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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ブルームーン(下)

+ + + + + + + + + +
ヒル魔はブドウの木の下、惜しがって見上げる狐の心情を思い浮かべる。
あれは手が届かない。
だからきっと酸っぱいに違いない。
手に入れても美味しくはないのだ―――
叶わないから美しい、とはそれと同じ。
美しいから叶わない、ということにして、自らを納得させるばかり。
実際に叶えばそれは美しくないのか。
こんなはずではなかったと嘆くばかりか。
違うだろう。
「欲しくてたまらないくせに、言い訳ばかり先に立つ」
欲しければ突き進めばいい。あらゆる手段を講じて、最大限の行動を起こせ。
可能性が0ではないのなら、足掻けば足掻くほどその目標は近づくのだから。
「結局は叶った方が断然いいだろーが」
小馬鹿にした口調に、まもりはふうん、と浮ついたような返事をして少し考える。
「・・・じゃあ、ヒル魔くんの叶わぬ恋、ってどういうの?」
「ア?」
「ツバメと王子様は叶わぬ恋だって、あり得ないって思うんでしょ?」
まもりは伝票を貼り付けたノートをぱたんと閉じて、続ける。
「あり得るのはどんな関係? ・・・―――」
そこでヒル魔は気づいた。まもりは今、例えば私が、という言葉を唇だけで刻んだのを。
例えば、まもりが。
絶対にあり得ない恋、というのならば。
「例えばテメェとなら、身近な連中で例えると―――」
まもりの顔が、微妙に、強ばる。
「ケルベロスかブタブロスだろ」
「・・・え」
まもりはきょとん、とした顔で瞬いた。
「あの二匹?」
外で今日も今日とて勢いよく校庭を走り回っていた二匹。
そりゃあないだろう。だって彼らはカワイイペットみたいなものだ。
「あり得ないわよ」
「だからそう言っただろ」
「他には? 部員のみんなとか、どぶろく先生とか、クラスメイトとか」
「可能性は0じゃねぇ」
ヒル魔は画面を作業画面に切り替えた。そろそろ取りかかって終わらせてしまおう。
そう思った彼は、まもりの顔も見ずに畳みかけた。
「完全にあり得ないのは、種が違うくらいだ。ドイツもコイツも、並べて考えりゃ男と女だろ」
「じゃあ、相手が異性であれば可能性は0ではないってこと?」
ヒル魔は一つ瞬いて、注釈をつけた。
「セクシャリティの考え方で一悶着あるだろうが、俺個人としては、だ」
勿論世界は広く、男でありながら男を愛する者もいるだろうし、女とて同じ。
ただヒル魔個人の性的な好みはノーマルであり、そういったところから一応の注釈をつけたのだ。
それだけのことだったのだけれど。
「じゃあ、ヒル魔くんは女であれば可能性は0じゃないってことなのね」
直後に続いた、文化とか造作とかの条件がまた別にあるんでしょうけど、という言葉に含みがあって。
ヒル魔はそれに引っかかりせっかく始めようとした作業をまたも止めて彼女を見た。
いい加減にしろ、と一言以上は言うつもりで。
けれど。
ほんのちょっと、ヒル魔は驚いた。
「・・・糞ユデダコ」
けれど彼女は頓着せずに、ヒル魔を見つめる。
さきほどまでとは違う、何かの決意を抱いたその顔。
「もう一つ、聞いてくれる?」
ヒル魔は何か妙な予感がしつつも条件をつけた。
「コーヒー淹れるならな」

妙に喉が、渇く。

***
れお様リクエスト『まもりは凄くヒル魔の事が好きなのに、鈍感で気付いてないヒル魔』でした。タイトルの『ブルームーン』というカクテルには『叶わぬ恋』という意味合いもあるそうです。楽しく書かせていただきました♪ありがとうございましたーw
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