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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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猛虎招来(中)



+ + + + + + + + + +
その後三々五々に帰宅した家族を食事のために呼び集め、ヒル魔は妖介に酒を飲ませる旨を説明したのだ。
案の定まもりが声を上げる。
「ええ? でも、未成年よ?」
「テメェだって大学入ってすぐ飲み会連れて行かれただろうが」
「・・・あ」
「その酒の席で散々な目に遭ってるよなァ?」
「・・・うん」
実際にはその後も含めだけど、という言葉は呑み込んでまもりは頷く。
子供達はなんとなく察したが誰も口には出さない。
「大学入りゃ未成年でも飲酒なんざ当たり前だ。限度知らないで飲んで急性アルコール中毒で死んだら洒落にならねぇぞ」
「そっかー・・・」
当初は難色を示したまもりも、ヒル魔の言うことも一理ある、と納得してしまう。
「え!? そんな場所、大学入ったって行かないよ!」
「飲まないつもりだったのに、実際店に行ったら酒飲んだ実例がここにいるからなァ」
「そうなのよ」
まもりは苦笑する。
「お酒っていっても甘口だったりするとジュースと間違えて飲んじゃうかもしれないわよ」
「結婚式の席でいきなり酒飲んで倒れたり暴れたり泣き出したりしてみろ。周囲に迷惑かかるぞ」
「迷惑・・・」
ヒル魔の口からそんな常識的なことを言われて、妖介は微妙な顔になる。
だが。
「ムサシとアヤの式がメチャクチャになったらどうする」
「っ」
その言葉に妖介はヒル魔を見た。
彼の中に渦巻く『色』。
それは親友の式であると同時に、娘の式。祝福の門出だけれども離別の儀式でもある。
幸せであって欲しい、それは間違いなく思っているけれども、言いようのない寂しさが入り交じり、ヒル魔の『色』はいつになく深かった。
言葉よりもなによりも雄弁なそれに、妖介は何も言えなくなってしまう。
「ここは自宅だし、何かあったら押さえる要員もいるからなァ」
ヒル魔とアヤ、そして護。ここに来て成長期を迎えた護はぐんと背が伸び、力も強くなった。
アメフト部でラインとして鍛えた妖介の力は相当なモノだが、三人がかりならもしもの事があってもなんとかなるだろう。
冗談のようで真剣な家族会議はそんな風に進行して、夕食後早々にあかりを寝付かせ。
そして寝る支度を整えた全員がリビングで集まったのだけれど。





目が覚めて、妖介はガンガンと痛む頭に眉を顰めた。
「痛~~~~ッ」
起き上がり、時計を見る。
随分と寝坊してしまった。普段ならランニングを終え、とうに朝食を食べ終えている時間だ。
「マズ・・・」
自分は休みだが、朝食を作るつもりだったのに、と重い身体を叱咤して妖介はベッドを降りた。
けれど頭はまだ痛い。
唸る彼の耳に、ドアが開く音。
「起きたか」
「アヤ・・・」
名を呼ぶと、返事代わりに投げられたのはよく冷えたミネラルウォーターだった。
ありがたくそれに口を付ける。一気に半分程飲み干して一息ついた彼に、アヤは口を開いた。
「お前に酒は飲ませない事になった」
「へえ・・・」
水のおかげで少々すっきりした気分になった妖介は、アヤの顔を見る。
疲労の滲んだ顔だ。そんな顔をしているなんて珍しい。
妖介は首を傾げる。
「アヤも二日酔い?」
「飲んでない」
彼女はウワバミだし限界も判らないくらいだから、二日酔いなんてしたことないと豪語していた。
それに、昨日は妖介の酒の限度がどれくらいかを見定めるためのものだった。
だからアヤは素面で彼の様子を見ていただけだったはずだが。
では、なぜそこまで疲れているのだろうか。
嫌な予感がして、恐る恐る尋ねる。
「・・・俺、どうだったの?」
「どこまで覚えてる?」
けれど質問は質問で返された。
「えー・・・と」
妖介は記憶を辿った。
ビールが苦くて不味いと思い、日本酒も辛いと思った。
ということは、多分飲めていてビールの大瓶が一本、日本酒が一合くらいだろうか。
そこまではなんとか覚えている、と言うとアヤは頷いた。

<続>
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