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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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カタライザー

(ヒルまも)



+ + + + + + + + + +
今日の授業を全て終えて、まもりは教科書を揃えて鞄に入れる。
置き勉なんて単語はまもりの中にないのだ。
そこにクラスメイトから声がかかる。
「姉崎さん、今日も部活?」
「うん」
まもりは鞄の他に、ロッカーから分厚いファイルを取り出して帰り支度を整える。
ファイルは勿論、アメフトの資料だ。
「毎日大変よね」
「そんなことないわよ」
にっこりと微笑んで、まもりは応じる。
そこに他のクラスメイトも混じった。
「運動部のマネージャーって大概複数じゃない? 姉崎さんは一人だしさあ」
「そういえばそうね」
本人は至って平然としているが、授業の合間の休憩時間などにまでデータ処理やら分析やらをやっている。
覗き込んでも何のことやらちんぷんかんぷんなその内容を、まもりは清書して積み上げていくのだ。
素人が見ていても相当な仕事量だと思われた。
「あの文字、ヒル魔のなんでしょ? 私じゃ到底読めないよ」
「文字が汚いのはちょっと困るけど、でも慣れたら平気だって」
言いたいことを推測すれば自ずと知れるその内容。
「大体部長がヒル魔ってあたりで理不尽なことが起きそうだけど」
「存在自体が理不尽じゃない」
「不当に言いがかりつけられたりしない?」
「それは・・・」
まもりが声を上げる前に。
「何くっちゃべってんだ、糞マネ」
「そんな名前じゃありません!」
反射的になのだろう、まもりが即切り返す。振り返れば鞄を手にしたヒル魔。
飛び出した銃器の怪しさに、話を振ったクラスメイトたちは汗をかく。
「おい糞アマども」
「そんな言い方しちゃダメ!」
食ってかかるまもりにちらりと視線を寄越し、彼は口を開く。
「理不尽だったり不当に言いがかりつけるのは糞マネの方だ」
「なっ!」
「やれ糞甘臭ェ毒物喰えだのブラックコーヒーは飲み物じゃねぇだの」
「甘い物は毒物じゃないわよ! 砂糖もミルクもなしでコーヒー飲める悪魔の味覚なんて信じられないの!」
「そりゃ単に個人の嗜好の問題だっつってんだろ。おら行くぞ」
きゃんきゃん吠えるまもりの手からファイルを取り上げ、彼はさっさと廊下へ出てしまう。
「ああもう! ごめんね。お先に!」
「あ、ああ、うん」
「頑張ってね」
「うん!」
ぱっと花が綻ぶような笑みを浮かべてまもりは慌ただしく教室を去った。
「ホント、楽しそうだね」
「それはどっちが?」
クラスメイトは顔を見合わせる。
二人は窓からグラウンドを見下ろした。
土煙を上げて走る一年生がいる。派手な音を立ててマシンにぶつかる二年生がいる。
「楽しいよね、きっと」
去年までは二人しかいなかったアメフト部は、今や十人を超えて全国大会へ駒を進めるまでになっていた。しばらく見ていると、そこにヒル魔とまもりがやってきた。
途端にグラウンドの雰囲気が変わるのが分かる。
「姉崎さんてさ、初めて見たときに、『こんな美人がいるんだ!』って思ったんだよね」
「ああ、それは分かる」
「成績も運動神経もよくてさ、料理も出来るし裁縫も得意で、まるで出来ないことなんてなくて」
「うんうん」
「で、あんまりにも完璧すぎて私、あんまり話せなかったんだよ」
まるで女神様みたいで、と。
もう一人も同意する。
「うん、なんか分かる」
「でも・・・」
彼女は一回言葉を切った。
ヒル魔がマシンガンを撃ち、逃げ惑う部員たちとそれを止めようとするまもりとを前に笑っている。
「ああやってヒル魔がちょっかい出すと、姉崎さんが段々人間になってきた気がするんだよね」
「それは、ヒル魔もじゃない?」
悪魔で同じ人間であるということを忘れてしまいそうなあの男。
誰もが彼が近くを歩くだけで緊張し、ろくな会話にならない。
彼の血はきっと赤くないだろうと思ってたくらいだ。
先ほどのようにからかいを含んでいるとは言え、雑談に混じってくるとは思ってもいなかった。
「そうだね」
「あの二人、付き合ったりしてるのかな」
「え?! なんでそうなる?!」
「え、だって。二人でいるときが一番楽しそうに見えるな、って思っただけなんだけど」
「・・・すごいこと考えるんだね」
だって泥門の天使と悪魔の、あの二人だよ? という言葉に。
「あの二人だって人間だって今言ったばかりじゃない」
「そう、だけどさあ。でもなあ」
納得しかねるクラスメイトを余所に、彼女は続けた。
「二人とも悩みなんてなさそうで、他人に助けてもらうことなんてなさそうだけど」
でも、それはあり得ない。
二人共が、人間なのだから。
「そう思われがちな二人だから、互いに分かることもありそうじゃない?」
「うーん・・・」
唸るクラスメイトの携帯電話が着信を告げる。
「おっと、失礼」
着信の番号に覚えはないが、友達が番号を変更したのかもしれないと、通話ボタンを押す。
「はいもしもし?」
『随分と楽しそうデスネ』
「!?」
途端に硬直するクラスメイトに、彼女は小首を傾げる。
『そこの糞アマに、余計な分析する間があったら隣の糞野郎の頭の中考えるように言え』
ばっとグラウンドに視線を向ければ、ヒル魔が携帯電話を片手にこちらを見上げていた。
『平穏無事な幸せだったら、ただ眠って夢見てりゃ済む話なんだよ』
こんなに離れているのに、全てを見通す眸で悪魔は笑った。
『本当に欲しいモンだったら、起きて動け』
そうして、唐突に通話は途切れる。
「どうしたの?」
「・・・えっと」
どこで聞きつけたのだろうか。
どこに盗聴器が仕掛けられているのだろうか。
どうやって自分の携帯電話の番号を知ったのか。
色々考えたけれど、あの男を問い詰めたところで真っ当な答えは返ってこない。
それよりも。
目の前でまっすぐにこちらを見上げる瞳にどんな風に自分が映っているのか、聞きたいと思った。
たった今、この、彼女に。

「ヒル魔くん、どこに電話してたの?」
「奴隷候補」
「人を脅迫しちゃダメよ!」
きゃんきゃんと吠えるまもりから軽い足取りで逃げつつ、教室をちらりと見上げる。
ああ、随分お節介になったもんだ、と背後の女の関与を苦々しく思おうとするのだけれど。
自然と上がる口角は抑えようもなかった。


***
ヒル魔さんとまもりちゃんは互いに影響されて徐々に周囲に打ち解けていけばいいと思ってます。
それをたまーにいる勘の良い子たちに見られてほっこりされているといい。
でもそれだけでは飽きたらずやっぱりヒル魔さんには一枚上手でいて欲しいと思うわけです。
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