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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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誘惑の蜘蛛(1)

(ヒルまも)


+ + + + + + + + + +
出会いと別れの季節、春。
ここ最京大でもそれは同様だった。
「・・・なんでここにヒル魔くんがいるの」
「ナンデココニ糞マネガイルノ」
あからさまな声真似に、まもりの眉間にきつく皺が寄った。
「どうして! ここに! いるの!」
まもりは悲鳴染みた声で目の前でにやにや笑う男に噛み付く。
「ヒル魔くん全然違う大学に受かった、って言ってたじゃないぃいい!!」
ここは関西。ヒル魔の受かったという大学は東京の最高学府。
絶対にそちらに向かったのだと思ったのに。
入学式に向かう道で、目の前に立ちはだかられたのだ。
「受かっただけで行くとはいってねぇ」
にたあ、と見慣れた悪魔の顔で笑われる。
高校のときとは違う、私服の彼。相変わらずの黒ずくめで金髪もピアスもそのまま。
けれど校則があるけどそこまで煩くない大学では誰も彼のことは注意できないだろう。
「考えればすぐわかる話だ」
ヒル魔はいつものように無糖ガムを口に放り込む。
「糞ジジィが就職、糞デブが関東で大学進学。それなら頂上決戦と洒落込むのが妥当だろ?」
「頂上・・・」
その三人がかかわるのなら、話はアメフトについてだけだ。
まもりはライスボウルの仕組みを思い浮かべる。
東西の大学の優勝校が大学同士での頂上決戦を行い、更にその優勝校が社会人リーグの優勝校と戦うというもの。
「関西の頂点は・・・最京大だものね」
帝黒学園を擁する関西。最強を謳う最京大が存在するのも関西、アメフトにかかわった者なら誰もが知ること。
「意外。ヒル魔くんだったら無名校からのし上がるかと思ったのに」
それにヒル魔の片眉がぴんと上がった。
「三人揃って、っつーのが高校ではあったから泥門行っただけだ」
ムサシはともかく、栗田の学力では他は無理だった。
どうしても三人揃ってアメフトがしたかった。それは約束だった。
だから部活そのものも存在しないあの学力的には低い高校に通ったのだ、と。
じゃなきゃ神龍寺に行ってたと、まもりも聞いたことがあった。
「今度は頂点極めるっつー目標がある。それならここに来るに決まってんだろ」
まもりはがっくりとうなだれた。
彼女が求めた学部は実家の近隣大学にもあったが、レベルはここが一番高いと聞いていた。
それに彼と離れたかったのもあって、両親を説得して実家を出てまでこんな遠方にやってきたのに。
「・・・ヒル魔くん、学部は違うんでしょ」
「当然だなァ」
まもりは教育学部。聞けばヒル魔は政経学部だという。らしいというか似合わないというか。
それにまもりはゆるりと顔を上げ、意識して眉間の皺を消した。
「・・・じゃあ、普段は顔をあわせる心配もないわよね」
「ア?」
「私、今度こそ普通の学生生活送るの。仕送りも少ないからアルバイトもするし、サークルにも入りたいの」
「ホー?」
「だからね」
まもりはにっこりと笑ってヒル魔を見上げた。
「アメフト部には死んでも近寄らないから、今後私に関わらないでね」
じゃあ私は先に行くから、と言ってまもりは彼の隣をすり抜けた。
いや、すり抜けようとしたが。
「・・・何この手」
まもりの左腕を、ヒル魔の右手が捕らえた。
放してよ、と手を振ったが、強い力に押さえ込まれえる。あるいは大して力を込めていないのかもしれない。
でも男女の差はあからさまで。
「嫌だ、っつったら?」
まもりは無言で息を吸った。が、察したヒル魔の左手に口を覆われる。
上げようとした助けを求める声は彼の手のひらに吸い込まれてしまう。
「むー!」
「判りやすいなァ」
ケケケ、と笑ってヒル魔はひょいとまもりを担ぎ上げた。
手が離れて、ほっとしたのもつかの間、今度はがっちりと両足を抱えられて逃げられない。
子供抱っこ状態だ。
「な、ちょっと!?」
「労働力ゲットー」
「今までの話聞いてた?! 私、死んでもアメフト部には近寄らないって・・・!」
焦り暴れるまもりをものともせず、ヒル魔はすたすたと歩いていく。
学校まではまだ距離があるが、このまま講堂まで連れて行かれては彼と関係があると思われてしまう。
「やめてよー! 私、行かないってー!」
「遠慮すんな」
「してない!!」
暴れようにも背後に倒れては頭を打ってしまう。
彼の体にもたれるのが嫌で、必死に肩に手を当てて押しのけようとするが、やはり無駄な抵抗で。
「テメェは俺の命令に逆らわず従順に働け」
「それってまだ有効だったの!?」
「当然」
「そんな・・・」
まもりは更に文句を言おうと思ったが、不意に思いついたことにふっと言葉を切った。
彼は今日、最初からまもりを迎えに来るつもりだったのだ。
なぜなら今日、彼はマシンガンやその他の荷物を一切持っていなかった。
ヒル魔がこちらを伺う。上目遣いに見られるなんて久しぶりだ、と考えた。

<続>
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