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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ストローフィ・リング(21)


+ + + + + + + + + +
ヒル魔はけたたましく鳴る電話に眉を寄せた。
本来なら秘書を通すはずの電話は、直接ヒル魔の元に届く。
今日はまもりが無断欠勤したために尻ぬぐいをするハメになった雪光の不在によるものだ。
「・・・糞ッ」
何度目とも知れない舌打ちをしてヒル魔は受話器を持ち上げる。
「ヒル魔です」
完璧に作られた穏やかな口調は、今の苛立ちや機嫌の悪さなどを一切伺わせない。
けれど。
『随分ご機嫌斜めじゃないの? 妖くん』
「・・・!」
受話器から届いた軽やかな女の声に、ヒル魔は目を見開いた。


深夜の道は暗く、どこを歩いているのか判断が付かない。
立っているのか横になっているのかさえ判らなくなるような重力の逆流に巻き込まれ、まもりは身体を塀に預ける。
ぐらぐらする頭で見上げた空は、星がいくつか見えるだけで、後は深く、暗い。
何処へ行く当てもなく歩いたまもりの耳に聞こえたのは。
「・・・まもり姉ちゃん?」
「・・・セナ?」
もう何年も会っていないはずの、セナの声。
彼はNFLでプロ選手として活躍していたはずだ。
日本になんて、ましてやこんな場所にいるはずがない。
「ホントにまもり姉ちゃんなの?! 何でこんな時間に、こんな場所に、そんな・・・格好・・・」
次第に途切れていく言葉に、まもりはうっすらと笑った。
なんだ、夢か、と。
色々なことが起こりすぎて、一体何が現実で何が夢かが判らない。
まもりはこの場にそぐわない透明な笑みを浮かべ、その場に倒れ込んで、意識を失った。


まもりが倒れ、病院に収容されたと聞かされたヒル魔が仕事を終えて向かったのは、既に深夜。
病院側は勿論眉を顰めたけれど、お得意の脅迫手帳で黙らせ、彼女の元に向かう。
まもりが眠っているはずの場所は何故か。
「・・・誰もいねぇぞ」
「え?! そんな、まさか・・・」
看護師が目を見開き、室内を確認する。
「さきほどまで、眠っていて・・・」
抜き取られた点滴の針、乱れたシーツに残るのは、・・・どす黒い、血。
スリッパもそのままに、何一つ持たない状態で彼女は姿を消していた。
ようやく異常を察知した看護師が足早にトイレを確認し、他の看護師にも声を掛ける。
けれど彼女の姿は忽然と消えていた。
「こちらにもいません」
「姿を見た人はいないの?」
「三十分前に巡回した時にはいました」
ヒル魔は床を見る。点滴を抜いた跡から滴ったらしい血が床に点々と落ちている。
それは途切れながら玄関へと続いていた。
「・・・チッ!」
舌打ちをし、ヒル魔はその跡を追って走り出した。

セナはNFLの選手として活躍していたが、日本ではまだまだ認知度が低く、帰国してもそんなに騒がれることはない。
今日はたまたまこのあたりに住む友人の家に遊びに来ていて、酒が入ったので車で送れないと申し訳なさそうに謝る友人に手を振って歩いて帰宅していたところだったのだ。
一応マイナーな競技とはいえ、彼もプロ選手と言うことで色々と取材を受けたり社会人チームの練習に招かれたりと色々忙しない。更に今回は妻である鈴音が現在妊娠中で飛行機に乗れず一緒に帰国できなかったので、利便性を優先してホテルで主に生活していた。
ツインをとっておいて良かった、と嘆息する。
昏々と眠るまもりを、セナは沈痛な面持ちで見下ろす。
こんなに痩せて、尋常じゃない様子であんな場所をふらふらと歩いていて。
しばらく連絡を取っていなかったことを、セナは心底後悔していた。
まめに連絡を取っていれば、こんな状況になる前に、何かしらの相談に乗ってあげられたのではないか、と。
鈴音がいれば色々と話を聞き出してもらえただろうが、いないものはしょうがない。
朝になったら、まもりの話を聞いて実家に連絡を入れよう。
そう考えて、セナは隣のベッドに潜り込んだ。
静かすぎる呼吸音に逆に落ち着かない気持ちで。

<続>
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