旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
「次はパスで来ます。WRはあそこの72番、右に投げるフリをしますがフェイントです」
パソコンを膝に載せ、防御のラインに指示を出すジャージ姿の黒髪の少年。
黒縁の伊達眼鏡を掛けた彼は、蛭魔護。
相手の傾向を読み、攻守交代の場面から三手先まで見通す凄腕の主務だ。
「しっかり囲めよ、しくじったらブッ殺す!」
髪を逆立ててはいないが、金髪は相変わらずの蛭魔妖一、通称悪魔コーチ。
この二人のコンビの洞察力とゲームの組立方は常人の域を軽く超えている。
「は、はいっ!」
ヒル魔の声にこくこくと頷く面々は、気を引き締めこそするが萎縮はしない。
この夏、地獄のような特訓をくぐり抜けた精鋭たちは初戦如きでやられるほど柔ではない。
走っていく守備の部員達と入れ替わりで美佳が帰ってくる。
「いい流れだよ。このまま一気にいただこうね」
護の労る言葉に、美佳は小首を傾げる。
「ん。護は出ないの?」
「僕はJOKERだから」
にっこりと笑う護に、隣に立つヒル魔は眉間に皺を寄せつつ口を閉ざし、他に用事を思い出したのかその場を離れた。
「まあ切り札だもんねえ」
美佳は肩をすくめ、マネージャーが差し出してくれたドリンクを口に含む。
「この試合の勝率は?」
「99%」
それに美佳はにっと口角を上げる。
「じゃあ1%は負けるんだね。気をつけないと」
「その通り」
良くできました、と済ました笑顔で眼鏡の縁を指先で押す姿は有能な主務そのものだ。
スタメンで美佳は入れたが、護は外れた。その代わり、補欠兼主務としてベンチを温めている。
それを数名の部員達でヒル魔に抗議したら、隠し玉は大きい方がいいんだ、と護本人が苦笑して取りなした。
かつて自らがプレーヤーだった頃、雪光という大きな隠し玉を使って強豪を撃破したのは有名な話だ。
それほどの期待を寄せているのなら、と思ったのだけれど。
実は、護自らの采配であるのだと美佳はもう知っている。
夏の特訓は常識外れの厳しさで、いくら悪魔の息子であってもその仮面をかぶり続けるのは難しかったのだ。
とはいえ、気づいているのは今のところ美佳だけだと思われる。
柔らかに微笑んで、虫も殺さないようなおとなしい外見と普段の行動は地味そのもの。
「なあ、護」
「なに?」
けれど、その笑顔がくせ者で、その内面が空恐ろしいのだ。
「あいつら、どう思う?」
二回目の攻撃もあっさり防御され、真っ赤になって怒る相手チームのキャプテンを見つめて訪ねれば。
ちらりと美佳を見上げ、他に声の届きそうな面子がいないことをさりげなく探ってから護は口を開く。
「蚊」
「虫かよ」
「それも秋の」
ほら、あれって物凄く煩いじゃない? 死にかけでフラフラしてるのに、とくすくすと笑う護の眸は恐ろしいくらい冷たい。
伊達眼鏡はその絶対零度の視線を抑えるためのもの。
野暮ったく伸ばされた前髪はその助け。
地味な外見によらず、女遊びは果てしなくだらしない。・・・らしい。
笑みを浮かべたまま、早く死ねばいいのに、と動いた唇。
「・・・おお怖」
その声はひんやりとした心地で響き、美佳は背筋を震わせた。
「護が出るような試合、俺は出たくないなあ」
きっと美佳や他のメンバーが想像も付かないような、恐ろしい手を使って戦うだろう。
ヒル魔でさえやらなかった、試合中の『脅迫』が出たらどうしよう。
「大丈夫だよ、『脅迫』なんて敵にするわけないじゃない」
にっこりと笑って、敵に、と言った護の顔に美佳はあっそう、と軽く応じながらずぞ、と音を立ててドリンクを飲み干した。
敵に、ってことは味方にはやるんだな、脅迫。それも女絡みの。
ちゃんと言葉の裏を読み取り、美佳は味方のメンバーの事を眺める。
彼女だったり、女友達だったり、姉妹だったり。
そんな関係で大切にしている人がいるメンバーは気の毒なことだな、と。
ヒル魔のおじさんも気苦労してるんだろうな、と。
色々気づいていても、美佳は余計な口出しをしなかった。
だって美佳にも大事な妹がいるのだ。まだ可愛い盛りの妹をこんな魔物に穢されたくない。
この秋、泥門デビルバッツはかつて誰もが想像もし得なかった相手の裏を読みまくる戦法を多用し。
悪魔の司令塔の再来だ、いや、アレは最早魔王の司令塔だ、という恐怖のざわめきを欲しいままにしたのだった。
***
こないだ寝入りばなに耳元で蚊に飛ばれて浮かんだ殺意を護に代弁してもらいました。
護の真っ黒な腹はとうとう美佳に知られたようです。
真っ黒護楽しい!!
パソコンを膝に載せ、防御のラインに指示を出すジャージ姿の黒髪の少年。
黒縁の伊達眼鏡を掛けた彼は、蛭魔護。
相手の傾向を読み、攻守交代の場面から三手先まで見通す凄腕の主務だ。
「しっかり囲めよ、しくじったらブッ殺す!」
髪を逆立ててはいないが、金髪は相変わらずの蛭魔妖一、通称悪魔コーチ。
この二人のコンビの洞察力とゲームの組立方は常人の域を軽く超えている。
「は、はいっ!」
ヒル魔の声にこくこくと頷く面々は、気を引き締めこそするが萎縮はしない。
この夏、地獄のような特訓をくぐり抜けた精鋭たちは初戦如きでやられるほど柔ではない。
走っていく守備の部員達と入れ替わりで美佳が帰ってくる。
「いい流れだよ。このまま一気にいただこうね」
護の労る言葉に、美佳は小首を傾げる。
「ん。護は出ないの?」
「僕はJOKERだから」
にっこりと笑う護に、隣に立つヒル魔は眉間に皺を寄せつつ口を閉ざし、他に用事を思い出したのかその場を離れた。
「まあ切り札だもんねえ」
美佳は肩をすくめ、マネージャーが差し出してくれたドリンクを口に含む。
「この試合の勝率は?」
「99%」
それに美佳はにっと口角を上げる。
「じゃあ1%は負けるんだね。気をつけないと」
「その通り」
良くできました、と済ました笑顔で眼鏡の縁を指先で押す姿は有能な主務そのものだ。
スタメンで美佳は入れたが、護は外れた。その代わり、補欠兼主務としてベンチを温めている。
それを数名の部員達でヒル魔に抗議したら、隠し玉は大きい方がいいんだ、と護本人が苦笑して取りなした。
かつて自らがプレーヤーだった頃、雪光という大きな隠し玉を使って強豪を撃破したのは有名な話だ。
それほどの期待を寄せているのなら、と思ったのだけれど。
実は、護自らの采配であるのだと美佳はもう知っている。
夏の特訓は常識外れの厳しさで、いくら悪魔の息子であってもその仮面をかぶり続けるのは難しかったのだ。
とはいえ、気づいているのは今のところ美佳だけだと思われる。
柔らかに微笑んで、虫も殺さないようなおとなしい外見と普段の行動は地味そのもの。
「なあ、護」
「なに?」
けれど、その笑顔がくせ者で、その内面が空恐ろしいのだ。
「あいつら、どう思う?」
二回目の攻撃もあっさり防御され、真っ赤になって怒る相手チームのキャプテンを見つめて訪ねれば。
ちらりと美佳を見上げ、他に声の届きそうな面子がいないことをさりげなく探ってから護は口を開く。
「蚊」
「虫かよ」
「それも秋の」
ほら、あれって物凄く煩いじゃない? 死にかけでフラフラしてるのに、とくすくすと笑う護の眸は恐ろしいくらい冷たい。
伊達眼鏡はその絶対零度の視線を抑えるためのもの。
野暮ったく伸ばされた前髪はその助け。
地味な外見によらず、女遊びは果てしなくだらしない。・・・らしい。
笑みを浮かべたまま、早く死ねばいいのに、と動いた唇。
「・・・おお怖」
その声はひんやりとした心地で響き、美佳は背筋を震わせた。
「護が出るような試合、俺は出たくないなあ」
きっと美佳や他のメンバーが想像も付かないような、恐ろしい手を使って戦うだろう。
ヒル魔でさえやらなかった、試合中の『脅迫』が出たらどうしよう。
「大丈夫だよ、『脅迫』なんて敵にするわけないじゃない」
にっこりと笑って、敵に、と言った護の顔に美佳はあっそう、と軽く応じながらずぞ、と音を立ててドリンクを飲み干した。
敵に、ってことは味方にはやるんだな、脅迫。それも女絡みの。
ちゃんと言葉の裏を読み取り、美佳は味方のメンバーの事を眺める。
彼女だったり、女友達だったり、姉妹だったり。
そんな関係で大切にしている人がいるメンバーは気の毒なことだな、と。
ヒル魔のおじさんも気苦労してるんだろうな、と。
色々気づいていても、美佳は余計な口出しをしなかった。
だって美佳にも大事な妹がいるのだ。まだ可愛い盛りの妹をこんな魔物に穢されたくない。
この秋、泥門デビルバッツはかつて誰もが想像もし得なかった相手の裏を読みまくる戦法を多用し。
悪魔の司令塔の再来だ、いや、アレは最早魔王の司令塔だ、という恐怖のざわめきを欲しいままにしたのだった。
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真っ黒護楽しい!!
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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