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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ストーミー・ナイト(3)



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「ほら、行くわよ。濡れてもうちの車の中は大丈夫だから」
行きたくない、とヒル魔は切実に思った。
まもりの父から漂う気配が危険なのだと。先ほどの彼女の表情を見たときと同じく警戒音が鳴る。
「君の荷物がどうなってもいいのかね?」
笑みを含んだその声は人の神経を逆なでする。それすらも計算のようだ。
煽られる体質ではないが、荷物を取られていては確かに困る。
パソコンには常人では解けないようなパスワードも設定してあるが、なんなくそれさえも解かれてしまいそうな、そんな嫌な予感がまといついている。
「・・・チッ」
渋々、ヒル魔は足を前に踏み出す。まもりの父はきびすを返して先に車へと戻ったようだ。
まもりがにっこりと笑って手にしていた傘を開こうとする。
ヒル魔はそれを見て、手で彼女がそれを開くのを止めさせた。
「え」
「この風雨の中でそんな糞貧弱な傘じゃすぐ骨折れんぞ」
ヒル魔は自らの傘を取り出す。まもりのよりは大きく、骨の数も多い。
それを貸してくれるのか、と手を伸ばしたまもりを強引に抱き寄せて抱え上げた。
「ええ?!」
「テメェには鍵閉めと車のドア開けの仕事を申しつける」
自らの荷物をしっかりと抱きしめる格好でまもりはヒル魔を見上げる。
その頬が赤い。
さてこの格好で車に向かえば、あの癖の強そうなまもりの父親はどんな顔をするのだろうか。
どこか勝負前に似たような気分でヒル魔は口角を上げた。

まもりはヒル魔に抱えられるようにして車に向かいながら内心感謝した。
ああ、確かにこの風雨の中じゃ私の身体は傘ごと持って行かれて無様に転んだことでしょう、と素直に思えるくらいの勢いだったから。
そうしてヒル魔の腕の確かさに、細く見えても男の子なんだなぁ、としみじみ考えてしまった。
結局傘の意味はあまりなさない状態で車に転がり込む。彼女の父の趣味であるハマーはこんな強風でも揺らぎはしない。
「そこにタオルがあるだろう。よく拭いておきなさい」
「はーい」
既に運転席についていたまもりの父に向かって、ヒル魔は口を開く。
「申し訳ありませんが、駅前で下ろしていただけないでしょうか」
「敬語! 使えるんだ!!」
叫ぶまもりを無視してバックミラー越しに視線を合わせる。
見る人を恐怖に陥れる外見も、彼には影響しないようだ。
「残念ながらうちの家内は君が来るのを心待ちにしていてね。男の子の来客なんて滅多にないから、張り切って腕によりを掛けてごちそうを作っていたよ」
くすくすと笑いながら彼は滑らかにハンドルを切った。
狭い日本でこんな大きな車を好むくらいだ、運転に自信があるのだろうと踏んだとおり、彼の運転はこんな悪天候でも揺らぎない。
まもりはすっかりくつろいでいるが、雨で濡れたシャツが気持ち悪いのか襟元のリボンを外してボタンを開けている。
思わずヒル魔は頭からバスタオルを被せた。
「!? 何、ヒル魔くん」
「いいからそれかぶってろ」
何よ、と唇を尖らせるまもりにヒル魔の舌打ち。
「まもり、いいからヒル魔くんの言うとおりにしなさい」
そうして、楽しげなまもりの父の笑い声が響く。
「突然お邪魔したらご迷惑ですから、今日のところはご遠慮させて下さい」
「いやいや。あれだけの料理が並んでいたら私たちだけじゃ消化しきれないよ。遠慮なんて必要ないさ」
ヒル魔の片眉が上がる。
どうにかして逃げたいが、この男相手では分が悪い。
何のしがらみもない状態だったら全力でぶつかって倒せばいいので問題ないのだが。
「もうここまで来てるんだもの、いいじゃない。ゆっくりしていこうよ」
くい、とヒル魔のシャツを引くまもり。
彼女の父親ともあれば、一応部活のこともあるから強気には出られない。
虚栄心に満ちた相手だったり、小市民だったりなら簡単に対処できるのだが、この男はどうも苦手だと感じた。

<続>
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