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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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誘惑の蜘蛛(5)



+ + + + + + + + + +
それからの生活に特に変わった様子はなかった。
もしあるとするなら、まもりの周囲に男子生徒の影が少なくなったことと、何故だか赤羽とまもりが仲良くなっていることだろう。
忌々しげに赤羽とまもりを見るヒル魔に、阿含が男の嫉妬は醜いと呟いた。
とにかく練習でも何でも彼らは騒がしいが、他の部員たちは皆一様に我関せずの姿勢を貫いていた。
触らぬ悪魔になんとやら、なのである。

そうしてまもりは着々と『準備』をしていたのだった。


その日は帝黒学園との練習試合だった。
超高校級の生徒たちが集まる帝黒学園の力はやはり強く、対外的に練習をしようにもレベルが違いすぎることが多い。
その点大学生と練習試合をするのは互いのためにも利点が多いのだ。
去年までは高校生だったのに、と不思議な感覚で試合前のアップを見つめていたまもりの傍らに、影が立つ。
「あら、大和くん! 鷹くんも! 久しぶりね」
「久しぶり。元気そうだね」
彼らは三年生、今は大和が部長として皆を引っ張っていっているのだと聞いた。
元より逞しかった彼らが更に力を増しているように感じて、まもりは瞳を細める。
「帝黒学園は三年生まで部活参加できるのね」
「ああ。泥門は違ったね。今年はセナくんとクリスマスボウルで戦えないのが残念だよ」
クリスマスボウルまで行くことは確定なのだろう。その自信は実力によって裏づけされている。
「今日はよろしくね」
「こちらこそ。全力で戦わせてもらうよ」
「大和」
鷹が声をかける。そろそろアップが終わった部員たちが集まってきている。
大和は軽く手を上げてまもりに挨拶すると走り出そうとして。
「ああ、そうそう」
「何?」
「来年は俺と鷹は最京大に入るから、よろしくね」
「え?!」
あっさりと合格宣言をして去っていく彼らにまもりは引きつった顔で手を振り返した。
仮にも西の最高学府なのだ、ここは。
相変わらずの自信に満ちた宣言だが、彼らは頭もいいのだろう。
天は二物を与えずなんて言うが、嘘だなあと見送ってしまう。
「何やってんだ」
「今、大和くんと鷹くんが挨拶してくれたの」
「ホー」
「あの子たち、来年最京大来てくれるんだって」
「ホホー」
「頼もしいわね」
にこにこと笑って見上げれば、ヒル魔は舌打ちしてグラウンドに戻る。
一体何が気に障ったのだろうか、と考えたが。
「ま、いっか」
それよりもいよいよ今日、やらねばならないことが一つ、あるのだ。
他のマネージャーたちが集まるところに向かいながら、まもりは手のひらの感覚を確かめるように二度、三度と握ったり開いたりを繰り返した。


試合は白熱した。
相変わらずのトリッキーさを見せるヒル魔、敵を払いのける赤羽、神速のインパルスで他の追随を許さない阿含、鉄壁の守りを誇る番場。
その他にも大学の部活で練り上げられた力を秘めた部員たちが戦っている。
対する帝黒学園も食らいつき、一進一退の白熱した試合を展開している。
生き生きと楽しそうなヒル魔を見るにつけ、普段からそういう顔してればいいのに、と思う。
生粋のアメフト馬鹿と言えばそうなのだろうけど。
「こうやって見ればヒル魔も格好いいかもねー」
「でも本性アレだよ?」
「うーん・・・」
他の先輩マネージャーが騒ぐのを隣で苦笑して聞いていると。
「でも彼女には優しいんでしょ?」
「そうなのかな? 姉崎さん、ヒル魔って優しい?」
「え? いや彼女って・・・彼女いたんですか? ヒル魔くんに?」
いきなり話を振られてまもりは目をぱちくりさせる。その様子に話を振ったほうも瞳を見開いた。
「ええ? だって、姉崎さんはヒル魔と付き合ってるんでしょ?」
「彼女なんでしょ?」
「・・・えええぇえぇえぇえええ!?」
まもりは素っ頓狂な声を上げて硬直した。
「か、彼女、って・・・私!? 違います、違いますぅううう!!」
「えええ!?」
「てっきり付き合ってるんだと思ったのに!」
「だってヒル魔の家でご飯作ったりしてるんでしょ!?」
「あれはバイトなんです! ハウスキーパーしてて!」
「嘘でしょ!?」
「照れなくっても・・・」
「違いますー!!」
ぎゃあぎゃあと騒がしいベンチに、審判の眉が寄る。

<続>
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