旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
三個目のシュークリームを頬張りながら、まもりは雪光の話を聞いていた。
「彼が余所で働いていた僕を推薦してくれて、ここのポストに収まったんです」
通常、彼ほどの若さでこんなに大きなホテルの総支配人など務まらないだろう。
それが不思議で問いかけたら、そんな答えが返ってきた。
「もしかして、脅されてここの支配人になったんですか?」
ヒル魔の婚約者と言うことで気遣われているのかとも思って真相を更に問い詰めるが、彼は笑って手を振った。
「脅されたなんてとんでもない。元の仕事とは畑違いではありましたが、良い経験をさせてもらいました」
自らも紅茶のカップを傾け、雪光はにっこりと笑う。
「それまでは何のお仕事をされていたんですか?」
「ごく普通の会社の営業ですね。でも教員免許があったのでいずれは教員になるつもりでした」
「・・・随分、違いません?」
結果的にホテルマン。しかも総支配人。
けれど彼は笑う。
「僕はヒル魔さんにはご恩があって、彼からの頼み事があれば無条件で駆けつけようと心に決めていたんです」
そうして彼が携わったのがこのホテルだった。
当時このホテルは経営者が決して良くなく、これほどの立地と設備にも関わらず売り上げが伸びていなかった。
そこを買いたたいて手に入れたのがヒル魔だったのだが、彼は生憎と多忙でその改革まで全て手を掛けていられなかった。
その後の抜本的改革を彼に変わって行って、最終的にその総支配人になったのが雪光なのだ。
年若いながら落ち着いていて、更に底が知れないような不思議な空気はそのためか、とまもりは納得していた。
「ヒル魔さんは・・・そう、なんて言うか学生時代から人の本質を見抜くのがとても上手でしてね」
どこか懐かしむように雪光は語る。
「僕はスポーツ向きじゃないなんて思い込んでいたんですが、ひたむきな彼の行動に惹かれて共にアメフト部に打ち込みました」
「アメフトをなさってたんですか?!」
その細い体躯からは想像も付かない部活経験に彼自身も悪戯っぽく笑う。
「意外でしょう? でも、その時の経験が元で諦めない根性がついたんです」
学生時代からヒル魔の考えは時々ものすごく突飛で、常識で縛られた人間にはついて行けないことも多々あった。
けれどそれは長い目で見ていたり、角度を変えているだけなのだと知った雪光はなるべく彼と周囲の溝が出来ないように心を砕いていた。
ヒル魔はまさにそれを見ていて、このホテルの件の際に彼を抜擢したのだった。
「彼はとても誤解されやすい。見た目でもそうですし、行動でも言動でも。まあ、人であれば多かれ少なかれそういうところはありますよね」
もう一杯いかがです? と注がれたカップの紅茶はきれいな水色。行動の一つ一つにそつがない。
きっと彼はそうとは見せないが、ものすごく努力して苦労して今の立場にいるのだろうと思った。
彼から与えられたからではなく、彼の期待に応えたい、彼のためになりたい、と。
それはとても似ていた。
「まもりさんがヒル魔さんと婚約された時、僕は自分のことのように嬉しかった」
しみじみと、彼は話す。
「ああ、やっと彼を誤解せずに側にいてあげられる人ができたんだ、とね」
まもりは頬を染めて手を振る。
「そ、そんな・・・私、そんな風に言われるほど大層な人間じゃないんですけど」
それを聞いて雪光はますます嬉しそうに相好を崩した。
「まもりさんは、ヒル魔さんの本質を見てくれました。それに、婚約者の立場にかまけて手を抜いたりしないでしょう?」
彼は音を立てずにカップをソーサーに戻した。
暗に、まもりとあの身の程知らずの女と比較して。
「ヒル魔さんは、サボらず努力する人が大好きなんですよ」
<続>
「彼が余所で働いていた僕を推薦してくれて、ここのポストに収まったんです」
通常、彼ほどの若さでこんなに大きなホテルの総支配人など務まらないだろう。
それが不思議で問いかけたら、そんな答えが返ってきた。
「もしかして、脅されてここの支配人になったんですか?」
ヒル魔の婚約者と言うことで気遣われているのかとも思って真相を更に問い詰めるが、彼は笑って手を振った。
「脅されたなんてとんでもない。元の仕事とは畑違いではありましたが、良い経験をさせてもらいました」
自らも紅茶のカップを傾け、雪光はにっこりと笑う。
「それまでは何のお仕事をされていたんですか?」
「ごく普通の会社の営業ですね。でも教員免許があったのでいずれは教員になるつもりでした」
「・・・随分、違いません?」
結果的にホテルマン。しかも総支配人。
けれど彼は笑う。
「僕はヒル魔さんにはご恩があって、彼からの頼み事があれば無条件で駆けつけようと心に決めていたんです」
そうして彼が携わったのがこのホテルだった。
当時このホテルは経営者が決して良くなく、これほどの立地と設備にも関わらず売り上げが伸びていなかった。
そこを買いたたいて手に入れたのがヒル魔だったのだが、彼は生憎と多忙でその改革まで全て手を掛けていられなかった。
その後の抜本的改革を彼に変わって行って、最終的にその総支配人になったのが雪光なのだ。
年若いながら落ち着いていて、更に底が知れないような不思議な空気はそのためか、とまもりは納得していた。
「ヒル魔さんは・・・そう、なんて言うか学生時代から人の本質を見抜くのがとても上手でしてね」
どこか懐かしむように雪光は語る。
「僕はスポーツ向きじゃないなんて思い込んでいたんですが、ひたむきな彼の行動に惹かれて共にアメフト部に打ち込みました」
「アメフトをなさってたんですか?!」
その細い体躯からは想像も付かない部活経験に彼自身も悪戯っぽく笑う。
「意外でしょう? でも、その時の経験が元で諦めない根性がついたんです」
学生時代からヒル魔の考えは時々ものすごく突飛で、常識で縛られた人間にはついて行けないことも多々あった。
けれどそれは長い目で見ていたり、角度を変えているだけなのだと知った雪光はなるべく彼と周囲の溝が出来ないように心を砕いていた。
ヒル魔はまさにそれを見ていて、このホテルの件の際に彼を抜擢したのだった。
「彼はとても誤解されやすい。見た目でもそうですし、行動でも言動でも。まあ、人であれば多かれ少なかれそういうところはありますよね」
もう一杯いかがです? と注がれたカップの紅茶はきれいな水色。行動の一つ一つにそつがない。
きっと彼はそうとは見せないが、ものすごく努力して苦労して今の立場にいるのだろうと思った。
彼から与えられたからではなく、彼の期待に応えたい、彼のためになりたい、と。
それはとても似ていた。
「まもりさんがヒル魔さんと婚約された時、僕は自分のことのように嬉しかった」
しみじみと、彼は話す。
「ああ、やっと彼を誤解せずに側にいてあげられる人ができたんだ、とね」
まもりは頬を染めて手を振る。
「そ、そんな・・・私、そんな風に言われるほど大層な人間じゃないんですけど」
それを聞いて雪光はますます嬉しそうに相好を崩した。
「まもりさんは、ヒル魔さんの本質を見てくれました。それに、婚約者の立場にかまけて手を抜いたりしないでしょう?」
彼は音を立てずにカップをソーサーに戻した。
暗に、まもりとあの身の程知らずの女と比較して。
「ヒル魔さんは、サボらず努力する人が大好きなんですよ」
<続>
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HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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