」
ひっくり返すと、緩衝材に厳重に包まれた小さな包みが出てくる。
『クリーニング業者からポケットに入っていたと返却されましたので、お送りします』
丁寧に付箋までついている。
一体なんだろうかと首を傾げながらそれを開いて。
そうして、開いた緩衝材から覗く光に、まもりは手を滑らせる。
「――――ッ!!!」
指輪が隙間から転がり出てきた。
硬直するまもりの前に、まるで導かれるように、ころころと。
「あ・・・」
宝石の並ぶ、ヒル魔の、指輪。
途端に逆流する記憶。
あのむせかえる暑い日、あの時。
固い音を立てて歯がぶつかった。
てっきり最初に収容された病院に残してきた服に入っていたのだと思っていたのに。
<続>
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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