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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ストーミー・ナイト(5)



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戻ってきたまもりの母がコーヒーを持って来てくれる。
礼を言って受け取ると、まもりの父の隣にまもりの母が腰を下ろした。
「まもりがいつもお世話になっているそうだね」
「いえ、部活で色々と面倒を見てもらっているのは俺たちの方です。男ばかりで気が回らないので、マネージャーの存在は大変ありがたいです」
「普段は一人暮らしだってまもりから聞いてるわ。この天気で外にも出られない分、腕によりを掛けてお夕飯作ったから思う存分食べてね」
にこにこと笑うまもりの母に含みはない。
まもりは彼女によく似ている。
本来娘は男親によく似ると言うが、彼女に関しては逆だったのだろう。
「ありがとうございます」
「さっき着替えた和室が客間なんだ。一応そこで寝てもらおうと思ったんだが」
一端そこで思わせぶりに言葉を切って、夫婦はちらりと視線を交わす。
まもりの父が楽しげに口を開く。
「何ならまもりの部屋で布団を並べようか?」
にまり、という笑み。
あのまもりが見せた、チェシャ猫のようなそれにヒル魔は殊更にっこりと笑って見せた。
「それは大変魅力的な申し出ですが、客人としての分は弁えてますから」
「別に良いのに」
空恐ろしいことを呟くまもりの母の言葉を流して、ヒル魔はコーヒーを煽る。
まもりが淹れるのと遜色ない、いい味だった。
その時タイミングを計ったかのようにまもりが顔を覗かせた。
「ヒル魔くん、お待たせ!」
大慌てで出てきたのだろう、湯上がりで頬を染め、パジャマの上にもこもこした上着を羽織っている。毛足の長いスリッパは彼女専用なのだろう。
見るからに甘い甘い格好をしたまもりから香るシャンプーの匂い。
ちらりと視界に入れただけで力が抜けそうだ。
「・・・おー」
応じて立ち上がると、まもりが近寄ってきた。見上げる視線は湯上がりで僅かに潤んでいる。
「お風呂の説明するから」
「別にいらねぇよ」
そう言って突き放そうとするのだが、まもりはヒル魔の手を掴んでしまう。
咄嗟に振り払おうとして、彼女の両親の前だから乱暴にも出来ないと渋い顔になる。
けれど彼女は頓着せずぐいぐいとヒル魔を引くのだ。
まるで散歩に向かう犬のように、喜び勇んで。
アホか、と言いたいのをぐっと堪えてヒル魔はまもりの後に続く。
背後の二人の視線が笑みを含んだ生ぬるいモノだと見なくてもよく分かった。
きっとあのチェシャ猫のように笑っているに違いない。

元々あまり湯船につかる習慣のないヒル魔は早々に湯から上がった。
軽く頭を振れば、緩く降りていた髪は再び勢いよく天を突く。
元から剛毛なので下ろす方が手間なのだ。手櫛で髪を整えながらあのまもりの両親のことを考える。
そもそもあまり心証の良い外見ではないはずだし、素行についてもまもりの口からでは三割増しで悪く言われているだろうに、あの余裕。
一体なんなんだ、と腹立たしい気持ちになる。
彼自身には両親はいるにはいるが、『普通』という概念から遠く隔たった人種のため、『普通』の家庭がどんな感じかがいまいちどころか全くよく分からない。
これが普通なのか。いや、それにしてはあの男―――まもりの父親。
彼は何かに似ていてとても嫌な感じがするのだ。一体何かは分からない。
他人の分析など容易いヒル魔にとっては、こんなことは初めてだ。

<続>
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