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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ストーミー・ナイト(6)



+ + + + + + + + + +
先ほど借りたスウェットの上下を身に纏い、深呼吸をして扉を開く。
なんだか妙に精神力が必要になっていた。
「うわ、随分早いのね!」
「ホントねえ。もっとゆっくりしててもよかったのに」
まもりとまもりの母が口々に言うが、その割に食卓の上は準備万端といったところだ。
「いつもこんな感じなんです。何か手伝いましょうか」
「いいのよ、お客様は手伝いなんて!」
「そうそう。大体ヒル魔くんが手を出したらお父さんと一緒できっとメチャクチャになっちゃうわ」
くすくすと女性陣が笑うのを、ソファに移動させられたらしいまもりの父が笑って聞いている。
他に行き場もなく立ち尽くす彼を、まもりの父が手招いた。
「私はあまり家事が得意ではなくてね。手を出すと大概家内や娘に怒られてしまうんだ」
ヒル魔は彼の目を見てからおもむろに口を開く。
「私はそうは思いませんがね。きっとあなたはなんでも出来るんじゃないですか?」
「ほう? 何でそう思うんだい?」
「別に。ただの、勘です」
まもりの父が重ねて問おうとしたとき、丁度食事の準備が整ったとまもりの母が呼ぶ。
「ああそうだ、ヒル魔くん。君は、チェスは出来るかい?」
「ええ」
頷くと彼は楽しそうに笑う。
「私も好きなんだが、あまり家族では相手にされなくてね。後で1局付き合ってくれないか?」
「俺で良かったら喜んで」
やあそれは楽しみだ、と。
ヒル魔の背中を軽く叩いて、まもりの父は彼を食卓へと誘った。


これでもか、というくらい大量に作られた料理だったが、ヒル魔が見た目以上に食べるため結構消費された。
おかげでまもりの母は大喜びだ。
「やっぱり男の子はいいわね! 沢山食べてくれて気持ちよかったわ」
せめてこれくらいは、と食器を下げるのを手伝いながらヒル魔は笑う。
「久しぶりに家庭の味を堪能しました」
まもりが食器を同じく下げてシンクに下ろしたのを横目で確認してから続きを口にする。
「まもりさんが随分熱心に勧めてくれたんです」
「!!」
びっくりした、と言わんばかりに目を丸くしたまもりの顔を見て、まもりの母が吹き出す。
「凄い顔しちゃって! どうしたの、まもり」
「だって! ヒル魔くんが私の名前! 呼ぶなんて!」
明日は大嵐よ、と騒ぐまもりに今も大嵐よ、なんて突っ込むまもりの母の声。
ああなんだか本当にいたたまれない、と内心ぼやきながらヒル魔はリビングに戻る。
そこではいそいそとチェスボードを用意するまもりの父がいた。
「お母さん、コーヒーをおくれ」
「わかったわ。ヒル魔くんも飲むでしょう?」
「はい。お願いします」
チェスボードを挟んで向かい合わせに座り、駒を並べる二人を見ながらまもりは母親に話掛ける。
「普段からああだったら全然問題ないのに」
「あなたの親の前だからってちゃんとしてるのよ。いい子ね、ヒル魔くん」
母親は唇を尖らせるまもりに笑う。
「ヒル魔くんに! いい子! ありえない表現!」
「随分片言っぽく言うわねえ。そんなにあり得ないの?」
「だって、普段から口は悪いし見た目にあんなだし」
「そうねえ、まもりが随分悪く言ってたからどうかと思ったけど―――」
コーヒーが落ちたのを確認して、まもりが用意したカップに注ぎ入れる。
どちらもブラックで飲むので砂糖もミルクもスプーンもなしだ。
「お父さんがまもりの持って来てた写真見て言うのよ。そんなに悪い子じゃないよって」
「ええー?!」
声を上げて、思わず口をふさぎ、リビングの二人に悪いと視線を向ける。けれど二人とも至って真剣にゲームに興じていた。
カチ、カチ、という駒を移動させる音が時折響く他は静かだ。
「・・・熱中してるわね」
本来なら来客用のカップを用意すべきだが、チェスに熱中していてぶつかってはまずい。
厚手のマグカップにして正解だと思えた。とりあえず、軽くぶつかった程度では揺らがない。

<続>
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