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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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深淵と小箱(3)

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振り返り、早速積み上げられた書類を見てまもりは瞬いた。
「随分早いですね」
「すぐに出来るものから順々に持って行った方がいいと思いまして」
「他のみんなも頑張ってるッス! 元帥にちゃんと休んで欲しいッスから!」
忠犬よろしく山積みの仕事を持って来た二人に、まもりの目元が綻ぶ。
色々と思惑はあるけれど、ことこの二人に関しては純粋に心配している様子がよく分かった。
「無理だけはしてはいけませんよ。・・・ありがとうございます」
釘を刺しつつも、ふ、と柔らかくなった表情に二人がほうっと見ほれた。
「・・・」
ヒル魔は触れ損なった手を軽く握って開いてを繰り返し、それから小さく舌打ちする。
それに気づいたまもりが背後を振り返った。
「なんですか?」
「なんでもねぇ。とにかく、来週俺たちは休みだからな」
「・・・はあ」
少々不満そうな返事に肩をすくめ、ヒル魔はまだまもりに見ほれる二人を引きずるようにして執務室から立ち去った。


その週の仕事の量は、一気に集中したせいもあるだろうがかなりの量だった。
部下達の中にはまもりが心配したとおり徹夜した者もいたようだが、持ち前の体力とヒル魔の圧力により弱音は吐かなかった。
そうなると、まもりの方も生半可な姿勢では不味かろうと余計に気合いが入る。
最後の書類を閲覧し、きちんと決済印を押したまもりは、疲労から大きくため息をついた。
「・・・終わりました」
ひょい、とその前にカップが置かれる。紅茶だ。
差し出したのはヒル魔。手に取ればそれはミルクと蜂蜜の入ったミルクティ。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
彼自身は別に淹れたらしいコーヒーを啜っている。
自分で淹れられるのか、と思いつつミルクティに口をつける。
それはかなり甘く、まもり好みの味がした。
「私一人休むために、こんなに無茶な仕事しなくてもいいでしょうに」
普段通り過ごせばこんなにみんなして苦労する必要はなかったはずだ。
恨みがましい声に、ヒル魔は視線をまもりの決裁した書類に落とす。
彼の段階で終わる決裁は彼女よりも少ない。
彼は持ち前の要領の良さでさっさと終えたため、後はまもりのフォローに回っていた。
「メリハリは大事だ」
山積みになっていた書類を決裁済みの箱に入れて応接用のテーブルに積み上げる。
もう既に机は一杯になっている。これをこの後文書管理する後方部隊が中心になって片付けるのだ。
「凄い量」
「俺たちがまた出勤する頃には片付いてんだろ」
まもりはぐうっと手を組み、天を押すように伸び上がった。
「ああ、肩が凝りました」
とんとん、と肩を叩く彼女にヒル魔の声が掛かった。
「今日は早く寝ろよ。明日の朝、迎えに行くぞ」
「・・・はい?」
まもりはきょとん、とヒル魔を見た。ぱちぱちと瞬くその様子に、ヒル魔は口角を上げる。
「俺も休む、つったろ」
「それは聞いてましたけど、どうして私を迎えに来るんです?」
「一緒に出かけるからな」
「・・・え?」
まさか見張りというのは本気だったのか、とまもりは愕然と彼を見つめたが相変わらず彼は飄々としたままだった。



翌朝。まだ、日も昇りきっていない時分。
「・・・おはようございます」
寝癖で派手に跳ねた髪と寝間着姿のまま、寝ぼけ眼で顔を出したまもりを見て、ヒル魔は派手に舌打ちした。
「オハヨウゴザイマス。着替えろ」
「何故ですか」
「出かける、つったろ」
嫌だ、と言ってはみたがそれで引き下がるヒル魔ではない。
「これを着ろ」
押しつけられたのは青色のチュニックと薄いグレーのサブリナパンツ。
「どうしたんですか、これ」
「テメェのことだ、私服なんてろくなもん持ってねぇだろ」
「・・・そうですけど」
格好なんて頓着しないまもりは、服などもう何年も買ってない。
「そのままの格好じゃ移動できねぇ。いいからとっとと着替えろ。じゃねぇと俺が着せるぞ」
「着替えくらい自分で出来ます!」
んもう、とふくれっ面で着替えに向かったまもりにヒル魔は小さな舌打ちを零したが、まもりにその真意は伝わっていない。

<続>
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