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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ブルームーン(上)

(ヒルまも)
※リクエスト作品。


+ + + + + + + + + +
「叶わぬ恋って憧れない?」
聞いたヒル魔は、そう発言したまもりを半目になって見下ろした。
定位置の椅子に座ってパソコンを抱えた格好のヒル魔と、向かい合って伝票整理をしていたまもりの視線の高さは一緒。
つまり、ヒル魔はわざわざ後ろに仰け反って彼女を見たのだ。
「何、そのいかにもバカにした顔は」
「いかにもその通りだ」
アホか、と口の中で呟いてヒル魔は視線をパソコン画面に戻す。
「んもー! なんでよ!」
「叶わねぇ事に意識向けるほど暇なのか」
だったらさっさと手元の伝票をまとめろと内心呟いてヒル魔はキーボードを叩く。
練習メニューを、前回集めたデータと参照してより効率的に練り直す作業。
個々に合ったメニューを考えるのは、面倒だが面白い作業の一つ。
どちらかといえばじっくり腰を据えて考えたい彼に対し、まもりは更に言いつのる。
「叶わぬ恋だからこそ綺麗じゃない」
ヒル魔は無視を決め込み、ガムを一枚口に入れた。
本当ならコーヒーが欲しいところだが、うっとりと宙を見つめているような声音の彼女に所望する気も起きない。
このままでは作業もままならないと画面をインターネットに切り替える。
「ロミオとジュリエットとか、人魚姫とか、幸福な王子とか!」
ガムを噛みながら、作業をするフリをしてヒル魔は言われた話を即座に検索する。
「あのどうしようもなく惹かれるのに報われないところとか、それでも愛し合っちゃうところとか―――」
さすがにロミオとジュリエットと人魚姫は一般常識として知っているが、幸福な王子は初耳だ。
しかし物語が銅像となった王子とツバメの話だと判ると、ただでさえ面白い作業を中断させられたヒル魔の気分が一気に下がる。
くだらない。
まるでくだらない。
「んもう、聞いてるの?!」
「糞王子とツバメの恋愛なんてあってたまるか、糞!」
「あ、知ってるのね」
今調べた、とは言わずにヒル魔はぷう、とガムを膨らませた。
なぜだかツバメの形をした風船に、まもりは目を丸くする。
「ど、どうやってやるのそれ?!」
「サアネ」
ヒル魔はそれをぱちんと弾くように割ると、ふたたび口に納める。
「ねえ、素敵だと思わない? 叶わぬ恋」
いつにないほどしつこいまもりにヒル魔はピンと片眉を上げた。
「テメェのそれはブドウだろ」
「ブドウ?」
唐突な話題変換にまもりは目を瞬かせる。
「狐から見た酸っぱい奴だな」
「もしかして、イソップ童話?」
「おー」

<続>
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