旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
「着替えて!」
「え」
「早く! ヒル魔さんがここを突き止める前に出よう」
まもりは渡された服を前にセナを見上げた。
「見つかったら、まずいんでしょ?」
「・・・でも」
セナに迷惑が、と戸惑うまもりに焦れて、セナはパーカーをまもりに被せた。
「わぷ!」
「とにかく! まもり姉ちゃんの家に行こう。おじさんもおばさんもまだあそこに住んでるし」
眉を寄せるまもりの肩を掴んで、セナは更に続ける。
「他に無条件で味方になってくれる人が、今はすぐ浮かばないんだ」
「私、もう何年も―――」
「僕だって姉ちゃんとは何年も会ってなかったよ。でも」
セナは自らも着替え、靴を履く。
貴重品だけを身につけた軽装で、まもりを真っ直ぐに見た。
「姉ちゃんと僕の関係が変わる訳じゃない。おじさんとおばさんだってそうでしょ?」
見上げるまもりにセナはにっこりと笑った。
「いつだって、まもり姉ちゃんの味方だよ」
それにまもりの瞳が揺らぐ。
ぼろっと溢れる涙に、セナはタオルを押しつけた。
泣いている暇などない。
「さあ、早く。ヒル魔さんからの着信がここ数時間ないんだ。もしかしたらもうここを突き止めたかも」
「っ」
こちらに電話を寄越さない理由が諦めなどではないと、セナも判っている。
他によっぽどのことがない限り、一度手を付けたことは最後までやり通すのが彼のやり方だ。
「探してる理由は僕にはわからないけど・・・」
まもりが俯くのにそれ以上は追求せず、セナはまもりの両肩を掴む。
「そんなことは後でいい。早く着替えて、ここを出るよ」
強い瞳に、まもりは少しの逡巡の後、頷く。
サイズのまるで合わない服を着て、まもりは戸惑う。
靴がない。
だが、セナは躊躇わずまもりを抱き上げた。
「ちょっ!?」
「公共の交通機関は使えないし、タクシーも無理。僕の友達関係もこの時間じゃ誰も掴まらない。・・・でも、幸いここからならそんなに泥門町は遠くない」
まもりは目を見開いた。
「まさか、走っていくの?」
そんな彼女にセナはにっと口角を上げた。
「現役プロ選手の体力はそんなに柔じゃないよ」
「糞ッ!!」
ガシャン、と派手な音を立てて叩きつけられた受話器が、僅かに欠ける。
その様子を見て雪光は眉を寄せるが、口はまだ開かない。
まるで余裕のない彼に、このタイミングで話しかけても無駄だと知っているから。
まもりが入院したのだと聞かされ、この会社に引き込んだことが彼女をそこまで追い込んだのか、と暗鬱な気持ちになった雪光だったが、悔やんだところで仕事がその分減るわけではない。いつも通り出社した彼は、社長室から漏れ聞こえる声に気づいてそっとその中を伺った。
そして目にしたのは。
おそらく一睡もせず情報を収集していたらしい彼の姿。
彼女は入院中では、と口に出そうとしたが、次々と掛ける電話での会話をつなぎ合わせれば事実が知れる。
姉崎まもりが、行方不明。そして、未だ見つかっていない。
ヒル魔の情報網を持ってしても見つからないのだという。
けれどようやく一つの情報が彼の元に入ってきた。
見知らぬ青年とまもりとおぼしき人物が深夜、タクシーに一緒に乗り込んできたのだという。
詳しい情報をたぐり寄せ、そうして突き止めたホテル。
その宿泊者名簿、そこに名があったのは―――小早川瀬那。
ホテルに連絡し、ヒル魔に脅された支配人が室内に立ち入ったが、そこは既にもぬけの殻だった。
「・・・どこに行った」
低い呻きに、雪光は一瞬瞑目した。
ぎらついた眸は余裕などなく、纏う雰囲気は痛々しくさえある。
もう、これ以上彼が動いても事態は収束しない。
それはこの一件に関わる全て、ヒル魔・まもり・セナのいずれをも知る第三者だから判ること、
「ヒル魔さん」
静かな雪光の声に、彼はのろりと視線を向ける。
「少し落ち着いて下さい。今日の分の仕事がもう溜まってきています」
そんなもの、と言いかけてヒル魔は口をつぐんだ。
静かな雪光の瞳に映る自分がいかに滑稽かを知らしめられた気がしたから。
「たかが秘書一人に振り回されて業績が傾いたらどうするんです」
たかが、に殊更力を込めた雪光に交わっただけで音がしそうなほど苛烈な視線が向かう。
それでも彼は平然としていた。
「セナくんが一緒なら姉崎さんはむしろ安全です。今はこちらの業務を優先させて下さい」
有無を言わせない口調に、ヒル魔は押し黙る。
そしてのろりと立ち上がると奥へと下がった。
響く水音に、身繕いをしているのだと知れてほっと息をついた雪光は、先ほどヒル魔が欠けさせた受話器を持ち上げ、電話をかけた。
<続>
「え」
「早く! ヒル魔さんがここを突き止める前に出よう」
まもりは渡された服を前にセナを見上げた。
「見つかったら、まずいんでしょ?」
「・・・でも」
セナに迷惑が、と戸惑うまもりに焦れて、セナはパーカーをまもりに被せた。
「わぷ!」
「とにかく! まもり姉ちゃんの家に行こう。おじさんもおばさんもまだあそこに住んでるし」
眉を寄せるまもりの肩を掴んで、セナは更に続ける。
「他に無条件で味方になってくれる人が、今はすぐ浮かばないんだ」
「私、もう何年も―――」
「僕だって姉ちゃんとは何年も会ってなかったよ。でも」
セナは自らも着替え、靴を履く。
貴重品だけを身につけた軽装で、まもりを真っ直ぐに見た。
「姉ちゃんと僕の関係が変わる訳じゃない。おじさんとおばさんだってそうでしょ?」
見上げるまもりにセナはにっこりと笑った。
「いつだって、まもり姉ちゃんの味方だよ」
それにまもりの瞳が揺らぐ。
ぼろっと溢れる涙に、セナはタオルを押しつけた。
泣いている暇などない。
「さあ、早く。ヒル魔さんからの着信がここ数時間ないんだ。もしかしたらもうここを突き止めたかも」
「っ」
こちらに電話を寄越さない理由が諦めなどではないと、セナも判っている。
他によっぽどのことがない限り、一度手を付けたことは最後までやり通すのが彼のやり方だ。
「探してる理由は僕にはわからないけど・・・」
まもりが俯くのにそれ以上は追求せず、セナはまもりの両肩を掴む。
「そんなことは後でいい。早く着替えて、ここを出るよ」
強い瞳に、まもりは少しの逡巡の後、頷く。
サイズのまるで合わない服を着て、まもりは戸惑う。
靴がない。
だが、セナは躊躇わずまもりを抱き上げた。
「ちょっ!?」
「公共の交通機関は使えないし、タクシーも無理。僕の友達関係もこの時間じゃ誰も掴まらない。・・・でも、幸いここからならそんなに泥門町は遠くない」
まもりは目を見開いた。
「まさか、走っていくの?」
そんな彼女にセナはにっと口角を上げた。
「現役プロ選手の体力はそんなに柔じゃないよ」
「糞ッ!!」
ガシャン、と派手な音を立てて叩きつけられた受話器が、僅かに欠ける。
その様子を見て雪光は眉を寄せるが、口はまだ開かない。
まるで余裕のない彼に、このタイミングで話しかけても無駄だと知っているから。
まもりが入院したのだと聞かされ、この会社に引き込んだことが彼女をそこまで追い込んだのか、と暗鬱な気持ちになった雪光だったが、悔やんだところで仕事がその分減るわけではない。いつも通り出社した彼は、社長室から漏れ聞こえる声に気づいてそっとその中を伺った。
そして目にしたのは。
おそらく一睡もせず情報を収集していたらしい彼の姿。
彼女は入院中では、と口に出そうとしたが、次々と掛ける電話での会話をつなぎ合わせれば事実が知れる。
姉崎まもりが、行方不明。そして、未だ見つかっていない。
ヒル魔の情報網を持ってしても見つからないのだという。
けれどようやく一つの情報が彼の元に入ってきた。
見知らぬ青年とまもりとおぼしき人物が深夜、タクシーに一緒に乗り込んできたのだという。
詳しい情報をたぐり寄せ、そうして突き止めたホテル。
その宿泊者名簿、そこに名があったのは―――小早川瀬那。
ホテルに連絡し、ヒル魔に脅された支配人が室内に立ち入ったが、そこは既にもぬけの殻だった。
「・・・どこに行った」
低い呻きに、雪光は一瞬瞑目した。
ぎらついた眸は余裕などなく、纏う雰囲気は痛々しくさえある。
もう、これ以上彼が動いても事態は収束しない。
それはこの一件に関わる全て、ヒル魔・まもり・セナのいずれをも知る第三者だから判ること、
「ヒル魔さん」
静かな雪光の声に、彼はのろりと視線を向ける。
「少し落ち着いて下さい。今日の分の仕事がもう溜まってきています」
そんなもの、と言いかけてヒル魔は口をつぐんだ。
静かな雪光の瞳に映る自分がいかに滑稽かを知らしめられた気がしたから。
「たかが秘書一人に振り回されて業績が傾いたらどうするんです」
たかが、に殊更力を込めた雪光に交わっただけで音がしそうなほど苛烈な視線が向かう。
それでも彼は平然としていた。
「セナくんが一緒なら姉崎さんはむしろ安全です。今はこちらの業務を優先させて下さい」
有無を言わせない口調に、ヒル魔は押し黙る。
そしてのろりと立ち上がると奥へと下がった。
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<続>
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趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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