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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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プシューケー(2)



+ + + + + + + + + +
麻黄中学校の教室は、朝から賑々しい。
「うぉーっす!」
「おはよう、蛭魔君!」
「おはよう」
掛けられる声に笑顔で応じる護は自らの席に着席する。
その手には。
「うわ! 相変わらず凄い量の手紙だな」
可愛らしい封筒に包まれた手紙がどっさり。
いわゆるラブレターだ。
「なあなあ、誰から来てるんだ?」
「教えろよ」
けれど護は笑って答えず、それら全てを鞄の中に放り込む。
それにクラスメイトは揃って落胆の表情を浮かべた。
この鞄がくせ者で、持ち主以外が触れると物凄い警報音を鳴らすのだ。
今のところ誰一人その鞄の中身を見たことがない。
ということは、その相手は護以外知り得ないということだ。
「ケチー」
ぶーぶーと文句を言う、主に体育会系の男子に護は肩をすくめる。
「僕宛に書いてくれた文章をどうして他人に見せると思うの?」
相手にも悪いし、気分が良いものじゃないでしょうと諭されて。
「まぁったく! さすが風紀委員様だよな」
「来年の生徒会長候補でもあるし? ホント護って何でも出来るよなー」
それにも護はただ笑って何も言わなかった。

昼休み。
給食を食べ終えて護は鞄を手に屋上へと上がった。
立入禁止区域だが、彼の行動を咎める者はいない。
給水塔の上に上ると、早速先ほど渡された手紙に全て目を通す。
「ふーん」
その中から現在の家庭状況から、いずれ将来的にこれをネタに使えるという相手の分をファイリングする。
青春の一頁。セピア色の思い出。甘酸っぱい恋の記憶。
なんて酔って言っている時に提示されたら間違いなく羞恥心で死ねるだろう文字の羅列に護は眉一つ動かさず作業を終えた。
次いで護の審美眼をクリアした女生徒の手紙を取り出す。
そこには携帯電話の番号とメルアドが入っている。
最後に、ラブレターに紛れ込んでいた脅迫状もどきの筆跡と、データベースをチェックする。
それ以外の手紙の情報はラブレターを寄越した相手、という割振をしてデータベースに更新をかける。
データベースと照らし合わせて、彼は口角を上げる。
それは父親そっくりの悪魔じみた笑みで。
護を呼び出す内容はなかったのでこの日はこれで終わりである。
「おしまい、と」
護はぐっと伸びをして、本を取り出す。
こうやって予鈴が鳴るまでの間、ここで読書するのがお決まりのパターンだった。


学校の授業が終わると、護はアメフト部に向かう。
ここでの彼の役割は主務である。
プレーヤーとして活躍しないか、という美佳の言葉に首を振り、彼は主務を続けている。
剣道を続ける上ではやむなし、と顧問の了解を得て週のうち平均して四日ほどしか顔を出さない。
けれどその的確な分析と類い希なる情報収集能力、更に『ヒル魔』の名も影響し彼は部活内でも一目置かれている。
この日は練習の後、ミーティングで護から発表があった。
「次の日曜、練習試合を設定しました。相手は恋ヶ浜大学付属中学校です」
部室内が騒然とする。日頃の練習の成果を発揮できる練習試合。
相手の勉強より部活より恋愛を重視するその校風は中学校から健在で、強さはさほどでもない。
「部員は全員彼女持ちなので、わびしい気持ちになること請け合いです」
護は飄々と補足した。途端。
「なんでそんな相手選ぶんだよ!」
「護はモテるから関係ねぇだろうけど、俺たちさびしいじゃねぇか!!」
ぎゃーぎゃーと騒ぐ部員たちにも表情を変えず、護は続ける。
「だってその方がやる気出るでしょ? そんなに強くない相手っていうなら、狙ってる子連れて来ればいいところ見せられますよ」
「う、確かに」
「誘えば来る、かな?」
「でも護がいるし・・・」
全員がちらりと護を見る。この学校一モテるだろう彼。
モテることをひけらかしもしないが、隠しもしないその様子。
それなのに誰一人意中の相手というのを知らない。
彼がグラウンドにいるだけで、女子生徒の興味がそちらに向いてしまうのでは、と危惧したのだが。
「僕が試合に出ることはないんですから、心配ないんじゃないですか?」
それとも、試合中ベンチにいるだけの僕より活躍出来ないとでも?
そうにっこりと笑いながら煽られ、全員の目の色が変わる。
「・・・よし! 試合勝つぞ!」
「そんでもって彼女ゲット-!!」
おー!! と騒ぐ面々を眺めながら、単純だなあとほくそ笑む護の携帯電話が震える。
その着信にちらりと目をやり、護はそっと部員たちから死角に当たる場所に移動した。


<続>
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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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