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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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シラナイヒト(5)


+ + + + + + + + + +
「私どもの注意が足りず、このような事態に巻き込んでしまい・・・誠に申し訳ありませんでした」
唐突に青年が深々と頭を下げる。それにまもりは首を振った。
「いえ・・・。今回のことはちゃんと私が事前に彼に確認しなかったのが悪いんです。安請け合いする前に、ちゃんと電話していれば・・・」
そう言いながらも、まもりの脳裏にあの三宅が囁いた一言が引っかかる。
『恨むならヒル魔を恨めよ。アンタが邪魔だから好きにしろって俺に連絡寄越したんだからさ』
まさか。
あの写真も手紙も、何もかも彼の自作自演で、それに音を上げないまもりに焦れて、こんな手段に出たのだと、したら?
室内に着信音が響いた。
青年が一足先に気づき、床に転がったその電話を指さす。
「姉崎様のですか?」
「ええ、そうです」
確認してから持ち上げ、まもりに渡してくれる。
もしあの男たちの持ち物だとしたら迂闊に触れないという配慮だろう。
「・・・もしもし」
『どうした』
低い声は、いつもの彼のもの。
それに、堰を切ったように泣きたかった。
わめいて、なんで助けに来てくれなかったの、と言いたかった。
でも。
もし、あの三宅の言葉が本当だとしたら。
「・・・なんでも、ないわ。仕事の邪魔して、ごめんなさい」
そう固い声で言うと、まもりはふつりと通話を打ち切る。
心配そうにこちらを伺う青年に、まもりは無理に微笑んで洋服を持って来て貰えないかと頼んだ。


まもりはきつく縛られた跡を撫でて何度目とも知れないため息をついた。
今は紫に変色したそれは、一朝一夕で消えるとも思えない。
これをヒル魔に見られたら。
彼は、どういう反応をするのだろうか。
あのとき素直に言えばよかったのだろうか。でも、どうしても言えなかった。
悶々と悩むまもりの前に、影。
「・・・変な声で喋るな、とは思ったが」
冷たい、抑揚のない声。
まもりは恐る恐る顔を上げた。
「何があったんだ」
「痛っ・・・」
彼の手がまもりの腕を掴んだ。縛られた跡を直接強く握られ、まもりの眉が寄る。
すぐ気づいた彼は、僅かに力を抜いた。
掴んだままだが、気遣いのあるそのふれ方にまもりの瞳が潤む。
違う。彼は、あんなことを命じていない。
言葉よりも雄弁な行動に、まもりはようよう口を開いた。
「・・・三宅さんが・・・」
「三宅?」
ヒル魔の眉間に盛大に皺が寄る。
普段から表情は豊かだが、こんなにも恐ろしい形相になったのを初めて見たまもりは言葉を失う。
彼が何か口を開こうとした、その時。
まもりの携帯電話がメールの着信を告げた。
「何、かしら」
威圧感から逃れるように携帯電話を開いた彼女は、そのまま動きを止めた。
「どうした」
口ではそう尋ねつつも、ヒル魔はまもりが携帯電話を操作する前にその手から奪い取る。
そうして、表示された添付画像を見た瞬間、ヒル魔の顔も強ばる。
そこには、まもりが縛られ衣服を裂かれた時の写真があったのだ。
更にもう一枚、ベッドの側に佇む青年ホテルマンと、シーツを胸元で握るまもりの姿。
これでは、―――まるで、まもりが浮気したかのよう。
「・・・妖一さん・・・」
心配そうなまもりに答えず、ヒル魔は一瞬瞼を閉じ、それから彼女に視線を合わせる。
悪魔が笑ったら、きっとこういう顔になるのだろうと思わせるほどの形相、で。
怯えたまもりを捕らえ、そうして彼は内線電話を持ち上げ、どこぞへと掛ける。
ワンコールで出た相手にヒル魔は告げた。
「上がってこい。今すぐにだ」


<続>
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