旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
緑の深い道は日差しと比例して濃い日陰を落としている。
「かなり上流に行けば滝があるみたいだな」
「行きますか?」
体力には自信がある、というアヤに苦笑して首を振る。
「昼飯前にそこまで行かなくてもいいだろう。行くなら車だな」
「そうですね」
川縁まで降りると、浅瀬に魚の影がある。なるほど、釣りも出来るというのは本当らしい。
ただ一見して反対側の岸近くは青く深い色をしていて、一気に深くなっているというのがよく判る。
これは泳がない方がいいな、と考えていると隣でアヤがしゃがんだ。
「冷たい」
アヤは川の水を手のひらで受けて感心したように呟く。
川を渡る風も都市部の熱気など知らないように爽やかだ。
「キャンプは何度か来たことあるのか?」
「アメリカにいた頃は行きましたね。日本に来てからは部活一辺倒でしたし、キャンプにはあまり」
「そうか」
「厳さんはどうです?」
尋ねられて首を捻る。物心ついた頃から仕事の手伝いをしていてそれが性に合っていたし、高校の時、ヒル魔たちが行ったデス・マーチには参加していないし、キャンプのようなイベントは経験したことがない。
「そういえば、ないな」
「そう、なんですか?」
きょとん、とした顔のアヤに苦笑する。
「ああ。思い返しても一度もない」
「そう・・・」
アヤは少し考えているような顔をしたが、かすかに頬が赤い。
何か照れる話でもしただろうか。
「どうした?」
「え。・・・ああ」
変化を見抜かれたことで、アヤはふんわりと笑う。
「厳さんが初めて、っていう経験が出来て嬉しいって思ったんです」
立ち上がり、水に触れていたせいで冷たいアヤの手。
普段からひんやりした印象の手が指先を赤くしていたので、その手を握る。
絡めたその指に、アヤは更に頬を染めて嬉しそうに肩口に頭を持たれ掛けさせた。
昼食は焼きそばと、なぜかヤマメの塩焼きが並んだ。
ヒル魔が釣ったのかと思ったが、違うという。
あかりがあんまりにも楽しそうに釣り人に話掛けた結果、得たらしい。
「すごいねー、たくさんいるねー、って言ってたらくれたよ!」
「よかったな」
はしゃぐあかりの頭を撫で、妖介と護が作った焼きそばに舌鼓を打つ。
「あかりは誰からもかわいがられるのよね」
「知らない人からシュークリームあげる、って言ってもついて行っちゃダメだよ」
「え? こないだもらったよ」
「・・・もう遅かったか」
どうやら人懐っこい性格と見た目のかわいさからご近所のアイドルと化しているらしいあかり。
将来が楽しみなような、怖いような。
「このヤマメ美味しい~!」
「流石釣りたて! 美味い!」
美味しい物に目がないまもりと妖介の二人の声をBGMに、賑やかな昼食は終わった。
宿泊先がコテージでバーベキュー用の施設があり、近場に温泉もあるから、着替えの他はさしたる荷物もなく過ごせる。
「一からテントで過ごすっていうのもいいよね」
「俺が車を出せばよかったんじゃないか」
「姉崎が糞ゴキブリ嫌いでテントは嫌なんだとよ」
「なんだ、どっちにしてもテントで寝る気はなかったんだ」
あかりから虫取り同行を断られたヒル魔と妖介と共に釣り糸を垂れる。
護とあかりは虫取りをすべく山に入り、まもりとアヤは温泉に向かった。
時折餌だけ食われて渋い顔をしつつ、釣り糸を垂れる。
「時間帯的に釣れないのかもね」
「そうかもな」
男三人でのんびり過ごす。頭の遙か上で鳶が鳴いていた。
「・・・長閑だな」
「たまにはいいでしょ?」
ふと、ヒル魔が眉を寄せた。
「今年は酷暑だから猪や熊が出るかもな」
「・・・」
山の食べ物が不足すると動物たちが餌を求めて人里へ降りてくる。
あり得る話だ。
思わず虫取り組の方へ行こうかと考えたが。
「今は大丈夫でしょう。護が一緒だから」
「そうか?」
「ええ。あいつなら逆に餌もらって帰って来るかも」
動物に異様なほど好かれる護のことだ。あり得るかもしれない。
お、来た。
そう呟いて妖介がようやく一匹釣り上げた。
徐々に空が茜色から紺色へと変わる頃合い。
温泉から戻ってきたまもりとアヤが夕飯の準備に入る。
とはいえ、手際のいいまもりのこと先に下ごしらえをしてから運び込んで来ているので、後は焼くだけだ。
近くでヒル魔が一斗缶をひっくり返しているのを見つけ、まもりが声を掛ける。
「あれ? ヒル魔くん何やってるの?」
「燻製」
いつの間に準備していたのか、一斗缶の中にはチーズやソーセージのような具材が美味しそうに燻されていた。
「おら」
「うわあ美味しい! すごいわ、こんなことも出来るのね!」
早速小さいチーズを口に放り込まれ、まもりがはしゃぐ。
「相変わらず母さんを喜ばせることにかけては手を抜かないよね」
「他に何仕込んでるんだろうね」
バーベキューをするための炭火とは別に、たき火を起こしながら妖介と護は肩をすくめる。
あかりは普段接しない火を興味津々に見つめている。
炭火の様子を見ながら、そんな一家の様子を見渡した。
<続>
「かなり上流に行けば滝があるみたいだな」
「行きますか?」
体力には自信がある、というアヤに苦笑して首を振る。
「昼飯前にそこまで行かなくてもいいだろう。行くなら車だな」
「そうですね」
川縁まで降りると、浅瀬に魚の影がある。なるほど、釣りも出来るというのは本当らしい。
ただ一見して反対側の岸近くは青く深い色をしていて、一気に深くなっているというのがよく判る。
これは泳がない方がいいな、と考えていると隣でアヤがしゃがんだ。
「冷たい」
アヤは川の水を手のひらで受けて感心したように呟く。
川を渡る風も都市部の熱気など知らないように爽やかだ。
「キャンプは何度か来たことあるのか?」
「アメリカにいた頃は行きましたね。日本に来てからは部活一辺倒でしたし、キャンプにはあまり」
「そうか」
「厳さんはどうです?」
尋ねられて首を捻る。物心ついた頃から仕事の手伝いをしていてそれが性に合っていたし、高校の時、ヒル魔たちが行ったデス・マーチには参加していないし、キャンプのようなイベントは経験したことがない。
「そういえば、ないな」
「そう、なんですか?」
きょとん、とした顔のアヤに苦笑する。
「ああ。思い返しても一度もない」
「そう・・・」
アヤは少し考えているような顔をしたが、かすかに頬が赤い。
何か照れる話でもしただろうか。
「どうした?」
「え。・・・ああ」
変化を見抜かれたことで、アヤはふんわりと笑う。
「厳さんが初めて、っていう経験が出来て嬉しいって思ったんです」
立ち上がり、水に触れていたせいで冷たいアヤの手。
普段からひんやりした印象の手が指先を赤くしていたので、その手を握る。
絡めたその指に、アヤは更に頬を染めて嬉しそうに肩口に頭を持たれ掛けさせた。
昼食は焼きそばと、なぜかヤマメの塩焼きが並んだ。
ヒル魔が釣ったのかと思ったが、違うという。
あかりがあんまりにも楽しそうに釣り人に話掛けた結果、得たらしい。
「すごいねー、たくさんいるねー、って言ってたらくれたよ!」
「よかったな」
はしゃぐあかりの頭を撫で、妖介と護が作った焼きそばに舌鼓を打つ。
「あかりは誰からもかわいがられるのよね」
「知らない人からシュークリームあげる、って言ってもついて行っちゃダメだよ」
「え? こないだもらったよ」
「・・・もう遅かったか」
どうやら人懐っこい性格と見た目のかわいさからご近所のアイドルと化しているらしいあかり。
将来が楽しみなような、怖いような。
「このヤマメ美味しい~!」
「流石釣りたて! 美味い!」
美味しい物に目がないまもりと妖介の二人の声をBGMに、賑やかな昼食は終わった。
宿泊先がコテージでバーベキュー用の施設があり、近場に温泉もあるから、着替えの他はさしたる荷物もなく過ごせる。
「一からテントで過ごすっていうのもいいよね」
「俺が車を出せばよかったんじゃないか」
「姉崎が糞ゴキブリ嫌いでテントは嫌なんだとよ」
「なんだ、どっちにしてもテントで寝る気はなかったんだ」
あかりから虫取り同行を断られたヒル魔と妖介と共に釣り糸を垂れる。
護とあかりは虫取りをすべく山に入り、まもりとアヤは温泉に向かった。
時折餌だけ食われて渋い顔をしつつ、釣り糸を垂れる。
「時間帯的に釣れないのかもね」
「そうかもな」
男三人でのんびり過ごす。頭の遙か上で鳶が鳴いていた。
「・・・長閑だな」
「たまにはいいでしょ?」
ふと、ヒル魔が眉を寄せた。
「今年は酷暑だから猪や熊が出るかもな」
「・・・」
山の食べ物が不足すると動物たちが餌を求めて人里へ降りてくる。
あり得る話だ。
思わず虫取り組の方へ行こうかと考えたが。
「今は大丈夫でしょう。護が一緒だから」
「そうか?」
「ええ。あいつなら逆に餌もらって帰って来るかも」
動物に異様なほど好かれる護のことだ。あり得るかもしれない。
お、来た。
そう呟いて妖介がようやく一匹釣り上げた。
徐々に空が茜色から紺色へと変わる頃合い。
温泉から戻ってきたまもりとアヤが夕飯の準備に入る。
とはいえ、手際のいいまもりのこと先に下ごしらえをしてから運び込んで来ているので、後は焼くだけだ。
近くでヒル魔が一斗缶をひっくり返しているのを見つけ、まもりが声を掛ける。
「あれ? ヒル魔くん何やってるの?」
「燻製」
いつの間に準備していたのか、一斗缶の中にはチーズやソーセージのような具材が美味しそうに燻されていた。
「おら」
「うわあ美味しい! すごいわ、こんなことも出来るのね!」
早速小さいチーズを口に放り込まれ、まもりがはしゃぐ。
「相変わらず母さんを喜ばせることにかけては手を抜かないよね」
「他に何仕込んでるんだろうね」
バーベキューをするための炭火とは別に、たき火を起こしながら妖介と護は肩をすくめる。
あかりは普段接しない火を興味津々に見つめている。
炭火の様子を見ながら、そんな一家の様子を見渡した。
<続>
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趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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