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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ストーミー・ナイト(1)

(ヒル魔とまもりと+α)
※ワールドカップユース終了後の時間軸。


+ + + + + + + + + +
ごうごうと凄まじい音を立てて風が吹いている。
雨が殴りつけるように部室の壁と言わず窓と言わず降り注いでいる。
激しい春の嵐だった。暦の上でだけの春で、気配はまだ冬が強い。
そんな寒い中で、部室は海に浮かぶ島のよう。
部室の窓から外をうかがっていたまもりは嘆息しつつ口を開いた。
「・・・判断を誤ったわね。蛭魔妖一とも在ろう人が」
「俺は誤ってねぇ。誤ったっつーんならテメェの方だ、糞マネ」
ヒル魔は忌々しそうに舌打ちして隣のまもりに視線一つ向けずに言葉を紡ぐ。
「今日は朝からこの天気で部活は休み、俺は部活があるときにはできねぇ作業をするつもりで最初から来てた」
カタカタと軽快なタイピング音。机の上に散らばるいくつもの資料。
明日は学校が休みで、これだけのグラウンド状態ならたとえ晴れても部活が出来ない。
結局各自で出来る筋トレメニューを渡して早々に解散させたのは日中のこと。
今はもう夜と呼べる時間帯となっていた。
「俺が部室で一晩夜明かしする程度なら何の問題もねぇ」
まもりは先ほどその資料を一枚見てみたが、数字と英語の羅列はまもりの意識の範疇外だ。
「テメェがさっさと帰れ、っつってんのに帰らなかったのが悪ィんだろ」
「だって。雨だったから」
まもりは少々むくれてやはり山積みになっているファイルを見る。
「せっかく時間があるなら、ここのところ未整理で山積みになった資料をまとめたかったのよ」
対戦が終わったチームのデータは、学校ごとに来年度も残る生徒と去る生徒とで分けて仕分けし直す。
そうして不要になったデータは捨てなければならない。これが結構な手間なのだ。
今回対戦しなかったチームのデータも全て捨てられるわけではない。来年はどこが上がってくるのか分からないのだ。
その時に一から集めるのと、去年のが残っているのとでは雲泥の差。ましてや来年度はヒル魔もまもりも秋大会にいないのだ。
選手としてもそうだが、情報収集・処理能力が高い二人が抜けた後は大変だろうとうぬぼれではなくまもりは思う。
だから手が空いた時間に溜め込むことなく処理をしてしまいたかったのだ。
「大体ベッドがあるにしても、ヒル魔くん一人で部室に泊まるのはどうかと思うわ」
いつの間にか部室に紛れ込んでいた、折りたたみ式の簡易ベッド。
どういう意味があって置いてあるのだろうかと思っていたが、このためだったのかとまもりは肩をすくめる。
そうして未だ止まない雨と風にどうにかいい対処法はないだろうか、と考えて。
「あ、そうだ。私の家に来る?」
「アァ?!」
ヒル魔がやっと顔を上げてまもりの方を見た。
「テメェの家は俺より遠いだろうが」
「うん。でもこの雨なら歩きじゃ帰れないし、今日はたまたま父がいるから車を出して貰えるの」
まもりの父はパイロット。彼は一年の半分以上を海外の上空で過ごす多忙な人物だ。
にっこりとまもりは慈愛の笑みを浮かべる。
「ヒル魔くんはホテル暮らしで家に戻ってもご飯はコンビニ弁当かルームサービスなんでしょ? それだったらウチで食べてついでに泊まっていけばいいじゃない」
ヒル魔の顔が盛大に引きつった。
「誰が行くか」
「なんで? ウチの母は料理教室をやってるくらいだからご飯美味しいし、ちゃんとお客様用の布団もあるし、お風呂にもゆっくり入れるわよ」
ねえ、と誘う声音にも、ヒル魔は眉間に皺を寄せて頑として首を振る。
「たまには家庭の味を味わうのもいいでしょ? ねえ」
「一家団欒をお邪魔するほど無粋ではゴザイマセン」
ヒル魔が唸るようにして断るのに、まもりは純粋に不思議そうに尋ねた。
「ヒル魔くんは一人よね。ご家族は?」
「シラネ」
言い捨てるようなその響きに、いるのかいないのかはともかく、両親という響きにあまりいい印象を持っていないのではないか、とまもりは考えた。
それならばそんな誤解を解かなければならない、と。
妙に使命感に満ちたまなざしでまもりはヒル魔を見つめる。
「じゃあ何が何でもウチに来てもらわなきゃ!」

<続>
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