旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
目が覚めて、まもりは瞬いた。
見覚えのない天井だ。
ああ、夢かしら、とまず思って。
いいや今目が覚めたのに、と思い直す。
化粧をして、着替えて、出勤しなければ。
そう思うのに、胃が痛くて起きあがれない。
「・・・あ、起きた?」
「?!」
唐突に掛けられた声に、まもりは胃の痛みも忘れて飛び起きる。
そこにいたのは、かつてと変わらない優しい笑みを浮かべたセナだった。
シャワーを浴びたのだろう、その髪からぽたりと雫が落ちる。
「私・・・」
「覚えてる? まもり姉ちゃん、昨日夜道でその格好のまま歩いてたんだよ」
「え?」
まもりは自らの格好を見下ろした。病院で入院患者に着せる、ガーゼのあの服だ。
その所々に血が散っている。
あれは、では。
病院で目が覚めたのは、夢ではなかったのか?
「声を掛けたらすぐ倒れちゃったし、そのままにしておけなくて、ここまで連れてきたんだ」
「そう、だったの」
「あの時間だから誰にも電話できなくて・・・」
セナの言葉に、記憶を辿ろうとしたが、ただ逃げなければ、という気持ちがあったことしか覚えていない。
「・・・顔色が悪いね。だい・・・」
『大丈夫?』という一言を呑み込んで、セナはまもりに笑みを見せる。
どう見たって、大丈夫なんて状態じゃないに決まっているのだから。
そうして大丈夫かと尋ねれば、まもりはきっと笑みを浮かべて大丈夫だと言い切るから。
あからさまな嘘をつかせたくなかった。
「何か食べられそう?」
「ううん、ちょっと・・・無理」
重く鈍く痛む胃は、到底食料を受け入れるような状態ではない。
「じゃあ水は?」
渡されるペットボトルをまもりはありがたく受け取る。喉は渇いていた。
少しずつ嚥下する様子を見ていたセナはクローゼットから取り出しておいた携帯電話を見る。
ヒル魔からの着信はいくつか続いていたが、ここ数時間はふつりと切れている。
どう考えてもおかしいまもりの様子に、セナは逡巡するが、彼も仕事がある。
このままこの部屋で療養させてもいいが、明らかに病院治療が必要なのは見て取れる。
「まもり姉ちゃん」
「なあに?」
ふわりと笑みを浮かべ、ペットボトルを下ろしたまもりの顔は青白くやつれていたけれど、以前と同じ柔らかい表情で。
「体調が悪いみたいだし・・・病院へ」
行こう、と言う前に。
まもりの表情が失せて、まるで人形のような顔になる。
思わず言葉を失ったセナに、まもりはぎこちなく口を開いた。
「・・・保険証とか、お金とか・・・今、持ってなくて」
「それくらいなら僕が出すから」
「そ、それに・・・今、私、着替えとか、何もなくて」
あからさまに病院を避けようとするまもりに、セナは眉を寄せた。
着の身着のままで逃げ出してきたような彼女が今、そんなモノを持っているとは思えない。
実際まもりは手ぶらだったし、格好だって普通じゃない。
「そんな顔色で、食欲もないっていうのに、病院にも行かない状態にしておけないよ」
「いいの!」
まもりは首を振る。シーツを握るその手が、震えていた。
白く、骨張って、痛々しい程に弱った腕が。
さすがにセナもかっとなる。
「いいのって、そんな訳ないでしょ!? ちゃんと治療しないと―――」
「だって、見つかったら!」
滅多にない、セナの怒声にも怯まずに上げたまもりの声。
だが、その内容にセナはぴたりと止まる。
『見つかったら』
それは、誰が、誰に?
セナは携帯を握りしめる。あの不自然な姿のまもり、唐突なヒル魔からの電話。
では、彼らに繋がりがあるのか。
それも、高校の時とは全く違うような繋がり、が?
セナは目を見開いた。
ここまで来るのに、彼はタクシーを使った。
まもり一人くらいなら抱えて帰れる距離だったが、異様な雰囲気に人目につくのは不味いと判断してのことだが。
だが、彼の情報網ならセナとまもりが一緒のタクシーに乗ったことくらいすぐ知れる。
「・・・ヒル魔さんだね?」
「っ」
「昨日の夜、着信があったんだ。最近連絡がなかったのに、唐突で、真夜中だったし、・・・まもり姉ちゃんと関わりがあるのかと思ってたけど・・・」
まもりの顔色がみるみるうちに青ざめる。
確信したセナは自らの着替えをいくつか取り出した。
この際サイズがどうこう言っていられない。
<続>
見覚えのない天井だ。
ああ、夢かしら、とまず思って。
いいや今目が覚めたのに、と思い直す。
化粧をして、着替えて、出勤しなければ。
そう思うのに、胃が痛くて起きあがれない。
「・・・あ、起きた?」
「?!」
唐突に掛けられた声に、まもりは胃の痛みも忘れて飛び起きる。
そこにいたのは、かつてと変わらない優しい笑みを浮かべたセナだった。
シャワーを浴びたのだろう、その髪からぽたりと雫が落ちる。
「私・・・」
「覚えてる? まもり姉ちゃん、昨日夜道でその格好のまま歩いてたんだよ」
「え?」
まもりは自らの格好を見下ろした。病院で入院患者に着せる、ガーゼのあの服だ。
その所々に血が散っている。
あれは、では。
病院で目が覚めたのは、夢ではなかったのか?
「声を掛けたらすぐ倒れちゃったし、そのままにしておけなくて、ここまで連れてきたんだ」
「そう、だったの」
「あの時間だから誰にも電話できなくて・・・」
セナの言葉に、記憶を辿ろうとしたが、ただ逃げなければ、という気持ちがあったことしか覚えていない。
「・・・顔色が悪いね。だい・・・」
『大丈夫?』という一言を呑み込んで、セナはまもりに笑みを見せる。
どう見たって、大丈夫なんて状態じゃないに決まっているのだから。
そうして大丈夫かと尋ねれば、まもりはきっと笑みを浮かべて大丈夫だと言い切るから。
あからさまな嘘をつかせたくなかった。
「何か食べられそう?」
「ううん、ちょっと・・・無理」
重く鈍く痛む胃は、到底食料を受け入れるような状態ではない。
「じゃあ水は?」
渡されるペットボトルをまもりはありがたく受け取る。喉は渇いていた。
少しずつ嚥下する様子を見ていたセナはクローゼットから取り出しておいた携帯電話を見る。
ヒル魔からの着信はいくつか続いていたが、ここ数時間はふつりと切れている。
どう考えてもおかしいまもりの様子に、セナは逡巡するが、彼も仕事がある。
このままこの部屋で療養させてもいいが、明らかに病院治療が必要なのは見て取れる。
「まもり姉ちゃん」
「なあに?」
ふわりと笑みを浮かべ、ペットボトルを下ろしたまもりの顔は青白くやつれていたけれど、以前と同じ柔らかい表情で。
「体調が悪いみたいだし・・・病院へ」
行こう、と言う前に。
まもりの表情が失せて、まるで人形のような顔になる。
思わず言葉を失ったセナに、まもりはぎこちなく口を開いた。
「・・・保険証とか、お金とか・・・今、持ってなくて」
「それくらいなら僕が出すから」
「そ、それに・・・今、私、着替えとか、何もなくて」
あからさまに病院を避けようとするまもりに、セナは眉を寄せた。
着の身着のままで逃げ出してきたような彼女が今、そんなモノを持っているとは思えない。
実際まもりは手ぶらだったし、格好だって普通じゃない。
「そんな顔色で、食欲もないっていうのに、病院にも行かない状態にしておけないよ」
「いいの!」
まもりは首を振る。シーツを握るその手が、震えていた。
白く、骨張って、痛々しい程に弱った腕が。
さすがにセナもかっとなる。
「いいのって、そんな訳ないでしょ!? ちゃんと治療しないと―――」
「だって、見つかったら!」
滅多にない、セナの怒声にも怯まずに上げたまもりの声。
だが、その内容にセナはぴたりと止まる。
『見つかったら』
それは、誰が、誰に?
セナは携帯を握りしめる。あの不自然な姿のまもり、唐突なヒル魔からの電話。
では、彼らに繋がりがあるのか。
それも、高校の時とは全く違うような繋がり、が?
セナは目を見開いた。
ここまで来るのに、彼はタクシーを使った。
まもり一人くらいなら抱えて帰れる距離だったが、異様な雰囲気に人目につくのは不味いと判断してのことだが。
だが、彼の情報網ならセナとまもりが一緒のタクシーに乗ったことくらいすぐ知れる。
「・・・ヒル魔さんだね?」
「っ」
「昨日の夜、着信があったんだ。最近連絡がなかったのに、唐突で、真夜中だったし、・・・まもり姉ちゃんと関わりがあるのかと思ってたけど・・・」
まもりの顔色がみるみるうちに青ざめる。
確信したセナは自らの着替えをいくつか取り出した。
この際サイズがどうこう言っていられない。
<続>
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HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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