旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
「!!」
途端に、まもりの背中しか見えなかったセナにもその項が真っ赤になるのが分かって動揺する。
「ななな、なに!? どうしたの、まもり姉ちゃ―――」
「テメェはこっちだ、糞チビ。さっさと練習行くぞ」
ぐい、と襟首を引かれ、セナは思わずもがく。
「だ、って! まもり姉ちゃんが・・・」
未だ背を向けているまもりを心配そうに見るセナの前で。
「ヒ・ル・魔・く・ん!!!」
軋んだ音がしそうなほど緩慢に、まもりが振り返った。
・・・きっと本人的には鬼のような形相のつもりなんだろう。
けれど間近で見たその顔は、鬼なんかじゃなくて。
顔どころか手も、丸い膝頭までがうっすらと赤く染まっていて。
青い目が潤んでいて。引き結んだ唇がわなわなと震えているが、それさえも。
「うわ」
思わず間抜けな声を上げてしまう。
途端、強引に襟首を引く手から力が抜ける。
そのままセナは勢い余って尻餅をついてしまう。
「糞チビ」
名を呼ばれ、見上げるとヒル魔と目があった。
表情はいつものように薄ら笑いを浮かべ、鋭利な牙を覗かせているが―――その眸が笑っていない。
瞬間、鼻先をかすめた匂い。
一気に血の気が失せる感覚。
「ヒィイイイイ!!」
セナは勢いよく立ち上がった。
「セナ、だいじょう・・・」
まもりが彼を庇おうとするが、セナは振り払うそぶりでその腕からすり抜け、一直線に校門に向かって逃げ出した。
残された格好のまもりは呆然と立ち尽くし、ヒル魔は声を上げて笑って。
「おら遅刻すんぞ」
にやにやと笑いながらヒル魔はまもりの眉間の皺をつついた。
まもりは嫌そうにそれを押しのけてヒル魔を見上げる。
「ヒル魔くん! セナをいじめないでよ! それとさっきの発言! セクハラです! 犯罪よ!」
「ちょっと息継げ糞赤犬マネージャー」
「誰が! 赤犬よ!」
「キャンキャン吠えて煩ェったらありゃしねぇ。外でも家でもベッドの中でもなァ」
「キャー!! またセクハラ-!!」
賑やかに残された二人が登校している一方。
大して長い距離でもないのに、息が切れた。
校門に駆け込み、部室へと続く道の途中、植えられた木に手をあててようやく止まった。
全速力で走ったからだろうか。恐怖に怯えた心臓がまだ落ち着かないからか。
早鐘を打つ心臓を握った拳で押さえ込み、セナは俯く。
喉が痛い。ひゅうひゅうと音を立てて呼気が通るのがよく分かる。
汗が滴った。
それは俯いたセナの顎からぽたりぽたりとしたたり落ちる。
いつまでもそれが止まらなくて、セナはたまらずその場にしゃがみ込んだ。
慕って追いかけたあの背中、繋いだ手、優しい笑顔。
そのどれもが当たり前に傍らに在り続けるのだと思っていた。
いつまでも変わりなく、このままで。
そんなのはあり得ないのだと。
もう、傍らに在るのは自分ではないのだと。
揃って同じように香る匂いが、切なくて苦しくて悲しくて羨ましくて。
思うさま泣いて、泣いて。
しばらくの間、セナは動けなかった。
けれど不思議と、見つかるかも知れないという恐怖はなかった。
おそらくヒル魔はセナの何もかもを見透かして、きっとこの場へは人を寄せ付けない。
そういう人だ。
妙な確信を抱きながら、セナはゆっくりと立ち上がった。
「・・・それでも、僕は」
一人ひっそりと呟く。
「諦める事なんて、出来ない」
泣き濡れて澄んだ眸には、か弱い少年ではなく雄としての決意が滲んでいる。
それはあの悪魔に教えられたことに他ならなくて。
乱暴に顔を拭って、セナは顔を叩き気合いを入れる。
戦いは、これからだ。
***
ヒルまもセナが唐突に降りてきました。格好良く強いセナが好き。鈴音ちゃんに会う前でも後でも。
途端に、まもりの背中しか見えなかったセナにもその項が真っ赤になるのが分かって動揺する。
「ななな、なに!? どうしたの、まもり姉ちゃ―――」
「テメェはこっちだ、糞チビ。さっさと練習行くぞ」
ぐい、と襟首を引かれ、セナは思わずもがく。
「だ、って! まもり姉ちゃんが・・・」
未だ背を向けているまもりを心配そうに見るセナの前で。
「ヒ・ル・魔・く・ん!!!」
軋んだ音がしそうなほど緩慢に、まもりが振り返った。
・・・きっと本人的には鬼のような形相のつもりなんだろう。
けれど間近で見たその顔は、鬼なんかじゃなくて。
顔どころか手も、丸い膝頭までがうっすらと赤く染まっていて。
青い目が潤んでいて。引き結んだ唇がわなわなと震えているが、それさえも。
「うわ」
思わず間抜けな声を上げてしまう。
途端、強引に襟首を引く手から力が抜ける。
そのままセナは勢い余って尻餅をついてしまう。
「糞チビ」
名を呼ばれ、見上げるとヒル魔と目があった。
表情はいつものように薄ら笑いを浮かべ、鋭利な牙を覗かせているが―――その眸が笑っていない。
瞬間、鼻先をかすめた匂い。
一気に血の気が失せる感覚。
「ヒィイイイイ!!」
セナは勢いよく立ち上がった。
「セナ、だいじょう・・・」
まもりが彼を庇おうとするが、セナは振り払うそぶりでその腕からすり抜け、一直線に校門に向かって逃げ出した。
残された格好のまもりは呆然と立ち尽くし、ヒル魔は声を上げて笑って。
「おら遅刻すんぞ」
にやにやと笑いながらヒル魔はまもりの眉間の皺をつついた。
まもりは嫌そうにそれを押しのけてヒル魔を見上げる。
「ヒル魔くん! セナをいじめないでよ! それとさっきの発言! セクハラです! 犯罪よ!」
「ちょっと息継げ糞赤犬マネージャー」
「誰が! 赤犬よ!」
「キャンキャン吠えて煩ェったらありゃしねぇ。外でも家でもベッドの中でもなァ」
「キャー!! またセクハラ-!!」
賑やかに残された二人が登校している一方。
大して長い距離でもないのに、息が切れた。
校門に駆け込み、部室へと続く道の途中、植えられた木に手をあててようやく止まった。
全速力で走ったからだろうか。恐怖に怯えた心臓がまだ落ち着かないからか。
早鐘を打つ心臓を握った拳で押さえ込み、セナは俯く。
喉が痛い。ひゅうひゅうと音を立てて呼気が通るのがよく分かる。
汗が滴った。
それは俯いたセナの顎からぽたりぽたりとしたたり落ちる。
いつまでもそれが止まらなくて、セナはたまらずその場にしゃがみ込んだ。
慕って追いかけたあの背中、繋いだ手、優しい笑顔。
そのどれもが当たり前に傍らに在り続けるのだと思っていた。
いつまでも変わりなく、このままで。
そんなのはあり得ないのだと。
もう、傍らに在るのは自分ではないのだと。
揃って同じように香る匂いが、切なくて苦しくて悲しくて羨ましくて。
思うさま泣いて、泣いて。
しばらくの間、セナは動けなかった。
けれど不思議と、見つかるかも知れないという恐怖はなかった。
おそらくヒル魔はセナの何もかもを見透かして、きっとこの場へは人を寄せ付けない。
そういう人だ。
妙な確信を抱きながら、セナはゆっくりと立ち上がった。
「・・・それでも、僕は」
一人ひっそりと呟く。
「諦める事なんて、出来ない」
泣き濡れて澄んだ眸には、か弱い少年ではなく雄としての決意が滲んでいる。
それはあの悪魔に教えられたことに他ならなくて。
乱暴に顔を拭って、セナは顔を叩き気合いを入れる。
戦いは、これからだ。
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ヒルまもセナが唐突に降りてきました。格好良く強いセナが好き。鈴音ちゃんに会う前でも後でも。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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