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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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家族舞曲

(ヒルまも一家)
※『heartburn』の続きです
※リクエスト作品


+ + + + + + + + + +
厳さんがキャンプから帰ってきてからどうにも気分が優れないようだ。
何故気分が悪いかを尋ねても教えてもらえない。
身体の調子が悪い訳でもないし、食欲が落ちている訳でもない。
今時は心の病も増えてきているけれど、職場の人間関係も仕事関係(資金繰り等)にも不安はない(調べた)。
それならば夫婦生活のことか私に何か不満が、と聞いてみたけれどそれも違うと言う(布団の上で確認した)。
では原因は何か、と考えてみて思い当たるのはお父さんか護のどちらかが何かしでかした、ということ。
お父さんが原因だった場合、お母さんが気づくか護が気づくかするはず。そして連絡をくれるはず。
護が原因だった場合、大概お父さんが気づくから大事にはならないはず。
第一、 私がどれだけ怒るか想像したらそんなこと、二人ともしないはず。
推測でしかないが、今までの経験で考えれば間違いないと思う。
そもそも、『何か』をやるのなら、私の家族は徹底的に派手にやるのが信条なのだから。
ならば、故意ではないのなら?
厳さんが口に出したがらないというのなら、お父さんがキャラに合わない『何か』をやらかした可能性が一番高い気がする。

そこまで考えて、私は実家に向かうことにする。
この時間ならお母さんは家にいるはずだけれど、入れ違いにならないよう連絡してみる。
『はい、もしもし?』
すぐに電話に出た、優しい声。
お母さんの声は私のとよく似ているらしいけれど、自分の声はよく判らない。
所在を尋ねればお父さんとあかりと揃って家にいると言う。
お土産にシュークリームを強請られ、渋い顔になりつつ買って向かうことにした。

実家の玄関の扉を開ける。
勝手知ったるかつての我が家。一度ドアフォンを鳴らして入ったら怒られた。
『ここはアヤの家なのよ! そんな他人行儀に入ってきたらダメなのよ!』
嫁に行った身なのだからそれもどうだろう、と思いつつあの時の剣幕を思い出すと口角が上がる。
リビングに向かう扉が、ドアノブに触れる前に開いた。
タイミングが良かったのは偶然だったらしく、目を丸くしたお母さんの姿。
いつも通りロケットベアーのエプロンをしている。
「おかえり」
「ただいま。はい、お土産」
早々に毒物・・・もといお母さんの大好物の雁屋のシュークリームを渡す。
「あら、雁屋の! ・・・ちょっと!」
嬉しい、と笑うお母さんは、私がリビングに行こうとすると慌てて押しとどめた。
「待って!」
「何?」
「アヤ、カメラ持ってる?」
「? 持ってるけど」
途端、お母さんの顔が楽しげになる。うふふ、と口元を抑えながらリビングの扉を指さす。
「見て」
リビングと玄関とを隔てる扉には、格子模様に硝子がはめ込まれている。
その一つからリビングを覗き込むと、リビングのソファに見慣れた金髪が見えた。
「何やってるの?」
「うふふ、見てれば判るわよ」
ソファに座って膝にはあかりを向かい合わせに座らせ、右手にスマートフォン、左手であかりを抱えるお父さん。
あかりは一生懸命手を伸ばしてその手のスマートフォンを取ろうとしている。
「お父さん、それあかりも見るっ!」
そして聞こえるのはまだ幼さの塊のような甲高い声。
「ダメだっつってんだろ」
「やー!!」
暴れるあかりを難なく片腕で抑えながら、お父さんは片手でスマートフォンを操作している。
時折手が届きそうな位置まで下げておきながら、右に左にと動かしてあかりがじたばたと暴れる様を楽しんでいるかのようだ。
「見ーせーてー!!」
「やなこった」
ケケケ、と笑う声に悔しそうに唸るあかりの声でまた笑う。
上下左右に揺れるスマートフォンを握る右手、あかりを支える左手。
まるで陽気に踊っているかのよう。
「さっきからずっとああなのよ。カワイイでしょ!」
だから写真撮りたくって、カメラ探しに行こうと思ってたの。
「そう」
そう告げるお母さんにカメラを渡して操作の説明をする。
いつもの性質の悪い顔ではなく、かなり甘ったるい顔をしたお父さんをしみじみ眺める。
・・・もしかして、これが厳さんの不調の原因かしら。
「お父さん、今までにないくらいデレデレしてない?」
どこから見ても、娘を溺愛する父親だ。気色悪いくらい。
「そう? アヤが小さい頃もあんな風だったわよ」
あ、スマートフォンはない時代だったけど、というお母さんの補足を聞き流しながらあかりで遊ぶお父さんを見る。
かつては私ともああやって遊んだのか。・・・想像できない。
「娘でああだもの。孫になったらどうなるのかしらね~」
実に楽しげなお母さんの声に私は眉間に皺を寄せる。
「想像したくない」
「あら、想像なんてしなくていいわよ」
お母さんは私が渡したカメラで写真を撮りながら続ける。
「『事実は小説より奇なり』なんだから」
何もかも見抜いたかのような顔で、お母さんはくすくすと笑った。


***
ティーダ様リクエスト『ヒルまも一家、アヤ視点での日常ほのぼの系』+公子様リクエスト『ヒルまも一家、あかりを溺愛するヒル魔』でした。某御大からスマートフォンのネタをいただいてもう書きたくて書きたくて!!本当はこの後護を出す予定でしたがわざわざ黒くしなくてもいいかと(笑)ほのぼの楽しかったですwリクエストありがとうございましたー!
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