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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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夏色コントラスト(5)/完結



+ + + + + + + + + +
不意にヒル魔さんの腕に力が籠もる。
「え」
ヒル魔さんに抱きしめられたままの身体が僅かに浮く。
そして、まるでワルツを踊るかのように私は室内へと誘われた。
床に物が落ちている訳ではないから足を取られる可能性は低い。
でも、暗闇の中を明かりもなく移動するには危ない。
「危ない、わ! ぶつかる・・・」
「ンな狭くねぇよ」
そう思って声を上げたのに、ヒル魔さんは頓着せず足を止めない。
「どこ、いくの?」
懐中電灯はどこの部屋にあるかしら、と尋ねる私にヒル魔さんは答えなかった。
ゆるゆると暗闇を滑って進む彼の目的地が知れず、私は小首を傾げる。
「―――その昔、とある国で大規模な停電が起こった」
突然の声に、何が言いたいのか、と瞬くが、室内は今も暗いまま。
目も慣れず、たかだか20センチ弱の距離にあるはずのヒル魔さんの顔が見えない。
「その十ヶ月程後、その国はいきなり出生率が跳ね上がったんだと」
「え・・・?」
かちゃりと開くのは、どこかの部屋の扉。
こんなに暗いのに、ヒル魔さんはまるで全てが見えるかのように進んでいく。
「何故だか判るか?」
「ヒル魔さん?」
謎かけのような言葉の近さに、私は顔を上げる。
間近に迫るヒル魔さんの顔に、目を瞠った。
そのまま、唇が塞がれる。
「ん・・・っ!」
濡れた音を立てて蠢く舌が、私の魂ごと全てを引きずり出してしまいそうな勢いだ。
「ふっ」
びくりと肩を震わせた表紙に唇が離れる。
「まもり」
低く掠れた声で名を呼ばれ、私はびくりと背を震わせ、閉じる。
「どこの国でも、どの時代でも、誰しも考えることは一緒だ」
再び触れる唇、絡む舌。
このまま魂が抜き取られたら、私はどうなるんだろう―――そんな事を考えていたけれど、思考は長く続かなかった。



そうして、瞳を開いていても閉じていても―――闇。




数日後。
本格的に夏休みとなった私は、同じく休みのヒル魔さんと連れ立って買い物に出掛けた。
夏の日差しに眉を顰め、木陰を選んで歩く私の隣で、ヒル魔さんは飄々としている。
黒ずくめなのに暑くないのかしら。
「姉崎さん!」
後ろから掛けられた声に振り返り。
「あ」
こちらに笑顔で手を振る青年を見つけて動きを止めた。
K芸大生の吉野くんだ。
あのメモを紛失して連絡が取れなかったことを申し訳なく思っていた私は、申し出を受けるにしても断るにしてもまず一言謝ろう、と足を踏み出そうとした。
けれど、その前にヒル魔さんが私の肩を掴んで引き留める。
「あいつがお前を描かせろ、っつった男か」
「え!? なんで、知ってるの?!」
「糞アマに聞いた」
「んもう! だからメグさんはそんな名前じゃ・・・」
あっさりとネタ晴らしをしたヒル魔さんは、憤慨する私を傍らに立たせ、彼に向かってにやりと笑う。
その顔を見て、吉野くんが顔を強ばらせた。
「テメェなんぞにコイツは描かせねぇ」
「な・・・なんですか、いきなり!」
私本人ではなく、隣のヒル魔さんが宣言したことにかちんと来たのか、吉野くんは声を荒げる。
「テメェじゃコイツの一番いい顔が引き出せねぇからなァ」
「え」
ぐい、と引き寄せられ、その腕に収められる。
日の光を吸収して、黒服はかなり熱くなっている。触れる腕も、その下の肌も、きっと熱い。
でも、もっと熱かったのは―――
「・・・っ」
私はあの夜のことを思い出し、一気に頬を染める。
恥ずかしくなって瞳を伏せた私の頭の上で、低く笑うヒル魔さんがいて。
そうして視界の隅で、握りしめられた吉野くんの手が見えた。
震えている。
「ホラな」
勝ち誇ったような、ヒル魔さんの声。
「・・・っ!!」
震えていた吉野くんの手が勢いよく翻り、遠くなっていく。
ばたばたと上手ではない走りの足音が響くのを、ぼんやりと見送ってしまう。


後に残るのは、強烈な日差しと、その中に佇む私たちの濃い影だけだった。


***
季節はずれも甚だしいですが、書きたくなったので!
いい加減お初書くのに飽きてきたので裏は省略です(身も蓋もない)
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 ヒルまもパロSS100話&ヒルまもSS150話おめでとうございます!
これからもがんばって下さい!
とくめい 2009/04/04(Sat)11:30 編集
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