忍者ブログ
旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

* admin *  * write *  * res *
[1315]  [1314]  [1312]  [1313]  [1311]  [1310]  [1309]  [1308]  [1307]  [1306]  [1305
<<10 * 11/1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  *  12>>
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

至純感情(下)


+ + + + + + + + + +
今は引退した部活を手伝っているが、新入生が入るまでは俺とコイツの二人で雑用を片付ける状態が続くだろう。
この状態で糞マネに彼氏が出来たとする。部活の手伝いは勿論のこと、普段の生活でもコイツは彼氏に尽くすだろう。
朝の通学から昼飯の弁当から帰路に至るまで側にいたがるだろう。
ということは、部活に割く時間は減る。
早々に帰りたがり、始終メールや着信を気にして浮き足立つだろう。
当然今のような、部活に集中する状況にはなり得ない訳で。
そうして、糞マネは、俺の側からいなくなる。
顔もないままの糞マネ彼氏(相手はまだ想像上だ、当然だ)にこれ以上なく甘い顔をしている糞マネ(俺は見たことがないから判らないが)を想像しただけで気分が相当悪くなった。
いや、情報は正確に。
相当どころじゃない。
完全に、これ以上なく、ここしばらく覚えがないくらい、悪くなった。
それに己の事ながら驚き、更になんで気分が悪くなったかを分析する。
糞マネが糞チビ離れをして真っ当に恋愛をすることについて、第三者である俺がとやかく言う部分はない。
俺との関係だって部長とマネージャーに尽きるし、それももうすぐ終わる。
仲間ではあるだろうが、それを笠に着て干渉する関係でもない。
友人というカテゴリーには入ってない。
選択肢を一つずつ潰す一方で、俺は自分の感情を探る。
そもそも、なんで俺は糞マネが男を作らないことを聞いたのか。
脅迫手帳に連ねるつもりならもっと慎重に尋ねたし、聞きようもあったはずだ。
それなのに、なんで『単に気になったから』で質問したのか。
興味がわくのはその対象に正か負かはともかく、何かしらの強い感情が伴わなければならない。
つまり、この質問は俺がこの女に抱いた感情の発露。
そうして、男が出来たなら、という仮定の上に浮かんだどす黒いそれは、影こそ薄かったものの、かなり前から俺の中にあったような気がする。

・・・なんだ。

「愚問だな」
考え込んだ時間はほんの一瞬だった。
糞マネは眉を寄せてようやく身体を起こした。
ああ、愚問だ。
こんなことに今になって気づいた己を一番嘲笑って、俺はにたりと口角を上げた。
「何その返事。出来て欲しいとも欲しくないとも取れるでしょ」
ぷうっとむくれた女を、ちょいちょいと指先で呼ぶ。
「何よ」
「聞きたくねぇのか?」
それに糞マネは僅かに唸ってから立ち上がった。
警戒するような目つきで座ったままの俺に近寄ってきた糞マネは、椅子一つ分空けたところで止まった。
「もう少し寄れ」
「なんで? ここでいいじゃない」
「じゃあ教えねぇ」
つい、と顔を背ければ更に唸って渋々こちらに歩を進めた。
「うー」
視線を向ければ、むくれた女はすぐ隣に。
その顔がじわじわと赤くなっていることに、この女は気づいているのだろうか。
俺は左手を、内緒話する口元を隠すように口元に当て、もう一度右手の指で呼ぶ。
おっかなびっくりの及び腰で顔を近づけた女の耳元に、顔を寄せて。
「・・・!!!」
驚き慌てふためいた女は声もなく俺を押しのけようとしたが、及び腰だったせいで後ろに倒れかかった。
「危ねぇな」
殊更飄々と口にしてその腕を掴めば、顔どころか全身を真っ赤に染めた糞マネは涙目で俺を見下ろしている。
「な、な、な・・・舐めた、ぁ」
掴まれていない方の手で、震えながら自らの耳に触れている。
「なに、するの!」
舌先に残るのは、女の匂い。
僅かに甘いような気がするのは願望だろうか。
「舐めた」
「なん、で!」
「舐めたかったから」
ぺろ、と舌なめずりしてやれば、糞マネは必死になって逃げようと腕を取り戻そうとした。
細いし柔らけぇ腕はその感触通り非力だった。
男と女の力の差は歴然。子猫が抵抗する程度の力で藻掻かれても笑みしか浮かばない。
「っ」
がたん、と音を立てて立ち上がれば、糞マネは怯えたように震えた。
一気に視点の位置が変わり、先程まで上にあった潤んだ青い瞳が下になる。
「そこら辺の腑抜け野郎共にテメェの相手が務まるとは思えねぇ」
言いながら、俺は掴んでいた腕を放した。
「ヒル魔くん・・・?」
赤くなったまま安堵したような、困惑したような表情を浮かべてこちらを伺う糞マネに、俺は眸を細めた。
「だから―――」
「っ!!」
再び腕を掴み、強引に引き寄せた身体を、腕の中に納める。
あー、柔らけぇ。
先程舐めた耳に再び口元を寄せて、囁く。
「俺の女になれ」
「え・・・ひゃん!」
再びねろりと耳を舐めれば、糞マネは首をすくめて甘い悲鳴を零した。
自分でもその甘さに気づいたのだろう、糞マネはどうにか距離を置こうと暴れたが、みすみす離すつもりはまったくない。ぎゅう、と更に力を込めて抱きしめれば糞マネは息苦しそうに吐息を零した。
こうするとこいつの胸がデケェのがまあよく判るな。
「な、なんで、こんな、いきなり」
混乱して睨み付けてくるその顔に、俺の口角は上がりっぱなしだ。
「そりゃ好きだから」
「・・・誰が誰を」
「テメェが俺を、だろ」
そうじゃなきゃ、わざわざ二人きりになるように残らねぇだろ。
残って行くほどでもない仕事の書類を見ながら低く笑う。
「逆! 逆よね?! 見てこの状況!」
わたわたと暴れる糞マネに囁く。
「逆ならいいのか?」
にやりと笑ってその額にキスを落とせば、糞マネは小さく震えた。
「いいんだな?」
「え、なにが、っていうか、落ち着いて、あの、なんていうか、ちょっ、と待って待って待って!!」
ぐい、と顎を上げてやると糞マネは混乱しきってぼろっと涙を溢した。
・・・ここでその顔は不味いだろう。
なんだかんだでコイツの泣き顔を真っ正面から見るのは初めてだ。
そこでまた一つ気づく。
俺が今まで、無意識にコイツの泣き顔を見ないように心がけていた本当の理由を。
(抑えも利かなくなるよな、そりゃ)
泣き濡れた青い瞳に映るのは俺だけ。
抱きしめた身体の熱、匂い。震える弱々しい声。
まるで据え膳だな。
浮かんだ考えに、くくく、と喉の奥で笑って俺は頭を落とした。
「百歩譲って」
たったそれだけで、14センチ下の糞マネまでの距離は簡単に縮まる。
いや、もっと前からこの距離はなかったようなもんだった。
「俺がテメェに惚れてる、っつーことにしてやってもいい」
だから、無駄な抵抗は止めとけ。
そう囁けば糞マネはぎゅう、と俺の制服を握って首を振る。
「近い、ぃ・・・」
距離に堪えきれず瞳を閉じてしまった糞マネの唇に触れるぎりぎりのところで、笑う。
内心渦巻く感情を隠しもしない、熱く低い声を吹き込んで。
「愛してるぞ、姉崎」
瞬間、見開いた青い瞳に嫌悪はなく、ただ驚きだけ。
俺はうっそりと笑ってその唇に噛みつくようなキスをした。


***
押せ押せヒル魔さん再び。ヒル魔さん視点の話って滅多に書かないんですが、今回は何となく書けました。自分の欲しいものが決まったら迷わず手段も選ばず掻っ攫う人だと思ってます。そして色々と青い感じを差し込めて満足。だって高校生だもの!(笑)
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

管理人のみ閲覧可能にする    
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カウンター
プロフィール
HN:
鳥(とり)
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。

【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
最新コメント
[01/05 鳥]
[01/05 NONAME]
[10/21 NONAME]
[10/11 坂上]
[10/02 坂上]
最新トラックバック
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
フリーエリア
powered by NINJA TOOLS // appeal: 忍者ブログ / [PR]

template by ゆきぱんだ  //  Copyright: hoboniti*kotori All Rights Reserved