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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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シラナイヒト(3)


+ + + + + + + + + +
再びパソコン教室からの帰路。
車の中でどうにもパソコンは好きになれない、とまもりは内心呟きながらテキストを捲っていた。
色々と便利なのはヒル魔を見ていて知っているが、だがやはり根っからのアナログ派なまもりにはパソコンは使いづらい。
手紙一枚にしてもパソコンで打ったものより、便せんに手書きの方が嬉しいとよく聞くのに、と。
今のところ自分に必要ないものだから余計にそう思うのかも知れない。
車がホテルへと滑り込んでいく。
運転手に礼を言い、ドアマンに挨拶していつものようにエレベーターへ向かう途中。
「姉崎様」
その声にまもりは視線を向けた。こないだのホテルマンではない。
スーツを纏った男性が二人、立っている。
あまりぱりっとしないというか、違和感のある二人に見覚えはなく、まもりは小首を傾げた。
「私に何か?」
「突然申し訳ありません。私、こういう者です」
差し出されたのは有名パソコンメーカーの社員であるという名刺。
「ヒル魔様からお声がかかりまして。どのようなスペックの機種がいいかとお聞きしましたところ、姉崎様のご意見を聞け、と。そこで突然で申し訳ないとは思ったのですが、ご挨拶も兼ねて来ました」
その微妙な敬語にまもりはますます違和感を募らせる。
いかにも使い慣れてないといった風情なのだ。
まもりの沈黙をどう受け取ったかは分からないが、もう一人の男が声を上げた。
「あ、あの。私たち実は営業職ではなくて、ですね。技師上がりなので、その、あまり説明が上手でないかもしれません」
そうなのか、と思いつつも違和感は払拭できない。
立ち止まる三人の姿は人目を引く。
いつぞやの青年ホテルマンがちらちらとこちらを伺っているのを気づきつつ、まもりは視線を二人に向けた。
「それで、今回はどういう目的でいらしたのですか?」
「パンフレットやご説明では分かりづらいと思ったので、こちらのホテルの一室をお借りしていくつか機種を用意しました」
ぜひお試し下さい、そう言われてまもりは頷き、エレベーターに乗る。
閉じる扉の向こうで、ホテルマンの視線がひどく心配そうで不安がこみ上げてきたが。
考えすぎた、とまもりは内心で打ち消した。

このホテルがいかに高級といえども、ランクはある。
まもりが降りた階はいつもの最上階とはほど遠い、中層だった。
おかしい。
まもりの本能が警鐘を鳴らす。
もし本当にヒル魔が手配させるなら、設置の手間を考えてあの最上階の部屋を用意するはずだ。
もしくは部屋に立ち入れない主義だとして、最上階に近い部屋を用意しないだろうか。
そしてなにより、パソコンに詳しい彼が立ち会わず、またそれをまもりに告げないなんてことが。
あるだろうか?
「姉崎様?」
まもりはぴたりと足を止めた。
そうして、男たちに構わず携帯電話を取り出す。
短縮に登録されているヒル魔の電話番号を押した、その途端。
「チッ!」
「やめろ!!」
男たちはひどく醜く顔をゆがめ、舌打ちしてまもりに腕を伸ばす。
やはり、という気持ちでいたためかまもりは存外冷静にその腕を避けた。
そのまま逃げ去ろうとするが。
「っんぐっ!!」
背後から伸びてきた腕が、まもりの口を覆う。その手には布。
「んー!!」
つん、と鼻を突く匂いから逃れられず、思い切りその布に染みこまされていた薬品を吸い込んでしまう。
意識はあっという間に混濁していく。
かすむ視界に見えたのは、落ちた携帯電話と、いつもと違う絨毯の模様だけだった。


<続>
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