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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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至純感情(上)

(ヒルまも)


+ + + + + + + + + +
俺の目は、前をぱたぱたと小走りに動く女を見る。
手元はノートパソコンのキーに触れていて、頭とは関係なしにデータを打ち込んでいて。
この女―――姉崎まもり、通称糞マネの行動を先程からのぞき見ては変わらないその仕事ぶりを何となく観察していた。
(相変わらずよく動く)
頭がいいと一般的に言われる奴は大概勉強だけ出来て自主的な行動が伴わないことがある。
だが、この女は本当に『頭がいい』女だ。
最低限の指示さえしておけば、自分で判断してその先を組み立てることが出来る。
こちらの盲点を突き、試合中に窮地を脱したことも一度や二度ではない。
逆にこちらの意図しない事をしでかしたりもしたが(例えばデス・マーチに参加したり、指示書を目の前で引き裂いたり、な)、それでも能力と突拍子もなさを天秤に掛ければ圧倒的に能力の方に傾く。
「ヒル魔くん、コーヒーお代わり要る?」
「おー」
いそいそと空になったカップを持って行く女のいた跡は、すっきりさっぱり片付いている。
この片付けの能力に加え、料理の腕あり、気遣いもある。
加えて。
パソコンの画面を操作してファイルを呼び出す。
その中には彼女がこれまで晒してきた数々のコスプレ関連写真がずらっと並んでいた。
アメリカ人の血を引いているからか、出るところは出て締まるところは締まっているミツバチ体型。
茶髪が縁取る顔は小さく、収まりよく全てのパーツが配置されている。
碧眼に白い肌、艶やかな唇。
同性からは嫉妬を通り越して羨望の眼差しが多いのも頷ける。
ファイルにあった写真を一瞥して画面を戻したところで、件の糞マネがカップを手に戻ってきた。
「はい、コーヒー」
「ああ」
受け取って口をつける。
本人は味が分からないはずだが、随分と俺好みの味に仕上がっている。
それが見ていても判ったのか、女は自らの仕事に満足したように笑みを浮かべて、カップを手に向かいに座った。
コーヒーを飲みながらパソコンをシャットダウンする。
「あれ、もうパソコンしまうの?」
「今日の分は打ち終わった」
「そっか。じゃあこれ飲んだら帰ろうね」
にこにこと笑う女からはカフェオレのだろう、甘ったるいミルクの匂いがした。
その手元から徐々に糞マネの顔に向かって視線を動かす。
引退したとはいえ、日差しに晒される過酷な環境のはずだが、女の肌は相変わらず白い。
日に焼けづらい体質かもしれないな、と己の肌を思う。
碧眼は伏せられていて、長い睫が頬に影を落としている。
その佇まいといい、雰囲気といい、清純そのものだ。
が、その身体は随分と男好きするような体型だったな、と先程も考えたことが脳裏をよぎった。
「? どうしたの? 何か私についてる?」
「ア?」
「じっとこっち見てるし」
もぞ、と女が身じろいだ。
あちこち身体を見回す女は自分が異性からどういう風に見られているか考えたことはないのだろうか。
それなりにモテる女であるのは確かだが、告白まで到達するような男は今までいたことがないはず。
男の側からすれば、かなり高嶺の花であり声など掛けられないと敬遠されるレベルだろう。
俺が側にいるのを差し引いても、だ。
だがコイツ自身は? 糞チビ絡みはもうないとしても、そういう興味はないのだろうか。
ふとそんな疑問が浮かんで、俺はごく素直に尋ねた。
「テメェ、男作らねぇのか」
「・・・えっ?!」
即座にではなく、僅かに間を空けた後に糞マネは飛び上がった。
まん丸に見開かれた瞳が、まじまじとこちらを凝視している。
「・・・ど、・・・えと、・・・なんで?」
ぎくしゃくと首を傾げた女に、何故そんなに固まるかが理解できず俺は眉を寄せた。
だが、すぐに糞マネは一呼吸置いて続ける。
「ヒル魔くんからそんな質問、されるとは思ってなかったんだけど・・・」
何の悪行予告でしょうか、とよく分からない日本語を繰り出す糞マネに続ける。
「糞チビの糞保護者気取りが抜けた後、結構経つ割にンな話がねぇなってなァ」
コーヒーを飲み干して伺えば、糞マネは更に首を傾げていた。
そのままじゃ床に転がるぞ。
「・・・・・・まさかとは思うけど、興味本位?」
まるで信じられない、という顔で尋ねられたので、俺は特に表情も変えずに言ってやった。
「純粋に興味本位だ」
「じゅ!?」
「事実だが?」
目を白黒させる糞マネに、思わず笑いがこみ上げる。
「テメェに憧れる糞野郎は多いとしても、テメェに直接ぶつかってくる糞野郎はそうそういねぇだろうし、テメェが選ばねぇことにはンな話がねぇだろうな、とは踏んだんだがな」
「・・・はあ、そう」
糞マネは大分ナナメになったまま俺を見上げてくる。
変なところで器用な女だな、テメェ。腰痛めるぞ。
そのままの姿勢で眉を寄せて、糞マネは逆に質問してきた。
「ヒル魔くんは、私に彼氏が出来て欲しいの?」
それに俺は考え込んだ。

<続>
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