旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
ヒル魔の顔が盛大に引きつった。
「糞アホアホマネ! 俺の返事はテメェの頭のどこ行った!」
「照れない照れない。たまには家族に囲まれる感覚を味わった方がいいわよ」
言うなりまもりはさっさと携帯電話を手に家に連絡を入れている。ヒル魔はよっぽど止めさせようと立ち上がったが。
「あ、お母さん? そう、やっぱり帰れそうになくて」
「テメェ一人で帰ればいいだろうが。俺は行かねぇ」
背後で嫌みを言いながら電話を取り上げようとしたのだが。
「え、お父さんはもう出てるの? あ、うん。そうそう。・・・さすがお父さん。お見通しね」
「・・・さすが?」
ヒル魔は思わずきびすを返し、まもりの父たる人物のデータを引き出してみた。
一応脳内にデータはあるのだが、改めて写真を見たくなったのだ。
ヒル魔の持つ彼の写真はパイロットの制服姿だった。
がっしりとした体躯なのかと何となく思っていたが、意外と細身だ。
そうして、細い目と引き結ばれつつも上がった口角、順調に年齢を重ねたような顔の皺に壮年の男性であることを再確認。
白髪交じりの髪を後ろに撫でつけ、背筋をしゃんとして立っている。
「あ、お父さんの写真!」
いつの間にか電話を終わらせていたまもりがヒル魔の手元を覗き込んだ。
「ヒル魔くん、ウチのお父さんの写真まで持ってたの」
入手経路については言わないぞ、と口を開く前にまもりがにまりと笑った。
あまり見られない。何かを企むような猫の笑み。
―――チェシャ猫のようなそれに、ヒル魔の中の何かが警戒音を鳴らした。
「なんだその面」
「ふふ。教えない」
鼻歌交じりでエプロンを外し、荷物を片付けてきっちりとビニールで包むのを見つめていると、その手がヒル魔のパソコンに伸びた。
「ッテメ! 俺は行かねぇっつってんだろ!」
「え? だってもうヒル魔くんの分も全部用意してあるって」
「ア?!」
用意する、ではなく、してある?
「お父さんがね、きっとヒル魔くんも来るだろうからって」
瞠目したヒル魔ににっこりと笑いかけると、まもりはさっさと彼の荷物も全てまとめ、ビニールで包んでしまった。
それが終わるのを見計らったように殴るように吹き付けている風の音とは全く違う音がドアから響いた。
ドアをノックする音。
まもりは全てを理解したような顔でヒル魔の手を引いた。
「離せ!」
「あん、もう! 照れなくても平気よ」
「だ・れ・が! 照れるか!」
ぶん、と振り払われた手を恨めしげに見上げたまもりは、それでもドアの方に荷物を持って向かう。
「ほら、ヒル魔くんも早く」
引き戸が開かれた。
レインコートに身を包み、ヒル魔とそう変わらない背の男がその場に立っている。
表情はほとんど見えなかった。
「お父さん!」
はしゃいだようなまもりの声に、男は低く囁いた。
「まもり。彼の荷物はどこだい?」
「あそこの・・・」
言うが早いか、ヒル魔が自らの荷物を掴む前に、まもりの父がその荷物を掴んでしまった。
思わず舌打ちを漏らしたが、レインコートの隙間から覗く口角は写真の通り上がっていて、不機嫌さはみじんもない。
「さあ、表に車を止めてある。早く来なさい」
低く、よく通る声。
人に命令し慣れている男の声だ。嫌そうに眉を寄せたヒル魔を再びまもりが引く。
<続>
「糞アホアホマネ! 俺の返事はテメェの頭のどこ行った!」
「照れない照れない。たまには家族に囲まれる感覚を味わった方がいいわよ」
言うなりまもりはさっさと携帯電話を手に家に連絡を入れている。ヒル魔はよっぽど止めさせようと立ち上がったが。
「あ、お母さん? そう、やっぱり帰れそうになくて」
「テメェ一人で帰ればいいだろうが。俺は行かねぇ」
背後で嫌みを言いながら電話を取り上げようとしたのだが。
「え、お父さんはもう出てるの? あ、うん。そうそう。・・・さすがお父さん。お見通しね」
「・・・さすが?」
ヒル魔は思わずきびすを返し、まもりの父たる人物のデータを引き出してみた。
一応脳内にデータはあるのだが、改めて写真を見たくなったのだ。
ヒル魔の持つ彼の写真はパイロットの制服姿だった。
がっしりとした体躯なのかと何となく思っていたが、意外と細身だ。
そうして、細い目と引き結ばれつつも上がった口角、順調に年齢を重ねたような顔の皺に壮年の男性であることを再確認。
白髪交じりの髪を後ろに撫でつけ、背筋をしゃんとして立っている。
「あ、お父さんの写真!」
いつの間にか電話を終わらせていたまもりがヒル魔の手元を覗き込んだ。
「ヒル魔くん、ウチのお父さんの写真まで持ってたの」
入手経路については言わないぞ、と口を開く前にまもりがにまりと笑った。
あまり見られない。何かを企むような猫の笑み。
―――チェシャ猫のようなそれに、ヒル魔の中の何かが警戒音を鳴らした。
「なんだその面」
「ふふ。教えない」
鼻歌交じりでエプロンを外し、荷物を片付けてきっちりとビニールで包むのを見つめていると、その手がヒル魔のパソコンに伸びた。
「ッテメ! 俺は行かねぇっつってんだろ!」
「え? だってもうヒル魔くんの分も全部用意してあるって」
「ア?!」
用意する、ではなく、してある?
「お父さんがね、きっとヒル魔くんも来るだろうからって」
瞠目したヒル魔ににっこりと笑いかけると、まもりはさっさと彼の荷物も全てまとめ、ビニールで包んでしまった。
それが終わるのを見計らったように殴るように吹き付けている風の音とは全く違う音がドアから響いた。
ドアをノックする音。
まもりは全てを理解したような顔でヒル魔の手を引いた。
「離せ!」
「あん、もう! 照れなくても平気よ」
「だ・れ・が! 照れるか!」
ぶん、と振り払われた手を恨めしげに見上げたまもりは、それでもドアの方に荷物を持って向かう。
「ほら、ヒル魔くんも早く」
引き戸が開かれた。
レインコートに身を包み、ヒル魔とそう変わらない背の男がその場に立っている。
表情はほとんど見えなかった。
「お父さん!」
はしゃいだようなまもりの声に、男は低く囁いた。
「まもり。彼の荷物はどこだい?」
「あそこの・・・」
言うが早いか、ヒル魔が自らの荷物を掴む前に、まもりの父がその荷物を掴んでしまった。
思わず舌打ちを漏らしたが、レインコートの隙間から覗く口角は写真の通り上がっていて、不機嫌さはみじんもない。
「さあ、表に車を止めてある。早く来なさい」
低く、よく通る声。
人に命令し慣れている男の声だ。嫌そうに眉を寄せたヒル魔を再びまもりが引く。
<続>
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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