旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
まもりは手元の写真を物珍しいものを見るかのようにのぞき込んでいた。
「どうかしたのか」
「あ、ムサシくん」
まもりは顔を上げる。
朝の練習が始まるにはまだ間があり、少々乱雑になってきた部室内を掃除していたのだ。
そうして、その写真を見つけた。
「ヒル魔くんの写真が出てきて」
ムサシは耳に小指を突っ込んでそうか、と呟く。
「何か変な格好でもしてたか」
いつも変だけどな、という無言の補足をくみ取り、まもりは笑みを浮かべる。
「案の定、デビルバッツ絡みの写真だったわ」
ぴら、と見せられたそれには関東大会出場が決定したときの騒いでいる姿が映っている。
その傍らでやめさせようと慌てるまもりの姿も相変わらず。
けれどそれなら、あれほど見つめる意味は何かとムサシは視線で問う。
まもりは違わずそれを読み取った。
「よく考えたら、ヒル魔くんの普通の写真って見たことないなあって」
写真を撮られないわけじゃない。アメフトの試合中はもちろんのこと、学校行事の折に触れて撮られるスナップ写真にも存在している。
けれど、それは彼が『泥門デビルバッツを宣伝する存在』として写真に収まる時だけ。
普段の何気ない、それこそ気の抜けたような顔だとかくだらないことで騒いでいる一瞬だとか、は絶対にない。
「写真で見る人は、アメフト部以外のヒル魔くんを知らないんだなあって、そんな風に思ったの」
「面白い考え方をするんだな」
「そう?」
まもりは小首を傾げ、手元の写真を改めて見た。
でもそうかも、と一人で納得したように呟く。
「確かにアメフトの絡まないヒル魔くんなんて想像つかないわね」
生き生きとして楽しそうで、いつでも笑っていて。
けれどアメフトがなかったとしたら。
何よりも渇望するものがなくなったとしたら。
彼はどんな顔をして写真に写るのだろうか。
「ア? 随分早ェな、テメェら」
そこに噂の彼がやってきた。
「おはよう、ヒル魔くん」
にこやかに挨拶をするまもりは彼からの返事がないことにももはや気にせず、既に用意しておいたコーヒーを淹れるべく中へと入っていく。
ヒル魔は相変わらずの様子でパソコンを立ち上げる。
程なく漂ってくるコーヒーの香り。
「・・・何笑ってやがる、糞ジジィ」
「あ、いや」
ひっそりと笑っていたのは彼には筒抜けだったらしい。
訝しげな様子のヒル魔にムサシは口角を上げた。
「俺にはたやすく想像がつくな、と思ってな」
「ア?」
何寝ぼけたこと言ってやがる、と毒づく彼の手元に置かれるコーヒー。
それにためらいもなく口をつけるヒル魔の様子にますます笑いが深まる。
「ムサシくんも、はい」
「ああ、すまんな」
受け取ったコーヒーが文句なく美味いのはよく知っている。
ヒル魔が渇望するものを見失うことは、もうないだろう。
アメフトが切っ掛けだけれども、アメフトではなく。
そうして失えないほど大事なものがもう、彼にはある。
それはあのコーヒーだとか、無駄口をたたける環境だとか、何を言っても慕ってついてくる後輩たちだとか、目の前で笑うまもりだとか。
そうして、それらに囲まれた悪魔はやはり笑うのだろう、と。
***
アメフト絡んでない写真に写ったヒル魔さんって出てきてない、かな、と思って。
「どうかしたのか」
「あ、ムサシくん」
まもりは顔を上げる。
朝の練習が始まるにはまだ間があり、少々乱雑になってきた部室内を掃除していたのだ。
そうして、その写真を見つけた。
「ヒル魔くんの写真が出てきて」
ムサシは耳に小指を突っ込んでそうか、と呟く。
「何か変な格好でもしてたか」
いつも変だけどな、という無言の補足をくみ取り、まもりは笑みを浮かべる。
「案の定、デビルバッツ絡みの写真だったわ」
ぴら、と見せられたそれには関東大会出場が決定したときの騒いでいる姿が映っている。
その傍らでやめさせようと慌てるまもりの姿も相変わらず。
けれどそれなら、あれほど見つめる意味は何かとムサシは視線で問う。
まもりは違わずそれを読み取った。
「よく考えたら、ヒル魔くんの普通の写真って見たことないなあって」
写真を撮られないわけじゃない。アメフトの試合中はもちろんのこと、学校行事の折に触れて撮られるスナップ写真にも存在している。
けれど、それは彼が『泥門デビルバッツを宣伝する存在』として写真に収まる時だけ。
普段の何気ない、それこそ気の抜けたような顔だとかくだらないことで騒いでいる一瞬だとか、は絶対にない。
「写真で見る人は、アメフト部以外のヒル魔くんを知らないんだなあって、そんな風に思ったの」
「面白い考え方をするんだな」
「そう?」
まもりは小首を傾げ、手元の写真を改めて見た。
でもそうかも、と一人で納得したように呟く。
「確かにアメフトの絡まないヒル魔くんなんて想像つかないわね」
生き生きとして楽しそうで、いつでも笑っていて。
けれどアメフトがなかったとしたら。
何よりも渇望するものがなくなったとしたら。
彼はどんな顔をして写真に写るのだろうか。
「ア? 随分早ェな、テメェら」
そこに噂の彼がやってきた。
「おはよう、ヒル魔くん」
にこやかに挨拶をするまもりは彼からの返事がないことにももはや気にせず、既に用意しておいたコーヒーを淹れるべく中へと入っていく。
ヒル魔は相変わらずの様子でパソコンを立ち上げる。
程なく漂ってくるコーヒーの香り。
「・・・何笑ってやがる、糞ジジィ」
「あ、いや」
ひっそりと笑っていたのは彼には筒抜けだったらしい。
訝しげな様子のヒル魔にムサシは口角を上げた。
「俺にはたやすく想像がつくな、と思ってな」
「ア?」
何寝ぼけたこと言ってやがる、と毒づく彼の手元に置かれるコーヒー。
それにためらいもなく口をつけるヒル魔の様子にますます笑いが深まる。
「ムサシくんも、はい」
「ああ、すまんな」
受け取ったコーヒーが文句なく美味いのはよく知っている。
ヒル魔が渇望するものを見失うことは、もうないだろう。
アメフトが切っ掛けだけれども、アメフトではなく。
そうして失えないほど大事なものがもう、彼にはある。
それはあのコーヒーだとか、無駄口をたたける環境だとか、何を言っても慕ってついてくる後輩たちだとか、目の前で笑うまもりだとか。
そうして、それらに囲まれた悪魔はやはり笑うのだろう、と。
***
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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