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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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深淵と小箱(7)

+ + + + + + + + + +
町中の坂道は複雑だ。昨日見て回ったのとは違う地区を歩く。
見慣れない服を着た人々も多い。地元民の民族衣装だろう、きっちりと襟の詰まった服を着ている者が多い。
この地の特産だというお茶の葉の店でいくつか購入し、ついでに店の者に服のことを尋ねると。
「その格好、暑そうですね」
「そんなことないですよ! 涼しいんですよ!」
目を丸くするまもりに、店員はどれだけこの格好が涼しいかを力説する。
吸汗性に富み、発散力も高い布地と細かい採寸を経て作られる服はどんなに蒸し暑い場所でも楽に過ごせるのだ、と。
あまりに熱心に語られるので、服になど興味のないまもりも少々気になった。
「面白そうですね」
「行ってみるか」
店の場所を聞いて訪れれば、そこは店と言うより古民家という趣だった。
通された先で店主からごくシンプルな見本を着てみるよう勧められる。
そうして身に纏い、その涼しさに驚嘆した。
「すごく涼しいですよ!」
布地を摘んでそんなもんか、と呟くヒル魔にもどうですか、と店主は勧める。
「男性物も手軽に着られて涼しいですよ」
「いいじゃないですか。貴方も着てみたらどうです?」
ヒル魔はぴんと片眉を上げたが、興味はあったようで試着室へと姿を消す。
「よろしければお作りしますよ」
「でも、そんなには居られないんです」
「大丈夫です。明日の夕方にはお届けできますよ」
「明日! 早いですね」
オーダーメイドの服がそれだけ早く作れるというのは全く驚きである。
せっかくだから、と作ることに決めたまもりは、ヒル魔の分も採寸して作成するよう店主に頼んだ。

この地は南国の果物が豊富に取れるため、それを使った甘味が多い。
暑さを生かして果物とかき氷を組み合わせたものが有名である。
「この芒果美味しいですよ!」
「そーか」
ヒル魔は素っ気なく応じるだけだ。
甘味が苦手な彼にとっては果物も決して好きなものではない。
まもりはスプーンで氷をすくい、差し出す。
「氷部分だけでも食べませんか?」
「イラネ。テメェそれも甘いっつってたろ」
どうやら練乳でも掛かってるらしく、結構な甘さの氷らしい。
あまり表情は変わらないが、喜んで食べているまもりの顔を見れば甘さの程度も知れようというもの。
一人で食べるのは味気ないと思っているのだが、ヒル魔は全く取り合わない。
「・・・甘い物が苦手なら、あれはどうです?」
「あれ?」
まもりが指さしたのは白苦瓜をジュースにしたものだ。
白苦瓜には体温を下げる効果があるとして人気があるらしい。
蜂蜜と檸檬を入れて飲みやすくしてあるらしいが、まもりには到底飲めそうにないと思う代物だ。
ヒル魔はふん、と鼻を鳴らすと店員を呼びつけ、そのジュースを注文する。
ただし蜂蜜は抜きで、と伝えると店員はどれだけ苦いかを力説したが最終的に彼の一睨みで黙りこくった。
「無駄に威嚇しちゃダメですよ。貴方かなり目つき悪いんですから」
「穏和な顔した覚えはねぇな」
「どんな開き直りですか」
程なく出されたジュースを啜って、ヒル魔は悪くねぇな、と呟いた。
表情を変えないヒル魔に、さほど苦くないのかな、と小首を傾げるまもりを見て彼は口角を上げる。
「飲むか?」
「一口もらいます」
恐る恐る吸い上げれば、爽やかな飲み口でああそんなに苦くない、と一瞬思えた。
が、その直後。
「苦・・・」
舌一面に広がった苦みに、まもりの眉間に皺が寄る。渋い顔になった彼女にヒル魔は声を上げて笑った。
「テメェの食い意地には恐れ入ったな。散々糞苦いって聞いておきながらよくもまあ」
「だって、気になったんですよ」
ヒル魔は笑みを浮かべたまま口直しにと芒果を頬張るまもりを見つめる。
普段は冷徹に作戦を遂行するくせに、どうにも根が糞甘臭ェな、と内心呟く。
酷く近寄りがたい普段との落差が大きく、少し気を許せば途端にあどけない一面を垣間見せる。
「顔」
「なんです?」
顎に滴った雫をぬぐい取る。それを一舐めし、ヒル魔は眉を寄せた。
「やっぱり糞甘ェ」
それは色々な意味を含んでいたのだけれど。
まもりは美味しいのに、と小首を傾げただけだった。

<続>
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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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