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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ふしぎなポケット

(ヒルまも)


+ + + + + + + + + +
まもりは蛭魔の手から出てくるカードを半ば呆れた気持ちで見ていた。
一体いつもどこに持ってるのかしら、と呆れたくなるほどどこからともなく出てくるカード。
それはプレイカードだったりトランプだったりと様々だが、試合の合間にベンチに戻ることなく取り出すそれには例外なく毎回驚かされていた。

「で、どうなの」
パソコンから顔を上げて、ヒル魔はまもりを見る。
「ナニガ」
部活終了後、身支度を調え部員全員が帰るまで待ち、二人きりになったと思った途端。
まもりはヒル魔に詰め寄った。
「ヒル魔くんはいつもどこにカード持ってるの? 試合中とかにもすぐ出すじゃない」
「企業秘密」
ふん、とそう短く言い放ってヒル魔は再び手元の作業に戻ろうとするが。
「んもう! あのね、それを怒りたい訳じゃないのよ?」
お願いがあって、という一言にヒル魔は動きを止めて再びまもりを見た。
それは言葉にせずとも続きを話せ、という無言の催促。
「実は手品を覚えたくて」
「ホー?」
ぴん、とヒル魔は眉を上げる。
「糞生真面目風紀委員様がどういう風の吹き回しデスカネ」
「今度うちの母がやる料理教室で旅行があるのね」
まもりが言うには、彼女の母とその教室に通う生徒有志で一泊の旅行をすることになったとか。
「その時丁度部活も休みだし、私も一緒に行こうと思ったんだけど・・・」
そこでやる宴会で、一つ余興があれば披露できないかしら、と母に持ちかけられたのだという。
「無難にカラオケとかでもいいんだけど、年齢層が幅広いし・・・手品だったらみんなに楽しんで貰えるんじゃないかなって思って」
「ホホー」
ヒル魔はパソコンを閉じた。
これは教えて貰えるのか、とまもりの顔が明るくなる。
けれど彼はにやりと笑って言うのだ。
「俺がカードしまってるのは、単に胸ポケットだ」
「え・・・だって、ユニフォームの時は違うでしょ?」
ユニフォームにポケットは存在しないから、しまえるはずがない。
ところが、ヒル魔はにやりと笑うのだ。
「俺の胸ポケットは特別製でなァ。俺が欲しい物が何でも入ってる」
「え?」
まもりの目の前で、ヒル魔が胸ポケットに手を突っ込む。
そうして、出てきたのは明らかにそのスペースには収まるはずがない・・・銃。
しかもライフル。
「な、なんで?! 今、どこから出したの!?」
「だから胸ポケット」
ヒル魔が手を突っ込むと、今度はケルベロスのおやつ、ほねっこが丸々一袋出てきた。
「ええ?!」
その他にもひょいひょいとヒル魔の胸ポケットから物が出てくる。
あからさまに入りきらない量のものが、どっさりとカジノテーブルの上に山積みになった。
「どうなってるの?!」
目を白黒させるまもりにヒル魔は口角を上げる。
「特別製だ、っつったろ」
「それにしたって・・・信じられない」
「なら、見るか?」
ヒル魔の言葉にまもりは視線を上げた。
いつものように人を食ったような顔で彼は笑っている。
「おら」
ヒル魔がぴらりと上着を捲る。けれど何の変哲もない。
「・・・見ても分からない。ねえ、触ってもいい?」
そう問えば、ヒル魔はちょいちょいとまもりを手招いた。
一体どうなってるのかしら、と好奇心に後押しされて。
まもりはヒル魔の胸ポケットに恐る恐る手を入れる。
二人の距離が縮まり、ヒル魔の顎にまもりの髪が触れた。
と。
「!!」
ヒル魔の腕がまもりを捕らえた。
「な、何?!」
抱きしめられる格好にまもりは慌てるが、ヒル魔は楽しげに笑うばかり。
「一体何なの?! 離してよ!」
「オヤ自分から手ェ突っ込んでおいて随分な言い草デスネ」
「・・・っ」
まもりが赤くなって手を引こうとしたが。
それよりも先に、ヒル魔の唇がまもりの旋毛に触れた。
「なっ、なっ」
焦りにぱくぱくと口を開閉させるだけになったまもりの頭上から、笑みを含んだ低い声。
「たった今言ったじゃねぇか」
「ええ!? 何、・・・」
不意に言葉が途切れる。
まもりの手はタイミングを逃し、ヒル魔の胸ポケットに入ったまま。
そう、確実に、そこに入っている。
ケケケ、と笑うのは悪魔の声。
「俺が欲しい物が何でも入ってる、ってなァ」


***
ヒル魔さん、まもりちゃんの捕獲成功。
時々天然でまもりちゃんは凄くヒル魔さんに近い位置にいればいいと思う。
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