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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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深淵と小箱(6)


+ + + + + + + + + +
ヒル魔は手に取った乳液をべったりとまもりの左足の裏に塗ると、おもむろに揉み始めた。
「ちょ、くすぐったい!」
ぐりぐりといじるその手つきがくすぐったくて、まもりは身をよじる。
「くすぐったいですって、ば、・・・っつ!」
ヒル魔が指を握り込んで尖らせた関節である箇所を押すと、まもりはびくんと身体を硬直させた。
「痛い! ちょっと、止めて下さい!」
涙まで滲ませるまもりに、ヒル魔の目はどこか冷ややかだ。
「肩」
「え・・・イッタ!」
「目」
「な、何が、~~~イタタタタ!!」
「身体の中の悪ィ箇所だけが痛いんだよ。テメェあれだけ机に張り付いて本ばっかり読んでりゃ肩も目も悪くなるに決まってんだろ」
呆れたように言われ、まもりはむっと眉を寄せるが、確かに目も肩も普段から痛いし辛い箇所である。
「痛いですってば!」
「我慢しろ」
けれど、これだけは言わなければ。
「この一週間の状況からしたら、妥当、でしょ・・・!!」
イタタタタ、と悲鳴を上げながらもまもりはヒル魔を睨む。
涙が滲んだ視界では彼の顔ははっきりと見えない。
ヒル魔はどこか困ったような顔を一瞬したが、すぐに表情を戻しするりと指を滑らせた。
「イッター!! そこ、凄く痛いです!!」
向こう臑の、骨に沿った部分。そこが痛くてたまらない。
「座骨神経」
「ざ・・・?!」
そんな、座っていても痛くないのに、という無言の訴えを察したヒル魔はそこを丹念にほぐしながら続ける。
「冷え性だと痛ェらしいぞ」
「ひえしょう・・・冷え性でしたっけ私・・・」
「知らねぇよ」
「平熱、は、高いん、です、けど、~~イタイタイタタタ!!」
「これだけ痛ェんなら冷え性なんだろうよ」
彼はぱっとまもりの左足を解放した。
ああこれで終わるのか、と思えばヒル魔は右足をむんずと掴む。
「ええ!? もう十分ですよ!」
「片足じゃバランス悪ィだろ。明日はまた歩くんだ、おとなしく揉まれとけ」
「ええ!? 明日、また歩くんですか?!」
「おー」
ヒル魔は右足にも乳液を塗りたくると、ぐりぐりと揉み始めた。
口角を上げ、楽しそうに鼻歌交じりで。
まもりは散々に悲鳴を上げて身悶え、本人としては甚だ不本意だがヒル魔を大変楽しませる結果となったのだった。


翌朝も朝早くに目覚める。
けれど、昨日あれだけ馬に揺られ、歩いたのに身体が辛くない。
「起きたか」
まもりより更に早く起きたらしいヒル魔が頭を拭いながら洗面台から出てきた。
「おはようございます。大将は朝早いんですね」
「元帥は随分寝汚いですね」
「普通です!」
起き上がってみて、足がいつになく軽いことに気づいた。
まもりはベッドから降りると、ヒル魔の傍らに歩み寄った。
「足、楽です。ありがとうございます」
あれだけ揉まれたのだ、揉み返しがあったら嫌だな、と思ったけれどそんなことはない。
「あの揉む技、私も覚えたいですね。今日は私が大将にやってあげます」
「ホー。じゃあ夜にな」
朝飯に行くぞ、と言われてまもりは慌てて顔を洗いに行く。
洗面台に用意されたのは昨日とはまた違う服。
おとなしくそれに袖を通し、身なりを整えてから部屋に戻る。
「大将、昨日といい今日といい、この服はどこで手に入れたんですか?」
「その辺で適当に」
「・・・その割には・・・」
まもりは今日与えられた緑色のワンピースを見下ろした。
まだこの服だけなら判る。それ以外の、もの。
「・・・・・・下着、とか」
「そんなの見りゃ判るだろ」
まもりはヒル魔を訝しげにじろじろと見つめた。
「・・・見ても判りませんけど」
自分の服のサイズだってろくに知らないのに、男性服のサイズなんて判るはずがない。
「経験値ゼロのお子ちゃま元帥には判りませんヨ」
いいから朝飯に行くぞ、と腕を掴まれ、引かれる。
長い指。大きな手のひら。まもりよりも高い温度。
「やっぱり冷え性なんじゃねぇか、テメェ」
冷たい、と言われてまもりは眉を寄せる。
「水で顔を洗ったからです」
言い返しながらまもりは自らに誓う。
帰ったら冷え性克服のために本を探し、実践しよう、と。


<続>
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