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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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誘惑の蜘蛛(2)



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「・・・最初からこのつもりだったの?」
「サアネ」
口ではそういうが、彼が最初からまもりを捕らえて隣に据えることが決定事項だったのだ。間違いない。
「下ろして」
「これにサインするならな」
見せられたのは入部届。それにまもりはふいっと顔をそらした。
「どっちにしろテメェに他のサークル勧誘は一切ねぇぞ」
「な!」
「バイトも出来るかなァ~?」
ヒル魔がその気になればまもりの行動をことごとく潰すのなど簡単だろう。
「元チームメイトを脅迫するなんて!」
「元じゃねぇ。今もだ」
ヒル魔はさらりとそう口にする。
そうして目を見開くまもりに向かってにやりと口角を上げた。
「テメェが必要だ」
「・・・っ」
目を見開き、まもりは硬直した。
なにをあっさりととんでもないことを口に出すのだ、この男は。
「みすみす他所にやるつもりなんざねぇ」
「な、に・・・」
「テメェが望む望まざるに関わらずだ」
彼の眸は真剣だった。それがまもりを追い詰める。容赦なく。
「わ、たし・・・生活だって、苦しい・・・」
両親に無理を言って出てきた手前、生活費のことで迷惑をかけたくない。
だからバイトは必須だし、バイトするならサークルならともかく部活なんて出来ない。
「金が要るって?」
「そう」
ヒル魔はまもりをじっと見て、ぱちりと瞬きをした。
その一瞬だけでどれだけのことが計算されたのか、正直恐ろしい。
「ハウスキーパー」
「・・・え?」
ヒル魔の口から出てきた言葉に、まもりは一瞬反応が遅れた。
「テメェの得意分野だろ、家事一切。俺の身の回りのことやりやがれ」
「ええ!? 一体なんで!?」
「バイト代出してやる」
「えええー!?」
「じゃあ話も纏まったところで行きマスカネ」
「纏まってないし! や、ちょっと、どこ行くの!?」
「ア? 大学に決まってんだろ糞マネ」
それとも違うところに行きたかったのか、などと問われ。
まもりは真っ赤な顔でヒル魔の肩を力任せに叩いた。


そうして。
入学式と新入生のオリエンテーションが終わった途端、まもりはヒル魔に文字通り浚われて。
死んでも行かないと叫んだアメフト部部室に連れ込まれ、結局抵抗も空しく入部させられてしまったのだった。
がっくりと落ち込むまもりに、他の部員やマネージャーたちは不思議そうに首を傾げたが。
「とうとう観念したか」
「させたのはどこの誰よ! 
音もなく現れた悪魔ことヒル魔と、その発言に対する切り返しに驚く。
「従順に働けばいいだけの話だろ」
「横暴!」
ヒル魔は入学前からアメフト部の練習に参加していて、その横暴さと一般人にはあり得ない夥しい量の銃器の扱いととんでもない情報網の存在とで既にこの部活内のみならず校内で知らないものなどない状況になっていた。
その相手にこの対応、この子は只者ではない、と皆注目する。
「姉崎さん、ヒル魔とは知り合いなの?」
「知らないですこんな人!」
「オヤオヤ冷たい。俺とアナタの仲じゃないデスカ」
「どんな仲よ!!」
夫婦漫才か、という会話にこれは腐れ縁に近い仲なのだろうと皆推測する。
そしてそれは間違っていないようで。
赤毛を揺らして入ってきた男はまもりを見て動きを止めた。
「フー・・・。姉崎さんじゃないか」
「あ、赤羽くん! え、赤羽くんも最京大なの!?」
「ああ。俺のほかに阿含と番場もいる」
「阿含くんと番場さんも! わあ・・・」
まもりが赤羽に近寄ろうとしたが、すかさずヒル魔の手がまもりの襟首を掴む。
「きゃ!」
「テメェはこっちで着替えろ」
「や、ちょっと放して! 自分で歩くから!」
賑やかな二人が部室から去ると、唐突に静寂が舞い降りた。
赤羽がギターを下ろす仕草に、部員の一人が尋ねる。
「なあ、あの姉崎って子、知り合いなの?」
「フー・・・ワールドユースで同じチームだった」
「ああ、なるほど!」
納得する部員たちの耳に、けたたましい銃撃音が響く。
けれどそれさえ数日で聞きなれてしまった自分たちのある意味図太い神経に浮かぶのは苦笑のみだった。

<続>
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