旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
今年の10月31日は土曜日、学校はお休み。
けれど部活はいつも通りある。
まもりは普段持って行くのとは違う、大きなトートバッグいっぱいにオレンジ色のクッキーを詰め込んで家を出た。
そう、今日は。
まもりは普段よりゆっくりめに部室へと向かった。
今日の練習開始自体、いつもより遅い時間帯。
それでも普段ならもっと早く部室に入って準備をするのだが、今日は違うのだ。
『とりっく・おあ・とりーと!!』
部室の扉を開いた途端のこの声にまもりの顔も綻ぶ。
中にはいつもの面々が、いつもとは違う格好で待ち構えていた。
「いたずらは勘弁してね。ちゃんとお菓子をあげるから」
途端、口々に皆がはしゃぎ出す。
魔女の格好をした鈴音が箒を手にうきうきと駆け寄ってきた。
「やったー、まも姐のお菓子! ねえねえ、今日は何?」
「今日のはパンプキンクッキーよ」
「わあ! ちゃんとカボチャの顔になってる!」
「おーっ、すげぇっ! これ手作りっすか!?」
三兄弟は揃って狼男の格好をしている。同じ耳やしっぽをつけていてもそれぞれどことなく違うのがまた面白い。
「勿論!」
「ままままもりさんの手作りムキャァアア!!」
「うわあ、美味しそうだねぇ!」
モン太はキングコング、栗田と小結はクマの着ぐるみ。
それぞれのキャラを生かした仮装は鈴音の発案だろう、どれもとてもよく似合っていた。
皆にそれぞれお菓子が行き渡る頃を見計らったのか、ヒル魔がじろりと部員を睨め付ける。
「テメェら、時間だ! さっさと部活の準備始めろ!」
「ははははぃいい!!」
「すぐ着替えMAX!!」
部員たちはまもりからのクッキーを握りしめたままロッカールームへ向かう。
「んもう、そんな言い方しなくったっていいじゃない」
「あのままだったら収集つかねぇだろうが」
ヒル魔はふん、と鼻を鳴らすと纏っていた漆黒のマントの紐を解こうとする。
「ヒル魔くんも仮装してくれたのね。ドラキュラ?」
賑やかな面々の影になっていて気づかなかったが、彼も一応仮装していたようだった。
とはいえ、いつもの黒の上下に加えてマントを纏うだけだったのだが。
「糞チアがこれだけはって譲らねぇんだよ」
嫌そうな顔をしていても、彼女にはどうにも甘いところのある彼にまもりはこっそりと笑う。
彼がなんだかんだ言って仲間を大切にしていて、くだらないと吐き捨てそうなことにも付き合ってくれるのが純粋に嬉しい。
「あ、ヒル魔くんもいる? クッキー」
「俺に毒物を寄越すな」
「んもう、またそんな言い方する!」
そう言いつつも、どうせそういう反応だろうと思っていたので。
まもりは口先だけで文句を言うだけだ。
と。
未だマントは纏ったまま、ヒル魔が立ち上がった。
「せっかくこんなモンまで着させられたからなァ」
「着させられたから、何?」
何か企んでいることは予想できたので、まもりは小首を傾げて見上げる。
ヒル魔はすっと手を差し出した。
「trick or trick?」
「・・・は? なにそれ、どっちを選んでもいたずらされる、ってこと?!」
「ご名答。俺は糞甘臭ェ菓子なんざ要らねぇからな」
ケケケ、と笑いながら伸ばされる腕を避けて。
まもりは透明な小袋に入れておいたものをさっと取り出した。
「ア?」
「お菓子じゃないけど、ヒル魔くんにはこれがぴったりだと思って」
予想外の物の登場にヒル魔は眉を寄せ、けれどそれを受け取った。
黒く、堅く冷たいそれ。
見当が付いたヒル魔は口角を上げる。
「今時よく見つけたもんだ」
「あるところにはあるのよ」
でも苦労したわ、そう笑うまもりをヒル魔は不意に引き寄せて。
「・・・っ!」
その首筋に唇を触れさせ、牙を。
ちくりとした痛みに、まもりの身体が強ばる。
「ちょ・・・っ、何、するの!?」
すぐに身体を解放され、まもりはその場にへたり込んだ。
「これは菓子でもねぇし、そもそも俺は強請ってねぇからなァ」
イタズラは当然だろう、と飄々と言い放つ彼の手には黒光りする石が一つ。
「これを俺に寄越したんなら、テメェも悪魔だってことだ、姉崎まもり」
そう笑って、腰を抜かしたまもりを置き去りにヒル魔もロッカールームへと消えた。
それは轟々と燃え盛る地獄の石炭。
現世にちらちらと種火の如く光る、悪魔のもたらした不思議な光。
***
せっかくだからハロウィンにちなんだ話を書こうと思ったんです。
でもまもりちゃんがお菓子を用意しようがしまいが結局ヒル魔さんにイタズラ(いろんな意味で)されるという定番は避けようと思ったんです。ハロウィンについて調べてみて、Will o' the wispの記載を見つけて、おおこれは! と思ったのに。やっぱりイタズラしやがった・・・。
蛭魔妖一め! そんなにまもりちゃんが好きか!(笑)
けれど部活はいつも通りある。
まもりは普段持って行くのとは違う、大きなトートバッグいっぱいにオレンジ色のクッキーを詰め込んで家を出た。
そう、今日は。
まもりは普段よりゆっくりめに部室へと向かった。
今日の練習開始自体、いつもより遅い時間帯。
それでも普段ならもっと早く部室に入って準備をするのだが、今日は違うのだ。
『とりっく・おあ・とりーと!!』
部室の扉を開いた途端のこの声にまもりの顔も綻ぶ。
中にはいつもの面々が、いつもとは違う格好で待ち構えていた。
「いたずらは勘弁してね。ちゃんとお菓子をあげるから」
途端、口々に皆がはしゃぎ出す。
魔女の格好をした鈴音が箒を手にうきうきと駆け寄ってきた。
「やったー、まも姐のお菓子! ねえねえ、今日は何?」
「今日のはパンプキンクッキーよ」
「わあ! ちゃんとカボチャの顔になってる!」
「おーっ、すげぇっ! これ手作りっすか!?」
三兄弟は揃って狼男の格好をしている。同じ耳やしっぽをつけていてもそれぞれどことなく違うのがまた面白い。
「勿論!」
「ままままもりさんの手作りムキャァアア!!」
「うわあ、美味しそうだねぇ!」
モン太はキングコング、栗田と小結はクマの着ぐるみ。
それぞれのキャラを生かした仮装は鈴音の発案だろう、どれもとてもよく似合っていた。
皆にそれぞれお菓子が行き渡る頃を見計らったのか、ヒル魔がじろりと部員を睨め付ける。
「テメェら、時間だ! さっさと部活の準備始めろ!」
「ははははぃいい!!」
「すぐ着替えMAX!!」
部員たちはまもりからのクッキーを握りしめたままロッカールームへ向かう。
「んもう、そんな言い方しなくったっていいじゃない」
「あのままだったら収集つかねぇだろうが」
ヒル魔はふん、と鼻を鳴らすと纏っていた漆黒のマントの紐を解こうとする。
「ヒル魔くんも仮装してくれたのね。ドラキュラ?」
賑やかな面々の影になっていて気づかなかったが、彼も一応仮装していたようだった。
とはいえ、いつもの黒の上下に加えてマントを纏うだけだったのだが。
「糞チアがこれだけはって譲らねぇんだよ」
嫌そうな顔をしていても、彼女にはどうにも甘いところのある彼にまもりはこっそりと笑う。
彼がなんだかんだ言って仲間を大切にしていて、くだらないと吐き捨てそうなことにも付き合ってくれるのが純粋に嬉しい。
「あ、ヒル魔くんもいる? クッキー」
「俺に毒物を寄越すな」
「んもう、またそんな言い方する!」
そう言いつつも、どうせそういう反応だろうと思っていたので。
まもりは口先だけで文句を言うだけだ。
と。
未だマントは纏ったまま、ヒル魔が立ち上がった。
「せっかくこんなモンまで着させられたからなァ」
「着させられたから、何?」
何か企んでいることは予想できたので、まもりは小首を傾げて見上げる。
ヒル魔はすっと手を差し出した。
「trick or trick?」
「・・・は? なにそれ、どっちを選んでもいたずらされる、ってこと?!」
「ご名答。俺は糞甘臭ェ菓子なんざ要らねぇからな」
ケケケ、と笑いながら伸ばされる腕を避けて。
まもりは透明な小袋に入れておいたものをさっと取り出した。
「ア?」
「お菓子じゃないけど、ヒル魔くんにはこれがぴったりだと思って」
予想外の物の登場にヒル魔は眉を寄せ、けれどそれを受け取った。
黒く、堅く冷たいそれ。
見当が付いたヒル魔は口角を上げる。
「今時よく見つけたもんだ」
「あるところにはあるのよ」
でも苦労したわ、そう笑うまもりをヒル魔は不意に引き寄せて。
「・・・っ!」
その首筋に唇を触れさせ、牙を。
ちくりとした痛みに、まもりの身体が強ばる。
「ちょ・・・っ、何、するの!?」
すぐに身体を解放され、まもりはその場にへたり込んだ。
「これは菓子でもねぇし、そもそも俺は強請ってねぇからなァ」
イタズラは当然だろう、と飄々と言い放つ彼の手には黒光りする石が一つ。
「これを俺に寄越したんなら、テメェも悪魔だってことだ、姉崎まもり」
そう笑って、腰を抜かしたまもりを置き去りにヒル魔もロッカールームへと消えた。
それは轟々と燃え盛る地獄の石炭。
現世にちらちらと種火の如く光る、悪魔のもたらした不思議な光。
***
せっかくだからハロウィンにちなんだ話を書こうと思ったんです。
でもまもりちゃんがお菓子を用意しようがしまいが結局ヒル魔さんにイタズラ(いろんな意味で)されるという定番は避けようと思ったんです。ハロウィンについて調べてみて、Will o' the wispの記載を見つけて、おおこれは! と思ったのに。やっぱりイタズラしやがった・・・。
蛭魔妖一め! そんなにまもりちゃんが好きか!(笑)
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HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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