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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ユグドラシル(1)

(ヒルまも)


+ + + + + + + + + +
いつだったか、誰だったか。
覚えていないのだから、きっと他愛ない会話の接ぎ穂で呟かれた言葉なのだろうと思う。
それくらい何気ない一瞬に聞こえた言葉。

「まもりって重いわよね」

けれどその言葉は、きっと呟いた当人の想像よりもずっとずっと深く。
まもりの心にざくりと突き刺さった。


クリスマスボウルを終えてから、ヒル魔がふいと姿を消した。
彼がどこにいるか、何をしているのか、誰も知らない。
彼を慕う部員たちも、彼の親友二人も、彼の右腕たる姉崎まもりも。
「まあ、ヒル魔のことだ。どっかで何かやってんだろう」
「そうだね。そのうちひょっこり帰って来るよ」
彼が黙って姿を消すことなど昔はしょっちゅうだった、とムサシと栗田は顔を合わせてそう言う。
それにつられて、部員たちもそれぞれ顔を見合わせながら渋々といった体で頷いた。
「しょっちゅう、だったんですか?」
「ああ。元々あいつは神出鬼没で足音もしなけりゃ気配も薄いからな」
「見た目が怖いし言うことも乱暴だけどね」
誰よりも彼の身近にいた二人がそう言うのだから、きっと大丈夫だろう。
そう判断した部員たちが視線を向けたのは、我らがマネージャー、姉崎まもり。
「まもりさんは何か聞いてないッスか?」
モン太が尋ねるが。
「ううん。ごめんね、何も聞いてないわ」
残念そうに首を振るまもりに、十文字が肩をすくめる。
「ハァ、マネージャーには言いそうなのにな」
その時。
ほんの少し、まもりの眉が撓った。
けれど、誰も気づくことはなかった。


いつものように学校に行って、部活をやって、帰宅する。
まもりは室内着に着替え、ほうとため息をついた。
それでもここしばらくのクリスマスボウルへ向かっての練習よりはずっと楽だった。
部員もそうだが、マネージャーであるまもりにとっても。
練習に付き合ってくれる関東オールスターメンバーへの気配りや不足する備品の補充に追われて、加えて更に暗号や作戦を覚えたり考えたり。
本当にめまぐるしい日々だったのに、まるで夢だったかのように全てが元に戻った。
追い立てられるような焦燥感がなくなっても、忙しなさに慣れた身体はこれでは物足りないとぼやいているのだから、よくよく世話焼き体質に生まれついているのだろう。
部員たちも実は物足りないようで、部活終了後、各自部室で頭を付き合わせて練習メニューを見直していたのを微笑ましく思い出す。
その合間にヒル魔がいないことを残念に思う。
同時に気づくのだ。もう、彼がいなくても部員たちの誰もが練習を投げ出すこともないし、長く掲げていた目標を達した後だというのに驕り高ぶって手を抜くこともしない。
彼がいなくても、何の遜色もない現状に愕然とする。
そうして、ふと考える。
ヒル魔はいま暫定的にいないだけだと皆口々に言っているけど、そう遠くない先に彼は引退する。同時に、まもりも。
三年生は秋大会に出られないから。
目標を達した今、彼が学校側に無理を言って更にもう一年部活に参加するような真似はしないだろう。
そうして、その後は?
まもりは教育学部に進むつもりだった。それはもう、いつだったか覚えていないほど昔から考えていたこと。
彼女は学校の先生か、保育士になるつもりだ。
けれどヒル魔の進路は判然としない。
アメリカに渡ってプロのアメフト選手になりたいのだろうと思うが、彼の身体能力ではそれも難しいはずだ。
けれどヒル魔のことだ、諦めるだろうか? どうにかして自らをねじ込もうとするのではないか?
疑問はいくつも重なっていくが、結局のところ行き着くのは。
当たり前のように待ち構える、ヒル魔との別れ。
「・・・っ」
不意にわき上がってきた気持ちに、まもりは喉を詰まらせる。
咄嗟に口を覆った。
―――これは、言ってはいけない言葉だ。

<続>
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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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