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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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シラナイヒト(6)


+ + + + + + + + + +
ヒル魔からの呼び出しに、『彼女』は満面の笑みを浮かべてやってきた。
普段は客など注視しないドアマンからして思わず視線を向けてしまうほどの豊満な胸。
そこから続くウエストは細くくびれ、ヒップはきゅっと上がっている。
そんな魅惑的な身体を惜しげもなく晒すような、張り付くようなドレス。
流れる豊かな黒髪は綺麗に整えられ、ピンヒールを履きこなし、装飾品は全て高級ブランドという出で立ち。
おおよそ欠点など見あたらない整った顔をつんと澄まし、彼女はエレベーターに向かう。
「小笠原様、お待ちしておりました」
あの青年ホテルマンがすっと頭を下げる。
彼と共にエレベーターホールに乗り込んだ彼女は、その美しい唇をゆがめた。
「うまくいったわ」
それに青年は静かに頭を下げるに止まった。
彼女の名は、小笠原承子。
国内でも屈指の財閥の娘で、蝶よ花よと大事に育てられた生粋のお嬢様である。
彼女自身はまだ大学生だが、その類い希なる美貌と絶大な後ろ盾を武器に、将来有望な男性を探すことに躍起になっていた。
どうせ嫁ぐならとびきりいい男がいい、というのが彼女の持論で。
そこで彼女が目をつけたのが蛭魔妖一だった。
世間一般の悪い噂を隠れ蓑に、彼は驚異的な数字をたたき出す経営者として辣腕をふるっていた。
会社の経営もさることながら、彼自身が携わる広告プロジェクトは大がかりでそうして絶大な効果を上げていた。
それを知っていた彼女は以前から彼にアプローチしていたのだが、彼は承子など全く無視し、あろうことかその辺の女を拾い上げて婚約者だと宣った。
ひどい侮辱である、と彼女は憤慨したわけだ。
家柄も美貌も資産も若さもある、何一つ欠点のない自分を差し置いてそんな女を選ぶなんて、と。
けれどそれを面と向かって言うのも自ら敗北宣言するようで癪だ、と天井知らずのプライドでもってまんじりともしていなかったのだが。
拾った女とは目立った公表もなく、未だ婚約者止まりで結婚する様子もない。
となれば、あの女は単なる女避けという事実だろう。
だから彼女は一計を案じた。
単なる女避けなら、その意味をなさないようにしてたたき出せばいい、と。
彼に個人的な恨みを持つ男を捜し、人づてに鼻薬を嗅がせればあっさりと人手は集まった。
携帯に送られてきたあの女の画像に溜飲を下げたのは、つい先ほどの話だった。
本格的に痛めつけることは出来なかったが、傍らにいるこのホテルマンがもっといい写真を寄越した。
「後でお礼するわね」
やはり青年は静かに頭を下げただけだった。



意気揚々と案内された最上階。
そこにどっかりと座るヒル魔と、傍らのソファに同じく座るまもりと。
ヒル魔は不躾にじろじろと承子をなめ回すように見て、そうして口角を上げる。
けれどまもりの顔は蒼白で、承子に視線を向けようとすらしない。
その態度の差に、心中で承子は高笑いする。
「お招き下さり、ありがとうございます」
ちら、と承子がまもりを気にするように見ると、彼は手を振った。
「そいつは気にするな。テメェに聞きてぇことがあってな」
ヒル魔が立ち上がり、承子の顎を捕らえる。
「地獄に堕ちる覚悟はあるか?」
「それは、あなたと共に、ということですか?」
艶然と微笑んでみせれば、ヒル魔はにたりと笑う。
「そういうことであれば、喜んで。妖一様」
勝った。
そう内心で叫び、表面は崩さず笑顔でそう告げれば、ヒル魔はくるりときびすを返した。
「来い」
「どちらに?」
「違う部屋でヤッてやる」
その言葉に、まもりはびくりと身体を震わせ、承子を見つめる。
けれど承子はその視線にただ勝ち誇ったような笑みを浮かべてヒル魔の後を追った。
その背後に突き刺さる視線を、嫉妬と羨望からのものだと疑いもしないで。

<続>
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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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